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普遍的速度
食べるのが遅いと怒られて、起きるのが遅いと遅刻して、歩くのが遅いと誰かとぶつかってしまう。
いつの間にか、遅いだけで責められてしまう世界に生きていた。だから、どんどん遅いを切り捨てることで、効率を最大限まで高めようとしてみる。学校で現代文をやっていると、なんで試験時間内に、この文章を読み切らないといけないのか、いつも納得いかなかった。文章を文章として扱っていないような気がして嫌だった。速読という言葉に憧れたこともあるけれど、はやく読もうとも、はやく読むこともできなかった。映画は、みんなと平等に時間が流れているから、なんとなく安心したけれど、二倍速で映画を観ている人がいて、平等なんて存在しないんだなと改めて思った。いくらじっくり読んでいても、作者より文章に向き合うことなんてできないはずで、そこには越えられない何かがあるような気がした。だから、試しに何かを作ってみるけれど、どんなに時間をかけても、文章は一瞬で読まれてしまうし、映画は2時間くらいで終わってしまうんだな。歳をとるほど時間の流れが早くなる、とはじめて聞いたのは、いつだっただろうか。確かに、一年の流れは早くなったような気がするけれど、どこかに決して変わらない遅さが、必ず存在していて、そういう遅さが、歳をとるほど大きくなってゆく。