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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.248 読書 湊かなえ「豆の上で眠る」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 湊かなえさんの「豆の上で眠る」についてです。
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いやミスの女王と呼ばれている湊かなえさん。
いやミス、読後、嫌な感じがするミステリー。
確かに妙にザワザワ引っかかる部分を感じる。
映画にもなった「告白」が有名だが、今回の「豆の上で眠る」で初めて湊かなえさんを読みました。
とっても読みやすく面白いが、確かにスッキリせず読後感が嫌な感じがする。
これがそのジャンルの魅力なんでしょうか。
ホラーやミステリーはよく読むのですが、ホラーの怖さと、人間の理解不能な行動でなんだか嫌な感じがするのとは、全然違います。
いやミスはまだ初心者なので、このジャンルもぜひ読んでいきたいと思います。
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物語は、主人公は大学生の女性、母の具合が悪いから夏休み実家に帰る。
帰る途中でバス停で姉に会う。姉の横に友人の女性がいる。
その友人の額には豆粒大の傷があった。それを見た主人公は心がざわめいた。
母の見舞いを終え、実家の押し入れの段ボールから、母が集めた昔姉が誘拐された時の資料が入っていた。
主人公が小学生の頃、一緒に遊んでいてまだ帰りたくないと駄々をこねて姉一人自宅へ帰る途中何者かに誘拐されてしまった。
警察も出て懸命の捜査もしたが見つからず打ち切りになってしまった。
それでも母親は独自に娘を探していて、妹の主人公に怪しいと思う家があると行かせるほどだった。
2年後突然姉は見つかった。
家族は大喜びだが、主人公はなぜか本物の姉じゃない違和感を感じていた。
幼い頃怪我をした額の傷がないからだ。
DNA鑑定しても間違いなく、過去のことを聞いても澱みなく答える。
姉は本当に本物の姉だろうか・・・。
この後の展開はすごいがネタバレになるのでここまでに。
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いやミスって、イジメや何か酷い状況のお話かなと思っていましたが、
湊さんの本を読むと、確かに嫌な感じはしますがそれだけでなく、妥協せずとことんまで人間を描くから、そう言われるのではと思いました。
ストーリー展開は抜群に上手く面白いんです。
人物描写も結構奥深い。
そして人間の奥深い部分、例えば誘拐された娘の母親が、もう一人の娘を使って怪しい家に行かせる部分とか。
誘拐、母親悲しい、までが普通なのに、もう一つ乗り越えて母親の狂気を描く。
その部分がとてもザワザワするがまた魅力なんでしょうね。
単に狂っているのではなく、心から必死で、狂気じみてくる。
姉が本物なのか?母親の狂気など。
そしてそれがミステリーでは良くあるスッキリと収まることなく物語やキャラクターや読者の心の中にモヤモヤが残る。
最後の問いかけはかなり考えさせられる。
今日はここまで。
決してバッドエンドが好きなわけではないのですが、かといって無理に「いい話」にしようとも思っていません。
それと、バッドエンドがすべて悪いわけでもないんです。私が小説を書く時のアプローチとして「こういう事件が起きた時、制御しなかったらどうなるだろう、誰も止めようとしなかったらどうなってしまうだろう」というのを妥協せずに考えるというものがあります。
現実であれば、悪いことが起ころうとしていたらどこかで修正しないといけませんが、物語だから行きつくところまで行ける。それによって、最悪のところまで行かないためにどうすれば良かったのか、とも考えられるわけです。実際に、物事が悪い方向に向かっているところから軌道修正するお話も書きたいなと思っています。
要するに、自分の見たいものがどこにあるかによって結末が違うという話であって、読者の方を嫌な気持ちにさせようと思っているわけではないんですよ。
/湊かなえ