Ændroid Clinic
これから始まる物語はスペキュラティブ・イマーシブシアターとして実際に体験していただくことができます。
下記よりの物語は2020年6月1日より8月13日まで、毎日の新型コロナウイルスからの退院者数を文字数として変換し、連載していきました。2ヶ月と12日間で計20443名の方が退院し、20443文字の物語として完結いたしました。(※12月22日、イマーシブシアターの体験日から49日後に新たな物語を追記しました)
1人1人の再生を新たな物語の文字として変換し、いち早くの事態終息を祈ります。
1/Avatar
私は4畳半の暗い部屋で1人、ヘッドマウントディスプレイをつけていた。口元が、ニヤっと上がった。
ファイナルファンタジーXXIVの8周目を始めようとセレクトボタンを押しかけた時、塩をふりかけられた幽霊が少しずつ上空に成仏していくように、すうっと、いつか自分が死ぬことへの恐れが消えてしまったのだった。
私たちは人生というゲームの主人公ではなくて、主人公を操るゲームの操縦者の方だったんだという当たり前のことに、8周輪廻してようやく気づいたのだ。
私という身体、キャラクターは確かにここにあるように思うけれど、それは次の周期ではまた別の外見や性格、人生に変えられる。変えられるのか、変えられてしまうのかは分からないけれど。12歳の私にとって何故かそれはとても現実的なことだったので、宝箱から探していたレアアイテムを手に入れた時のように身震いしてしまった。
来世は外に出ても咳き込まない緑がいっぱいの街に生まれて、妹が1人と父と母の4人家族。父は暴力を振るわず優しくて、仕事はスペースコロニーを開発していてみんなから尊敬されている。母はガーデニングが趣味で、私たちの誕生日をちゃんと覚えている。美味しいケーキだって焼いてくれる。妹は健康で、自分の足でどこにでもいける変わらず可愛い妹。私も自由。この上なく自由。学校にも行けて、友達や恋人もできたりして、誰も見たことがないような服を作るデザイナーとして、世界中で仕事して家族を1人で養えるくらいお金持ちになる。
そんな来世の私を想像していると外では鴉が鳴いていた。いそいそとヘッドマウントディスプレイの電源を切り、そそくさと掛け布団を被り、すやすやと眠りについた。
ーー春眠暁を覚えず。
いつの間にかこんな時間。
目覚ましのアラームも鳴き疲れた頃に目が覚める。
服を脱いで、シャワーを浴びて、歯を磨いて、服を着て、慌ててヘッドマウントディスプレイをつける。
「ごめん!待った?」仮想現実の世界で待ち合わせていた友人たちのアバターは「アキ、また寝坊?」「まぁいつものことだしね、それよりそろそろ行こう」とVR WORLD「天」内で今話題のブランドのアバターショップへ共に出かける。3人とも特に欲しいものはなかったが、とりあえず見に行ってみようよということだった。
天では所狭しと人が集い、地面も空も広告で埋め尽くされている。私たちの左側を走る青と透明の中間くらいの色をした2車線の道路の後ろの方から、来月行われるバーチャル地区選の街宣車のプロパガンダが聞こえ、私は右耳だけ音声を切る。左耳からは2人の話し声と木々が揺れ野鳥が歌う森のBGMが8対2くらいの割合で聴こえてくる。生身の私は部屋の寒さを感じたので、人差し指、中指、親指の順に指を立て、AIアシスタントに部屋を暖め、コーンスープを入れる指示を出した。
この街の吹雪はもう2年続いている。
大雪警報はこの2年1度も消えず、多くの人が家へ引きこもっていた。
街は地区全体を1つのクリエイティブコモンズとして、世界中から制作案件の受託をして街の在宅ワーカーへ仕事を振り分けた。税額控除付きのクラウドファンディングをして支援金を募り、ブロックチェーンで管理された制限付きのローカルバーチャルマネーをベーシックインカムとして住民に配布し、経済を回したりもしている。食事は個人の好みに合わせたものを最適な栄養バランスに整えて、自動配達ドローンで決まった時間にやってくる行政サービスが格安で提供されている。
