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大人になれば 03『人生に三回・あこがれフィルター・リリー・フランキー』

人生にモテ期が三回ある。
という。

眠れない夜にベッドの中で自分の三回はどれだったのかと数えてみたりする。
高校のあれはモテ期なんだろうか。そういえば高三のとき授業をさぼって体育館でおしゃべりした後輩のあの子はもっときれいになったのだろうか。あのとき勇気を出していればチューできたのだろうか、などと思う。
思わぬ男子はこの世に存在しない。いや思わねば男子ではない。

しかし、なぜ男子はいつまでたっても女子をあこがれ目線で見るのか。あこがれフィルターはいつ外れるのか。なんでいつまでたっても女子大生は「おねえさん」なのか。
いや知ってる。知ってます。
女の人は自分と同じようにだらしないし、気を抜くし、鍋から直接ラーメンを食べる。なんならパンイチ(パンツ一枚)で食べる。知ってるってば。

ぼくは声を大にして言いたいのだけど、知っていることと魔法が解けるのは別でしょう。
カエルになる魔法をかけられたことを知ってても、自分で解けるかっつーことですよ。

でも、そもそもこの魔法を解きたいのかと詰問されたら長考の末そうでもない。あこがれフィルターがなくなった人生ってどんなだろうか。それはもしやサングラスをかけたまま親子丼を食べるような人生なんじゃあないだろうか。いくら丼でもいいが。
そんな人生、ぼくやだ。

そう考えたらこの魔法は男子が人生を生き抜くために必須な重要項目ではあるまいか。がぜん大切な機能なような気がしてきた。大切じゃん。女子はなくて生きていけるのか。心配になってきた。

そんな世界中の男子を肯定するバイブルのような本と平安堂若槻店で出会った。あの店はちょっとマニアなコーナーがある。棚を見ているだけで笑える。きっと棚の担当男子がちょっと変態なのだ。ネオンホールスタッフは気が合うんじゃないだろうか。特に哲郎さん。

出会ったのはみうらじゅん、リリー・フランキーの『女体の森』扶桑社。
グラビアについてただただ語り合っている対談集。
男子魂のツートップのようなみうらじゅんとリリー・フランキーがグラビアアイドルの写真を見ながらしつこく語り合うのだから面白くないわけがない。ぼくはグラビアへの知識も興味もないけれど、読んでいる間中「クククッ」と笑って忙しい。こらえきれずに「ブハッ」と声に出して何度も笑った。

二人とも五十代のはずだが、話していることは中学生のままだ。グラビアへの愛にあふれかえっている。あこがれフィルターの純度が少しも曇っていない。くだらないですよ。千パーセントくだらないです。
しかしこのくだらなさは知っている。男子なら皆知っている。みうらじゅんとリリー・フランキーは魔法の大切さを腹の底から知っているんだろう。

最後に引用を。毎月AVのサンプルが山ほど送られてくることについてのリーリー・フランキーのコメント。爆笑した。爆笑した後にその気持ち、とってもわかるなあとしみじみ思った。わかるぜ、リリー。

リリー・フランキー「映画のDVD送られてきても、見ないことになんの抵抗もないじゃないですか。でもAVを見ないっていうのは、出してくれたご飯に手をつけない失礼な感じがするんですよね。(笑) 男として」

執筆:2014年1月9日

『大人になれば』について

このコラムは長野市ライブハウス『ネオンホール』のWebサイトで連載された『大人になれば』を再掲載しています。


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