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300万以上を犠牲にして正気に戻った話
地獄を、見てきた。休職に至るまでの約1年間、いやもしかしたらもっと前から、私はおかしかったんだと思う。休職してからようやく、すでに貯金が底をついていて、来月の家賃の支払いすら厳しいかもしれないことに気付いたのだから。
お恥ずかしい話、いつから正気じゃなかったのか、もはやわからない。けれど、当時のお金の使い方を振り返り、もう同じ轍を踏まないように記録していこうと思う。
ファッションに200万つぎ込んだ
2023年秋頃、あるブランドのトレンチコートに一目惚れした。入ったこともないオシャレなセレクトショップ。恐るおそる中に入ってみると、普段の私の購買価格帯とはかけ離れた、だけどとても可愛らしい洋服が陳列されていた。この時、一人の店員さんに声を掛けられたのが全ての始まりだったのかもしれない。
店員さんにおすすめされて試着をすると、まあこれがシンデレラフィット。低身長(153cm)の私にとって、一般的な洋服だと丈が合わないことがほとんどなのに、このコートは私のためにつくられたかのような丈感だった。これまではそのサイズの大きさのせいでーーそれだけが理由ではないと思うが、いつもどことなく垢抜けない格好をしていた。「こちらのブランドは、一般的な洋服よりもワンサイズ小さくつくられているんですよ」と店員さん。悩みに悩んだ挙句、その場では購入しなかったものの、次の週にはお会計を済ませていた。
二桁もするコートを購入したのは人生で初めてだった。普段の頑張りを労わる、特別なご褒美のつもりだった。
だがそれ以降、他ブランドのお洋服を見ても、サイズが合わないと感じることが増えた。今まで通い詰めていたファストファッションブランドは、身体に合わないと感じることが増え、お店に足を運ばなくなった。洋服を買うつもりがない日のお出かけでも、最後には必ずセレクトショップに寄り、店員さんにおすすめされた洋服を試着する。そしてそのまま流れるように購入することが増えていった。
私のクローゼットが店員さんセレクトのものが増えると同時に、店員さんは担当さんへと関係性を変えた。
そこからは、シーズンが始まる前にカタログから選んだデザイナーズブランドのお洋服を入荷してもらうようになった。デザイナーズブランドのシークレットイベントにも声を掛けられるようになった。もうこの頃には、二桁のワンピースを購入することに躊躇いがなくなっていた。
そして、2024年の冬の終わり頃、担当さんが退職することとなった。つまり、わずか半年という短い期間で、被服費は200万円を優に超えていたのだ。
この経験から学んだことは次の通り。
▼良かったこと
・担当さんからの数々の提案のおかげで、自分の身体に合う洋服はどういうものなのかがわかるようになった。これにより、他ブランドの洋服を見ても冷静に購入判断を下せるようになった。
・クローゼットの中身ががらりと変わったため、過去と比較すると垢抜けた格好をすることができるようになった。
▼良くなかったこと
・貯金が減るのを自覚せず、担当さんがおすすめするものは間違いないと妄信的に購入し続けた(実際、担当さんのおすすめは間違いなかった)。
・これまで私がお世話になってきたファストファッションブランドの洋服を見ても、身体に合わないと感じることが増えた結果、セレクトショップで洋服を買わないと気が済まなくなってしまった(お財布事情に合う洋服ブランドで、身体に合うものを見つける訓練中)。
パーソナルジムを1年半も契約
人生で初めてパーソナルトレーニングを契約したのは、2021年の秋頃。当時、増えすぎた体重を減らすべくSwitchのゲームソフト「リングフィットアドベンチャー」に勤しんでいた私だが、このままでは、目標体重まで到達するのに時間がかかると感じた。
そこで、腹を括ってパーソナルトレーニングジムの門を叩くことに。月額制ジムに通うのはハードルが高かったが、パーソナルならば、どんなに運動神経が悪い私でも見放さないだろう。加えて、一度パーソナルトレーニングで運動嫌いを克服できれば、将来的には月額制ジムに通うこともできるだろうと思った。
1回目のパーソナルトレーニングでは、半年かけて理想値(44kg)までの減量に成功し、トレーニングの基礎も教わった。満足できる消費行動だった。
だが、2022年の春の終わり頃、突然結婚の話が出てきた。フォトウェディングをするという話が上がっている。一度は理想値まで痩せたとはいえ、綺麗にリバウンドをしていた私は困った。また痩せなければならないのか、と。