ライブハウスやクラブは全て消えたが、友達と遊ぶときは天で世界中を旅しながら各地のフェスやパーティーを楽しむことができている。とはいえ過半数以上の大勢の人は別の街へ疎開していったけど、私は別にここで良かったし、というかどこでも良かった。
「アキ、そういえば明日誕生日だよね?」と黒髪ロングでモデルのような綺麗な顔立ちをして、黒のロングドレスを着こなすアバターの可奈がにっこり微笑みながら話す。本当の姿はもちろん知らないけど、もう2年も付き合っていると知りたいとも別に思えなかった。「あ、そういえばそうだね。というか、よく覚えてたね。」と私は話す。四季を失った街は同時に時間の概念も希薄になっているようで、記念日とか待ち合わせ時間とか、そういうことがどうも覚えづらい頭になっている。そっか、明日で私は26歳か。
「そうなんだ、アキおめでとう!」と金髪にゆるふわなパーマをあてて、下瞼の太めに描かれた朱色のアイライナーが特徴的なメイクの雪絵が、バイオリンの高音域みたいな声で祝福する。声はもちろんボイスチェンジャー機能で変えていた。そういえばいいものがあるよ、と可奈のアバターがポケットを探る仕草をする。
「じゃーん、これ知ってる?Android Clinicのチケット。」銀色に光るチケットが掲げられ私たちはほぼ同時に「アンドロイドクリニック?」と首をかしげる。「これはね、ざっくりいうと生まれ変われるチケットなの。」そのまま続けて話す可奈いわく、Android Clinicというのは、自分たちの意識をバックアップして、別の媒体に移植できる手術が行える特別な認可を得た病院のことらしい。
旧西洋発の技術で、既にいくつかの場所で普及している。病院といっても緊急な患者は少ないので、外も内も変えられる新しい整形外科のような扱いで、若者世代を中心に人気を博しているとのこと。実は昨年日本の地下渋谷「方舟」にも国内初の店舗がオープンしていたらしい。
「実はここ、明日横浜にオープンするんだよ。たまたま知り合いからもらった貰い物なんだけど、そういえばアキが住んでる街は横浜近いなぁと思って。私は遠いから行けないけど、ちょっと早い誕生日プレゼントにアキにあげるね!」といって手を差し伸べる仕草と同時にクラッカーが弾けるアニメーションが画面を彩る。
「え、いいの?」と驚いた顔をする私のアバターの横で雪絵は「え、いいなー」と羨ましそうな顔をしている。可奈は補足するように「もし転生したとしても、いつまでも友達だから。ま、使わなければ他に必要な人にあげちゃってもいいし!」そう言って私のDMにチケットのダウンロードリンクが送られてきた。
理想の自分に生まれ変われる場所。あまりにファンタジックな世界だけど、こんな技術がすでに世界にはあるんだ。まだ半信半疑ではあるけど、とりあえず生身の世界に戻ったら詳しく調べてみようと思った。
その後2人と訪れた店では結局何も買わずに、適当に辺りの店をぶらつきながら、午後7時に別れを告げた。ヘッドマウントディスプレイを外すと、窓の外は白から黒に変わっていて、私はフードポストに投函されていた夕食の箱を机に並べ、タブレット端末でAndroid Clinicのことを調べていた。
経験者のレビューによると人生の全てを1からデザインできる医療サービスということらしい。まずはじめにニューロンと繋がった耳裏の外部取り付けデバイス「ShifT」を使って記憶をバックアップし、その後アンドロイドの身体のソフトとハードを設計していく。
ソフトとなる意識のOSは問診によりプログラムしていくとのこと。次にOSをインストールしたアンドロイドと生身の自分のニューロンを接続し、記憶の消去とインストールを同時に行えば転生完了とのことのようだ。 難しいことはよく分からないけど、天でアバターを好きなようにカスタマイズできるように、見た目も中身も何でも思うがままになるということだと理解した。
つまりはこの小さな鼻も、細い髪も、ネガティブな思考も、ゲームが好きなことも、一旦全部なくなって、そしてまた新しく作り変えられるのだ。私は生身の自分の人生を、完璧にデザインできる権利を手にしたんだ。待ちわびていたゲームの発売日が決定した時にでる快楽と同じ性質のものが脳内で分泌されていると思った。
