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休職期間中にやってよかったこと10選

突然、心身の限界が来て、転がり落ちるように休職をした。休職直後は、何をしたらよいのか、どうしたら回復するのか、かなり焦っていたのは事実。だって人生初めての出来事なんだもの。休めと言われているのに家事に追われたり、語学学習に手を出してみたりと、かなり滅茶苦茶な行動も見られた。ゴールが分からなくて泣いた日もあった。だけど、いつの間にかちゃんと回復できたので、あの時の私には「休み方を間違えていないよ」と言ってあげたい。
そこで今回は、当時を振り返りながら、休養期および回復期においてどのような行動が良かったのかを記録していこうと思う。

▼休養期

当時の私の状態

休職に入ってから1週間程度は、何かしていないと落ち着かないため、大掃除並みの家事に明け暮れた。すぐに復帰できそうだと思ったものの、休職に入って1週間が過ぎたあたりから一気に心身の不調が現れるように。
本を読もうにも文字が頭に入ってこない。料理をしようにも包丁を持つ手と視線が安定しない。休職前から入っていた家族や友人との予定に出席することはできるものの、1時間が過ぎたあたりから会話に集中できなくなる。酷い時は、解散後に涙が止まらなくて駅のベンチから動けなくなり、夫に迎えに来てもらうことも。髪の毛を乾かしながら突如涙が止まらなくなって洗面台にしがみ付きながら泣いたこともある。こうして振り返ってみると、かなり酷い状況だったんだなと自分でも驚く。

基本的な生活としては、起床後はSNSばかりを見続け、気が向いたらスペイン語または英語学習を1時間程度行い、昼食後はジムとスーパーへ行く日々。週に1度はパーソナルトレーニングに行き、2週間に1度クリニックに通った。

ジム通い

月額制のジムとパーソナルトレーニングを休職直前に契約していた。これが回復にあたって功を奏したような気がする。日中の時間帯に「ジムに行く」という選択肢を持てたから。ただ、最初の頃は「ジムに行かなきゃ」と強迫観念に迫られ、週5~6回もジムに通っていた。この強迫観念が消えるまでには3カ月程度を要した。
パーソナルトレーニングは、週に1度電車に乗って、家族や友人以外の人間と話す機会として捉えていたが、これも本当に良かったと思う。単調な日々を週単位で見たときにいい刺激になった。
トレーナーの指導の下、食生活にも意識を向けることで、かなり健康的な生活を送るように。休職直前までファミマのチョコミントアイスとポテチ、炭酸飲料を毎晩摂取していた人間とは見違えるような食事をするようになった。人間、ストレスが取り除かれるとジャンクフードを欲しなくなるんだと学んだ。

心身の調子が安定するようになってからは、ジムに行けない日が続いても、食べすぎの日が続いても、「すぐ元に戻せるしな」と考えられるようになった。実際に体重が数キロ増えても、数日で元に戻る体質に変化した。ただこれは、狂ったようにジムに通っていた時期があったからこそで、その時の自分には感謝をしている。

1日1時間のお散歩

トレーナーから1日7000歩は歩くようにと指示を受けていたため、ノルマをこなすために毎日外出するように。最初は、自宅から少し遠いスーパーに行くことを習慣付けた。この運動量が定着した後は、大型公園まで行ったり、普段は電車を使わないと行けないようなところまで長時間歩いてみたりした。これは時間が有り余っていないとなかなかできない。

美味しいものを食べる

休職後、鬱を経験したことのある高校時代の友人から「何もできないと思うから美味しいご飯を食べることだけを意識しな」と言われ、食べログで美味しいご飯屋さんのリスト作成に明け暮れた。美味しいものは、人間の精神を安定させ、世界を救う。休職期間中、食べログには本当に救われた。
休職に入ったタイミングで、母親の仕事休みが重なり、月に2回程度会うようになった。そのたびに、今まで気になっていたお店に足を運ぶように。うどんを食べるために2時間半並んだり、予約争奪戦を勝ち取ったり。平日でないとハードルの高いお店に行けたのは良かった。金銭的に余裕があるならば、積極的に外食をしに行くことをお勧めしたい。
外食の際には、一人で行くか、本当に気心の知れた家族や友人と行くようにした。知人と外食に行った日は心の調子が顕著に乱れてしまっていたので注意したい。

仕事に全く関係のない語学学習

心身の不調を自覚し始めてから、お笑い芸人・ラランドのYouTubeにハマった。お二人は、上智大学のスペイン語学科出身ということもあり、スペイン語を取り扱ったコンテンツが配信されているのだが、これがきっかけでスペイン語に興味を持つようになる。
休職後、2週目くらいからDuolingoでスペイン語を学ぶようになった。教科書や参考書は一切読まずにアプリだけの勉強。文字が頭の中に入ってこない私にとって、Duolingoは音をメインに学習することができるため、とても助かった。無料の範囲だと長時間の学習には向かず、学習開始後すぐに年間課金へと踏み切ったけれど、かなり使い倒せているんじゃないかと思う。
会社員になってからの5年間、仕事に関わること以外の勉強を全くしてこなかった私にとっては、良い気晴らしになった。選択した語学が英語じゃない、というのも良い点だった。実際、休養期の後半から英語学習にも手を付け始めるのだが、どうしてもTOEICなどの資格に向けた高得点獲得のための学習になってしまい、気晴らしとは程遠いものになって中断してしまった。これまで一切の学習経験がないスペイン語だったからこそ、資格取得を目的とせずに自分のペースで学習ができたと思っている。

