掌編いろは/み「見ない」

 見てはいけない。ぜったいに。
 約束を守れば永遠にしあわせがつづくだろう。
 約束を破ったとたん、足元からすべてが崩壊して、なにも残らないだろう。
 だから見てはいけない。いいね。

 うん、わかった。
 そう言って僕はふりかえって、見た。
 とたんに悲鳴が上がり、なにもかもが嵐のようにごうごうと宙を踊って消えた。
 ほんとうになにも残らなかった。
 ほらね。やっぱりここにはなにもない。僕は笑った。
 見てはいけないってことは、見なければならないことだってくらい知ってるんだ。