やかんのお湯が沸き、溢れたお湯がIHにじゅわっと溶け、その音を聴いてそろっと腰を上げる。お湯を急須に入れ、熱いほうじ茶をマグカップに注ぐ。入念に息を吹いて冷ましていると、不意に口笛が鳴る。とても阿呆っぽい音色だった。ゆっくりと1口すすり、熱さが喉元を過ぎてゆく。一呼吸してからゆっくり目を閉じて、今の私を続けられなくなることに悔いはあるか?そう自問し、3秒で「ない」と自答した。
雪がいくら積もっても白は白であるように、ただ淡々と日々が過ぎ、やがて細胞分裂が限界を迎えて死ぬ。それだけの人生に何の価値があるのだろうか。それならもう出来るだけ早く、理想の自分に転生して、まるでこれまでの人生は嘘だったかのようにやり直せたらどんなに良いだろう。そう思いながら私は配膳された夕飯に視線を移し「最後の晩餐はサバの味噌煮か」とつぶやいた。
いつもより少しゆっくり食事を済ませた後、もらったチケットデータをAIアシスタントに送り、早速明日の予約を済ませた。「明日が2度目の誕生日だ!」と嬉々とした声でぼふんとベットへ倒れこんだ。ピコンとデバイスに通知が来る”Android Clininc予約完了と当日のご案内”。そこにはいくつかの質問事項と会場までのアクセス情報などが書かれていた。質問は来世の目の色、大きさ、まつげの長さ、、家族構成、結婚する時期、ここまで詳細にデザインできるんだ、と天のアバターの設定画面をイメージしながら想像を膨らませていた。
そういえば昔もこんな風に次の自分を考えていたりしたっけ。もう忘れてしまったけど。まぁいいや、そろそろ寝よう。おやすみ、これまでの自分。
2/Back up
氷河期を迎えた人類が住まう無機質な地下都市、そんな印象を受ける最寄りの地下鉄のホームに降り立った。しばらく整備されていないであろうエスカレーターは轟々と天を目指し、機械音は地下鉄の巨大な空洞の奥の方まで響き渡る。
鉄と石の階段を面倒臭がりながら踏み鳴らし、登り続けると光が見えた。久しぶりに見る自然の光だった。一瞥して眩しく、容赦のない刺激が妙に心地よかった。外に出ると眼前を灰色の車道が横切る。回転レーンの上のお寿司のように、規則正しく車が走行している。この日常の営みも久しぶりに目にすると、不思議なものに見えてしまって、ぼうっとそこに立ち竦んだ。
アスファルトは太陽を歓迎するように光を放つ。 Android Clinicはここから道路を正面に、右にまっすぐ徒歩1分ほど進むと到着した。透明なドアと白い壁がそびえたつ。オープン記念の花だとか、看板や案内もないので訝しみつつ、他にそれらしいものものないので勇気を出して入ってみる。
足元の白い人工芝を踏む感触があの街の雪上と似ているなぁと思った。「いらっしゃいませ!」急な声にびっくりして、その声がする方を振り向くと奇怪な仮面をつけた人がいた。いや、人なのかどうかはまだ分からなかった。
「えっと、Android Clinicってここであってますか?」仮面は笑顔でこう答える「いかにも!」全く病院らしくない装いやキャラクターに、訝しさはより一層増しつつも端末にチケットデータを表示させ、提示する。
「ご予約いただいていたアキさまですね!お待ちしておりました。オープン日にご来院してくださったこと、心より嬉しく思います!」ご機嫌な声調は更に勢いを増し「今!アンドロイドへ転生するのはとても良い判断です!これから先の時代、温暖化し続ける気候に比例して巨大な台風や津波が大地を襲い、毎年新種の疫病が生まれ、蔓延し、生身の身体では地下で孤独な隔離生活を管理されるのが関の山でしょう。不死の肉体に乗り換えることは種として健全な判断です。何故なら私たちは自由な生き物であり、共同主観幻想という特別な能力を持って、身体に捉われず共同体を形成できるからです。あらかじめ与えられた肉体を脱出することは、私たちの種をより高次元の存在にすることでしょう。」と雄弁に語る。
ほとんど何言ってるか分からなかったけど、理想の自分になれる場所が本当にあったんだという高揚感で訳も分からず「素晴らしいですね」と答えてしまった。
