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好きな青春小説は?と聞かれて思い浮かべる宮本昌孝『藩校早春賦』と芦原すなお『青春デンデケデケデケ』

宮本輝の『青が散る』
佐藤多佳子『しゃべれどもしゃべれども』
村上春樹の『風の歌を聴け』『ノルウェイの森』
村上龍の『69』
金城一紀の『GO』

これらの青春小説が好きなのだけど、石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』を面白く読んでいた時に、ふとその限界を感じてしまったときがありました。

青春小説ではその多くが若者ならではのまっすぐな感じや、瑞々しさ、不完全さを描くのですが、現代を舞台にすると彼らがまっすぐであるための目的を持たせるのが難しいと思ったのです。現代はそんなに素直に若者をやれない。

だからどちらかというと『青が散る』や『風の歌を聴け 』『69』は若者特有のもやもやした感じがメインでした。
『しゃべれどもしゃべれども』や『GO』の主人公たちは目指すべき目標は持っているのだけど、主人公がもつ特異性(落語や在日というアイデンティティ)があって成立する青春でした。

ぼくは上に挙げた本は全部大好きだし、どれも愛しているのだけど、ある日ふと、もっと普通の若者が生きていく青春小説を読みたいと思ったのです。

そんなときに出会ったのが宮本昌孝さんの『藩校早春賦』(集英社文庫) でした。

『藩校早春賦 』はスーパーヒーローではない江戸時代の普通の若者たちが悩んだり笑ったり、でもまっすぐに生きようとしていて。

今なら清廉な若者自体が不自然に見えてしまうけど、江戸後期の彼ら若者たちはそう生きることが当たり前なのです。

それがすごく自然に描かれていて、ぼくもそのまま読むことができた。
内容はほとんど忘れてしまったのだけれど、「真っ当は青春小説はここにあるじゃないか!」ってすごく驚いた。

現代では描きづらい青春や恋愛や理想や正義を時代小説は正面から描けるじゃないか!って目からウロコが落ちました。

何かいい青春小説ないかな?とお探しの方にぜひおすすめしたいです。

あと、芦原すなおさんの『青春デンデケデケデケ』もとても好きです。20代のころ、何度も何度も読みました。1970年代を生きる四国の片田舎の高校生たちの話なのですが、この小説に登場する彼らがぼくは大好きでした。

2000年以降、あまり名前が出てこなくなった小説ですが、とても素晴らしい青春小説ですので、未読の方はぜひ。

『青春デンデケデケデケ』は映画版も最高です。原作に惚れ込んだ大林宣彦監督の愛にあふれた作品です。未見の方はぜひ。

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