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誰の『サヨナラダケガジンセイダ』

長女が
「ねえねえ、『人間失格』ってこの家にある?」
と聞いてきて、

ぼくの母が
「太宰は婆ちゃんも好きだったんだよ。『さよならだけが人生だ』の人だよねぇ」
と口を挟んできたので、

「いや、太宰じゃないでしょ。元は中国の五言絶句だし、誰か文豪が訳して…あれ、誰だっけ…?…あれ…?川島雄三とか、寺山修司とかの名前も浮かんでくるんだけど何だっけ?」
とハテナマークが渦を巻きました。

で、調べてみたら井伏鱒二でした。
そっか。

于武陵『勧酒』
勧 君 金 屈 巵
満 酌 不 須 辞
花 発 多 風 雨
人 生 足 別 離
井伏鱒二『勧酒』
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

「ハナニアラシノタトへモアルゾ」がいいんだよねえ。

川島雄三も寺山修二も、井伏鱒二の詩で印象が残ってたんだなあ。

寺山修司『さよならだけが人生ならば』
さよならだけが人生ならば
 また来る春は何だろう
 はるかなはるかな地の果てに
 咲いている野の百合何だろう
さよならだけが人生ならば
 めぐり会う日は何だろう
 やさしいやさしい夕焼と
ふたりの愛は何だろう
さよならだけが人生ならば
 建てた我が家なんだろう
 さみしいさみしい平原に
 ともす灯りは何だろう
さよならだけが人生なら
 人生なんか いりません

『さよならだけが人生ならば』 と 『だいせんじがけだらなよさ』 詩:寺山修司 歌:カルメン・マキ 1969年

『川島雄三、サヨナラだけが人生だ』藤本義一

いろんな人に影響を与えた詩なんだよなあ…と改めて思いました。

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