月額制ジムに通うだけでも良かったが、誰かに見てもらい、半強制的に運動習慣を取り戻したいと思った。だからまた、パーソナルトレーニングを契約した。
2回目に契約したパーソナルジムでは、しなやかな体をつくるための基礎を教わった。身体機能を高めるようなエクササイズを中心に行うのだ。そのため、ウエイトトレーニングは、月額制ジムで自主練を重ねた。けれどこの時は、週に1~2回ジムに通えばいい方。それゆえに、理想の身体には程遠かった。
やはり人の目があると頑張るもので、再び理想値まで減量した。理想の体型とは言えなかったが、妥協できる身体でフォトウェディングにのぞむことができた。
1社目の元同僚がジムで働き始めたと聞いたのは、2回目のパーソナルトレーニングに通っていた頃だったと思う。そこから月に2回ほど、元同僚と予定を合わせて合トレをするようになった。彼女の話を聞く度に身体づくりへのモチベーションが上がり、月額制ジムに通う頻度も増えてきた。
フォトウエディングと新婚旅行を終え、せっかく瘦せた体型を元通りどころか増やしていた私は、改めて痩せることを決意する。三度目の正直だ。もう痩せるという行為をしたくない。
すでにご存知の通り、1〜2回目ともに、パーソナルトレーニングの契約の終了後、体型が維持されたことはなかった。だいたい数ヵ月もすれば、我慢がならなくなって元に近い体型に戻ってしまう。これでは、60万近くかけた意味がない。頭では分かっているが、マクドナルドは美味しいし、パンケーキはいつだって食べたい。だからこそ、今回の身体づくりでは成果を出して維持したかった。
元同僚からボディコンテストに出ないかと誘われた時、意外にも夫が前のめりの姿勢を見せた。おいおい本気かよ。大会出場の話は冗談半分だろうと聞き流していたが、これでは、本格的に身体づくりをしなければいけなくなってしまった。夫がこれを機にパーソナルトレーニングに通ってみたいとこぼしていたので、大会出場を目的に3回目の契約に至った。
いざ、これから身体づくりを頑張ろうというタイミングで、私が体調を崩してしまったため、リハビリを兼ねてパーソナルトレーニングに通うことになる。日中は月額制ジムに通い、週に一度トレーナーと会話しながらトレーニングに励むことができたのは、心身を整えるにあたってとても良い効果をもたらしたと思っている。
洋服にお金をつぎ込みながら、洋服を綺麗に着るためのトレーニングにもお金を使っていた。ここから学んだことは次の通り。
▼良かったこと
・3回目の契約では、休職期間中に家族以外の第三者と会話できる機会としても活用できたので、結果的には契約してよかったのかもしれない。
・3回の契約を通じてようやく身体の使い方を習得できたように思う。
▼良くなかったこと
・1回目の契約が終わった段階で、基本的なトレーニング方法は学べたのだから、独学などで頑張ればいいものの、金に物を言わせてしまった。
・2回目のパーソナルトレーニングは、身体機能を高めることに重点を置かれていたため、契約する必要はなかったように思う。
何でもない日でも高級寿司を食べる生活
結婚してから、ほとんど自炊をしていなかった。しかも、ファストフードやファミレスではなく、高単価なお店に行くことが多く、かなり外食費が嵩んだ。1人5000円以上もするお寿司を何でもない日に食べたことなんか、数え切れないほどある。
珍しく自炊をしたかと思えば、3食食べたにもかかわらずコンビニに行ってポテチとコーラを食べるような生活をしていた。休職直前の1~2カ月に至っては、毎晩ファミマでチョコミントアイスとポテチを買っていた。
そりゃあパーソナルトレーニングをしても体重はすぐに元に戻るわな、という食生活を経て、私が学んだことは次の通り。
▼良かったこと
・外食の機会が多かったことを反省するようになってから、外食先選定に慎重になり、結果としてグルメになった。
▼良くなかったこと
・パーソナルトレーニングで身体を絞ったにもかかわらず、高カロリーな食事をすることで結果的に元の体型に戻ってしまった。
・適当なお店で食事を済ますことも多く、外食費がかかっている自覚もなかった。
終わりに
かなりのお金を犠牲にして、ようやく正気に戻った今、なんというお金の使い方をしていたんだと反省をしている。しかし、その中から学べたこともたくさんあるのは事実。高めの勉強代だと思うようにした。
今では家計簿をつけ、月に1度家族会議を行うことで、狂気に満ちたお金の使い方をしないように心がけている。これからは地に足をつけて生きていきたい。