低山に登る

大学時代の友人から登山に誘われたのが始まりだった。誘われたのは、休職して1カ月くらいが経った頃で、日々の生活が固定化されてきた頃だったこともあり、これがちょうど良い刺激になった。
登山はいい。登山のために早起きをしなければならないし、かなりの運動量になる。何より、友人と話しながら、大自然に囲まれた道を淡々と歩くのが好きだ。鎖場のような中級者コースを歩く時の生死の境を体感できたのも、良い経験だった。文章上で生死の境を体験したい方には、『バリ山行』(松永K三蔵/講談社)がおすすめ。

エッセイを読む/図書館通い

休養期の後半から、本が読めるようになった。ただし、ほんわかする内容のエッセイばかりだったが。エッセイは、小説と違って没入感が求められることもなく、淡々と作家の思うことを吸収できるのが良かった。
積読していたものを消費した後は、図書館へ通うようになった。普段は読まない作家の本を手に取ったり、自習室で時間を過ごしたりして、刺激のない日々の時間を潰す場所としてかなり活用した。ただ、話題の書籍は予約で埋まっていることが多いため、回復期後半は書店で話題書を買うようになる。

▼回復期

当時の私の状態

この頃から睡眠に苦労することはなくなった。ただ、攻撃的な感情に陥ることが多くなり、怒りに支配されることもしばしば。担当医に相談して投薬を開始。このあたりで、休職前から夫に強く勧められていたカウンセリングを受けてみようかと思えるようになった(金銭的な理由からカウンセリングの契約は延期しているけれど、近いうちに受けたい)。

基本的な生活は変わらず、休養期に始めたことのほとんどを継続しながら過ごした。クリニックへの通院は月に1度程度になった。

キャリアカウンセラーへの相談

回復期後半では、自治体が提供しているサービスを活用して、キャリアカウンセラーに相談するようになった。転職を考えているわけではない。ただ、なぜ私が休職に至ってしまったのか、私の良くなかった部分をキャリアカウンセラーとの対話を通じて洗い出すことにした。もう同じ轍は踏まない。
正直なところ、キャリアカウンセラーは「心理カウンセラー」ではないので、課題解決に向けた心理的な補助をしてくれるわけではない。だからこそ、キャリアカウンセラーの話の取捨選択を適切にできるだけの体力と自助努力がかなり求められる。回復期後半でないと、なかなか上手に活用できないだろう。実際、休職突入直後にキャリアカウンセラーに相談したことがあったが、自分が何を整理したいのか明確でないままに話が進んでしまって後悔した経験がある。

小説を読む

小説はいい。他者の人生を疑似体験することで、価値観の幅を広げることができるし、私の場合には感情のコントロールに効果があった。
分厚すぎる小説を読むことも良い。小説ではないが、『アンダーグラウンド』(村上春樹)や『東京の生活史』(岸政彦)は、なかなか読み応えがあった。働いている時には余裕がなくて読めないどころか選択肢にすらなかったと思う。

文章を書く

実は休職突入直後に、夫から「記録に残した方がいいから日記でも付けたら」と言われた。最初2週間くらいまでは頑張れたものの、日々の生活を記録するというのはなかなかに苦痛で習慣化できなかった。
しかし、回復期に入って文章が書きたいという欲が出てきた。心身が回復してきた証拠だろう。文章もすらすらと書けるようになった。誰にも強制されず、仕事でもなく、文章を書きたいと思う。文章を書くことが好きだった私にとって、こうした純粋な欲が再び出てくるようになるなんてどんなにうれしいことか。日記でも自作小説でも何でもいい。文章として考えを整理しておくと、復職後の自分が助かることがある。

究極の退屈を経験する

休職に入るまでの私は、買い物依存症をはじめとする刺激中毒だった。土日はどこかに出かけないと気が済まないし、SNSで見たおしゃれなお洋服を値段も見ずに買う生活をしていた。当たり前だが、貯金が底をついた。
休職後、前職の同僚から「楽しいと思える毎日を過ごしてね」というお見舞いの言葉をいただき、刺激中毒になっていた私は勘違いをした。休職期間中であろうとも充実した日々を過ごすぞと。
しかし実際、休養期から一気に心身のバランスを崩し、貯金もなく、日々の生活はジムとスーパーだけという生活になった時、あまりにも退屈すぎて夫に愚痴をこぼしたことがある。すると夫から、「刺激のない日でも楽しく過ごせるようにならないと、職場に戻ったら再び刺激中毒になってしまうよ」とたしなめられた。そこで目が覚めた。確かにそうだ。私の休職期間は、刺激中毒から抜け出す矯正期間でもある。
ただ、休職に入った方の中でも刺激中毒になっている方は多いのではないかと思う。だからこそ、休職期間中に資格勉強を始めたり旅行をしたりと刺激を求めてしまうのではないだろうか。
現在の消費社会や刺激中毒に触れている『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎/新潮文庫)は回復後期に読むのがおすすめ。

私の場合、回復期に入ってからも生活のルーティンを変えないようにした。そうすることで、徐々に刺激のない生活でも満足できるようになる。Instagramで大好きなブランドのお洋服を見ても「買わなきゃ」という使命感もなく、行きたい飲食店をスタンプラリーのように急いて訪問しなくなった。個人的にはこのことが一番の成長で、休職して最も良かった点である。

おわりに

自分のための再発防止策を書き連ねてみて思う。基本の生活を疎かにしないこと、他者の支援も得ながら徹底的に自分の価値観を見直すこと。この2つが心身の調子を戻すのに大切なことだった。あまりにも長すぎる会社員人生、今後も健やかに働いていきたい。

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