生命の可逆性
宇宙人ですら地球に迎合した瞬間、何かを失ってゆく。社会に溶け込んだ瞬間、私を失ってゆく。溶け出した私の残骸を、他人が機械的に処理してゆく。失うことなく残るものは、社会に必要なものなんだ。それを大切にすることが、処世術。残骸を取り戻そうとするけれど、瞬間冷凍された私は、すでに死んでいた。だんだん溶けてゆく私は、土の中へ染み込んでゆく。死骸だらけの地層に閉じ込められた人類のかけら。地上で動き回る人類は、それ以外のかけら。僕らは欠けていることでしか生きていけない。一輪の花びらみたいな肉体を、誰しもが内に秘めている。地層の中から生命を救い出す考古学者。骨を繋ぎ合わせて生命を蘇らせる考古学者。地層の中で冬眠していた残骸は、まるで生きているような輝きを秘めていた。死の逃避を成功させた生命は、溶けていた輝きを取り戻していた。