昆虫デザイン研究所

あなたの知らない昆虫の世界。

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変化、さもなくば死

周囲の環境に溶け込む。 保護色や擬態に代表される自然界の知恵は、野生を生き抜く上で重要なテクニックである。 天敵に見つからない、というのはそれだけでアドバンテージ。 いかに戦わないかが生存につながる。 そんな強かさが、現代にまで命のバトンを繋いでいる。 しかし、この世界には時に自然界の環境さえも変えてしまう存在がいる。 人間だ。 時は19世紀、イギリス、産業革命真っ只中。 石炭を燃やせるだけ燃やしまくり、あたりは煤と煙に覆われた。 当然、その影響は自然界にまで及び、小さ

    • あなたの知らないツノゼミの世界

      ツノ、オオアゴ、ハネ、アシ、ツメ…。 昆虫たちはそれぞれが独自に部位を発達させ、各々の生存戦略に役立てている。 その中でも特に奇抜な部位を発達させた者がいる。 “ヘルメット”と呼ばれる構造を持つ、ツノゼミという虫だ。 ヘルメットは前胸という部位が変形したものとされている。 カブトムシにも前胸にちょっとしたツノがあるが、ツノゼミの変形は数段独創的だ。 ほんの数ミリ〜大きくても2cm程度の虫にも、こんなにもワクワクする世界が広がっているとは思っても見なかった。 私と同じ感想

      • 身近に潜む虫の“目”

        蛾、に代表される夜行性の虫にはある特徴がある。 なんと、目がトゲトゲしているのだ。 これは単に複眼、という話ではない。 夜行性の虫というのは、太陽の100万分の1しかない月の光を頼りに活動する。 そのため、効率よく光を吸収できるような構造が施されているのだ。 これをmoth-eye(モスアイ)構造という。 ナノサイズの紡錘形の突起が、ナノサイズの等間隔で規則正しく並べられている。 突起と突起の幅が光の波長よりも小さいので、光が反射せずにそのまますり抜けるという仕組みだ。

        • 生き辛くても自慢したい…っっ‼︎

          目と目が離れているほどカッコイイ、という価値観の虫がいる。 シュモクバエだ。 アフリカなどの熱帯に生息し、150種以上が確認されている。 名前の由来となった撞木は、金を鳴らすための木槌のことだ。 目と目が離れている利点は、周囲を広く見渡せたり、獲物との距離をより正確に測ったりするのに役立つという。 しかし、1番の要因は、やはりモテることだろう。 目と目がより離れているオスほどメスに好かれるため、際限なく伸び続けている。 長ければ長いほど優秀、というシュモクバエ界隈の

        マガジン

        • 【擬態の達人たち】
          1本
        • 【奇妙なカタチ】
          2本
        • 【デザイン工学】
          2本
        • 【虫の魅力】
          1本

        記事

          最適解を生きているっ!

          イルカとサメは非常に似たフォルムをしている。 どちらもスラっと美しい流線型のフォルム。 しかし、イルカは哺乳類で、サメは魚類。 こんなにも生物学的に離れた種が似た形になるのは少し奇妙でもある。 考えられるのは、両者とも「水中を素早く泳ぐ」という目的に特化して進化した、ということ。 このように、ある目的に対して一つの最適解に辿り着くことを収斂進化という。 逆に言えば、流線型のフォルム以外のイルカやサメは、自然淘汰されて存在できなかったのかもしれない。 つまり、イルカとサメに

          最適解を生きているっ!

          昆虫の多様性は世界一ィィイイーーーッ‼︎【虫の魅力】

          昆虫の世界に興味を持ったのは二十歳を超えてからだった。 私はNFTアーティストとして生き物を描く、ということをしていた。 あらゆる図鑑に目を通し、生態を調べ、描く。 カエルとか、ペンギンとか、金魚とか。 大学の講義もそっちのけで、とにかく描く、という日々だった。 そんな中で、私はあることに気がついた。 昆虫の圧倒的多様性である。 例えば、ゾウは数種類しかいない。 アジアゾウ、アフリカゾウ、ナウマンゾウ、インドゾウ…。 多分このくらい。 しかも、パッと見でほぼ全部おんなじ

          昆虫の多様性は世界一ィィイイーーーッ‼︎【虫の魅力】