見出し画像

オタクがジャンル「自分」にたどり着くまで

わたしは中学生くらいからオタクとしての自覚をもち、アイドル・スポーツ選手・お笑い芸人・アニメ・ゲームなどの幅広い”ジャンル”を通ってきた。

オタクと「ジャンル」

オタクによくある会話かも知れないが、久々に会ったオタクに「いま何のジャンルなの?」と確認する作業がある。
ジャンルとは、上記のように「アイドル」「スポーツ」「アニメ」などざっくりとした大きな分類から、具体的なグループ名/チーム名/作品名など細分化されたものまでなんでも入る。
そして「いま何のジャンルなの?」とは、「いま何にハマっているの?」と同義である。

オタクというものは「ジャンル」に帰属意識をもつものだ。
「わたし○○の民だからさ~」的な。
「ジャンル」は名刺代わり、肩書き代わり、そして履歴書代わりになる。過去に同じ「ジャンル」を通ってきた者同士であれば初対面でも親しくなりやすい。下手な自己紹介よりもよほど有効だし信頼できてしまう、それが「ジャンル」の来歴なのだ。

「○○のオタク」を自称することは、単なる”ファン”であること、ファンであること以上に愛しているからこそ批評的な目をももつこと、さらに推しや推しカプなどの観点から解釈違いを断罪する過激な思想をもつこと、いろんなスタンスはあれど、とにかく「○○」という「ジャンル」のもとに集う人々をひとくくりにし、そこに自分を所属させることだ。
かつて同じ「ジャンル」で出会って親しくなったオタクでも、次に進む「ジャンル」が違えば疎遠になることもしばしば。ローカルルールが形成されたる「ジャンル」もあれば、急に人気が出たおかげでいろんな人が流れ込んでカオスになっている「ジャンル」もあったり、まあ要するに、出たり入ったりが自由にできるサークル的概念だとわたしは考えている。

で、そのわたしには、今、「ジャンル」がない。

好きなゲームやアニメはある。長年応援してきたアイドルのこともまだまだ大好き。
しかし、以前ほどの情熱を傾けて応援しようとする気持ちがなかなか起こらない。ここ半年ほど、そんなぼんやりとした感じで過ごしている。
好きな声優のSNSもほとんどチェックしなくなった。推しのSSRを見てもそこまで物欲がわかない。これはどうしたことか。

飽きてしまったのだろうか。それにしても、すべての「ジャンル」に対して同時に?
もしかして軽いうつ状態とか? 可能性はあるかもしれないが、心身の不調は出ていない。ただ、興味の対象が逸れただけ。

そう、興味の対象が完全になくなったわけではないのだ。
しいて言うなら、自分。
ナルシストみたいだが、わたしは今「自分」にいちばん興味がある。

自分について考える

数ヶ月前から、いや、もう1,2年前から転職したいなと漠然と考え続けてきた。転職には動機の掘り下げが必要だから、「なぜ転職したいのか」自己分析をした。
いちばんの理由はすぐに出てきた。なによりも「給与」。非正規雇用なので給与がなかなか上がらない。今はよくても、10年後、20年後のことを考えると不安になる。給与は、上げたい。正社員で事務系に就ければ業界はなんでもいいとさえ思っていた。

しかし、お金さえ稼げればいいのか?
転職サイトの「事務職」で検索したページをチェックしているときはいつも、そんな疑問がついて回った。

業界も絞らず、何をしたいのかもわかっていないのに、「職さえ変えれば人生は向上する」みたいな夢を見るのは、あまりにも他力本願すぎないか?

今の職業は給与こそ低いものの、時間的余裕はある。その時間的余裕を引き換えにしてまで職を変えることがはたして最善なのか。
いまある自由時間で何かできないか。

そうやってわたしはこの数ヶ月「自分」について考え続けてきた。いつも通りゲームやアニメやアイドルコンテンツにも接してきたけれど、なにより「自分」のことで頭がいっぱいだった。
クオーターライフ・クライシスという言葉がある。20代後半から30代にかけての年代の人に起きやすい、人生への焦り。わたしはまさにドンピシャの年齢であり、たぶんそういう時期というのも大きな理由だろうが、いま、人生で初めてと言っていいほど「自分」についてこんなに考えている。

もっと若いころから将来を思い描けていればよかったのだけれど、それを悔いても仕方がない。少なくとも今この年齢で焦りに気づけていることを幸いに思うしかない。
ずっとアイドルや芸能人や二次元のキャラクターをステージに上げてあがめてきたわたしが、この歳になってようやく、「自分」をステージの上に据えた。きらきらした照明も黄色い歓声もないけれど、まだ何も見えなくて不安だけれど、わたしは今、何かの「ジャンル」に猛烈にハマっていたときのように、「自分」のことについて四六時中考えている。

今できること、やっていきたいこと

そして今は、自由のきく時間でnoteを書くことを続けている。書くことは、ずっと好きで得意だったからだ。
一度考え直した転職も、結局いつかはするかもしれないけれど、ただ漠然と職や雇用形態だけ変えたかった頃のわたしとは違った自分で臨みたい。
noteを始めて、やっぱり書くことが好きだな、表現したいな、とは思っている。

かつて「ジャンル」というものに求めていた自分の居場所を、いまは自分自身でつくろうとしている。そんな感じ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?