『クワイ河に虹をかけた男』と『さとにきたらええやん』
長野ロキシーで『邦画ドキュメンタリー特集』をやってるので今日は贅沢に映画のハシゴ。
『クワイ河に虹をかけた男』と『さとにきたらええやん』の二本。ぜいたく。
『クワイ河に虹をかけた男』は何といっても永瀬隆さんの人としてありようにまず目が行くのだけど(本当に尊敬に値すると思います)、観ているうちに「人が人に会いにいく」ということはもしかしたら戦争や虐待に匹敵するくらいの力を持っているんじゃないだろうかと思った。
人が人と会うということは、何かを壊し、再構築するほどの現象たりうるんじゃないだろうかと。
そして、戦争の後始末というのは六十年、七十年が平気でかかるものなのだと。それは永瀬さんの五十年の積み重ねを見て初めて知りました。ぼくは考えたこともなかった。
そういう意味で、日本は戦争の運営と戦後処理がとことん下手な国なんだなあと実感する映画でもありました。向いていないことに妄想を抱くのは中学生がやることです。
『さとにきたらええやん』は大阪の日雇い労働者の街で四十年近く学童保育と子育て支援をしている「こどもの里」が舞台の映画で。
小さな施設でぎゅうぎゅうになって元気に毎日を暮らしている子どもたちの姿にまず目が奪われます。泉から清水がこんこんと湧くような感じで子どもたちがみんな元気で。安心していて。甘えていて。はしゃいでいて。
ああ、ここはきっと良い施設なのだと子どもの姿からすぐ読み取ることができます。
この映画でもやっぱり、「人が人と会う・話す・過ごす」ということはすごい力を持ちえているんだということをとても思いました。
特に十年里子として一緒に暮らしていたマユミちゃんがすごく魅力的で(ポスターの一番下で笑っている子)。
見た目は普通の目立たない高校生なのだけど、ちょっとした表情や身のこなしや言い回しに、ああ、この子はきっといい子なんだ、素敵だなと思えるような。
この子のこの良さはこの場で育まれたものなんだと思いました。マユミちゃん、とてもよかったです。
ふたつともとてもいい映画でした。こういう企画を実現してくれる長野相生座・ロキシー、ありがとう。
これからの『野火』や高畑勲特集もとても楽しみです。
ふたつの映画を観て、人が人と会うことや、ひとつの場所でつなげていくことや、そんないろいろを考えながら権堂アーケードを歩いていたら、最後にふと思い浮かんだのがネオンホールでした。なるほど。どこかで何かしらつながっているような。
そんな個人的映画特集の土曜日。楽しかったです。
長野相生座・ロキシー『邦画ドキュメンタリー特集』
追記(2020.8.3)
『クワイ河に虹をかけた男』の監督・満田康弘さんから直接ツイートをいただきました。びっくりした。笑
ブルーレイとDVDの発売、おめでとうございます!
ぜひもう一度観たいなあと思います。