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更新されたテーマに血が通っている。藤田和日郎の真骨頂 『双亡亭壊すべし』

藤田和日郎『双亡亭壊すべし』最終巻を読みました。傑作でした。

藤田和日郎は一貫して「勇気」を描く作家です。
彼はこの30年、勇気についてしか書いていないと言ってもいい。

「勇気」という謎に満ちた奇跡

「勇気」という謎に満ちた一つの奇跡は、何百年も変わらず語り継げられ、この先も何百年と語り継いでいくのだと思います。イエス・キリストの奇跡が2000年も語り継がれているように。そして、藤田和日郎は「勇気」という奇跡についての語り部のような漫画家だと思っています。

「勇気」というテーマは不動でも、その語り口や語られ方は時代の変化によって変わっていく。物語とは、語り部とはそういうものだと思っています。


うしおととら

何十万人もの少年少女と同様に、30年前、『うしおととら』を読んだとき、10代だったぼくはとても勇気づけられました。


からくりサーカス

20代のとき、『からくりサーカス』にも勇気付けられました。


双亡亭壊すべし

そして、今回の『双亡亭壊すべし』はその血統であり、素晴らしいアップデートでもあり、かつ次への進化でもありました。

特に最終巻は物語の収束であるのと同時に、藤田和日郎の自分語りでもあり、漫画家という生き方や表現者の業の話でもあり、その上で今回の大テーマ「赦すことと乗り越えること」に繋がって素晴らしかったです。


真骨頂であり、アップデート

「勇気」という奇跡を今の時代に描くとしたら。

この難しい問いに正面からガップリ四つで組み合って、一歩も退くことなく、描ききってみせた。そこには作者の汗や迷いや傷や焦燥や狂気や熱量がぎゅうぎゅうに詰まっていました。

更新されたテーマに時代性があるだけでなく、口だけの言葉遊びではなく、渦潮のようにぐわんぐわんと血が通っている。それが藤田和日郎の真骨頂だと実感しました。

「勇気」という奇跡をこの時代にどう描くのか。その達成が素晴らしい。傑作だと思います。



ハイキュー!!と双亡亭壊すべし

「今の自分」を始める勇気|『双亡亭壊すべし』と『ハイキュー‼︎』というnoteも書いていますのでよかったらご覧ください。

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