大人になれば 16『おかるとナイト・ディープ松代・ネオンホール短編劇場』
七月なのです。
スーパーネオンも終わりました。
スーパーネオンが過ぎると夏だなあと思います。行けなかったけど。すごく行きたかったけど。
そのかわりに松代で開催された『松代サブカル☆おかるとナイト「皆神山真相を語る」皆神山権禰宜武藤さんを囲んで』に行ったのでした。
ぜんぜん代りになってないぞ、かえるくん。
内容を大雑把にいうと「松代の不思議現象をいろいろ語る会」なのだけど、ポイントはそんなところじゃなくて。ぼくが何しろびっくりしたのは会場を埋め尽くす地元のおじさん&おばさんたちの反応でした。
だって、ふつう地域イベントで「二十年前にUFOが出たときに…」なんて話が出たら一瞬身構えるでしょ。
松代の民は「ああ、あれね。あったね」なんですよ。それが基本。不思議現象あること前提なの。「十年前にあそこで崖崩れがあったよね」と同レベル。どんだけ身近なんだ。
ぼくなんかはその度に「ちょっとまってよ、UFOだよ。発光現象だよ」とストップがかかるのだけど、松代の民はノンストップ。そもそもブレーキなんかない。すげえ。
会場には妖怪大好き北澤さんも勿論いて、会が終わって二人で熱く話し合ったのは「松代の不思議現象」ではなく、「松代の民の不思議さ」についてでした。北澤さんだって松代住民なのに。
とにかくびっくりした。ディープです。ディープ松代。
そんなことをネオンホールの哲郎さん(実家が松代)に「さすが松代の民はちがうね!」と興奮気味に話したら、「ああ、でも、おれ、生まれも育ちも長野市スから」とすごくクールに返されました。皆神山をこよなく愛す哲郎さんはそのへん一線を画したいらしい。愛か。
そんな哲郎さんや夏海さんが手がける演劇集団『丘ペンギン競技会』でぼくの書いた台本を演じてもらうことになりました。八月三日のネオンホール短編劇場で。
演劇にまったく縁のなかったぼくが台本を書いて(何本も!)、しかも哲郎さんや夏海さんたちに上演してもらえるなんて半年前は夢にも思わなかった。
先日、初めて稽古を観にいったら不思議でならなくて。どこかの家庭のリビングが舞台に生まれていて、そこでは親子が朝食をとっていました。もちろんそれは哲郎さんやみどりさんや松山さんなのだけど、でも家族なんです。どこかの。
ぼくの書いた台本が元かもしれないけれど、それとはまた別の、もうこの世にある存在としてそこにあって。夏海さんが丁寧に演出を入れていく度にそれらの輪郭がくっきりしていって。なんだか別の世界を垣間見ているような不思議な気持ちになりました。
役者さんが台詞をいう響きの中に、「そうか、ここにはこんな意味が潜んでいたのか」と我ながら驚いたり。自分のテキストが他の人の手で解釈されることの面白さにぞくぞくしてしまいました。あと、ぼくが大好きな二郎さんも出演してくれて。嬉しくて溶けるかと思った。
本番当日までにどんな劇に仕上がるんだろう。
ぼくもどきどきしながら観たいと思います。
執筆:2014年7月28日
『大人になれば』について
このコラムは長野市ライブハウス『ネオンホール』のWebサイトで連載された『大人になれば』を再掲載しています。