「本院の転生施術は2回に分けて行います。1回目、初日となる今回は貴女様の記憶や意識といった”これまでの情報”をバックアップし、”これからの情報”を問診させていただきます。次回、2回目は基本的な脳のアルゴリズムで生成したプログラムに、これからお聞かせいただく情報をアレンジして独自のアプリケーションを作成致しますので、そちらをお好みの外形に整えた新しい身体にインストールし、バックアップデータを消去。これで完全に転生が完了いたします。
つきましては1回目の施術を行う前にこちらの誓約書に同意をいただけますでしょうか?」
1.バックアップデータを消去した段階で過去の自身に戻ることは如何なる場合も不可となります。
2.転生施術終了後は精神障害のリスクを鑑みてその後20年間は転生施術を行えません。
3.問診後作成した意識OSへのクレーム、返金は一切お断りさせていただきます。
4.施術を途中で止めることはできません。施術中は必ず当院スタッフの指示に従い、施術中に器具を取り外す、暴れるなどの行為は絶対におやめ下さい。甚大な脳障害が残る可能性がございます。
5.一度インストールしたOSを途中で編集することはできません。
理想の自分になれるなら今の自分にわざわざ戻りたくなるわけもないし、全く問題ないなと私は同意書にサインをした。 「ありがとうございます!それではどうぞ前方へお進みください。今日が貴女の良きリバースデーになりますよう。」 靴を脱ぎ扉を潜り、薄暗い通路を慎重に一歩ずつ歩みを進める。
「これより貴女のこれまでのデータをバックアップし、そのまま問診に移ります。バックアップ自体はものの5分ほどで終了いたしますが、その間一時的に生命活動を停止、いわば仮死状態になります。」
「仮死・・え、大丈夫なんですか。」さすが怖くなってきた私は不安になってそう尋ねた。「ご安心ください。世界中で臨床を重ね、未だ仮死状態から戻ってこれなかった事例は1度もございません。ただ、最中に天使を見たとか、龍を見たとか、奇妙な幻覚を見るという症例は報告されており、もしかしたら幻覚を見る可能性がありますが、必ず今いる世界に戻ってこれるよう私がサポートいたしますので落ち着いてご対応くださいませ。」
怖いけど、なんだか逆に少しワクワクしてきた気もする。子どもの頃、死にそうになったことはよくあったけど、まさか能動的に死に近寄るなんて思ってもみなかった。一体どうなるのだろうと私は考えていた。「一時的にではありますがこれよりお亡くなりになりますので、通例として遺影を撮影しておきます。ネガティブな意味ではなく、新しい自分に生まれ変わる前の記念撮影なので、遺影というより気分としてはイェーイみたいな感じですね。」新しく生まれ変わる理想の自分を想像しながら、私は笑顔で遺影撮影をした。
「バックアップを行う装置はこちらになります。まずはこちらにお入りになってください。」と棺桶のような形をした装置を指した。ただの棺桶のように見えるが、爪先から恐る恐る入棺し、仰向けになった。すると仮面に怪しい色をした液体が入ったショットグラスを手渡された。「こちらが一時的に仮死体験を行える飲料となります。こちらを飲み干していただきましたら、そのまま目を閉じてしばしお待ちください。装置を起動するにあたって多少揺れが発生しますが、気にせずそのまま5分ほど目を瞑っていてください。時間になったら蓋にノックをいたしますので、ご自身で蓋を開けて起き上がってください。」 私は無言で頷き、ええいままよとドリンクを飲み干した。
濃いチョコレートのような味だった。そのまま装置に体を横たわらせると、蓋が閉められ暗闇がやってきた。「逝ってらっしゃいませ」と微かに聞こえた。
3/Choice
徐々に目も、鼻も、耳も、あらゆるセンサーと世界との関わりがなくなったいく。これが、死。宇宙空間にポツンと1人浮遊しているような感覚。
そしてふと、私と母にまつわるいちばん古い記憶が脳裏に浮かんでくる。静岡の高原、見渡す限りの針葉樹とハルジオンの草原。小さな私は両手を広げて走っていて、両親が後ろから見守っている。次に馬と触れ合っている映像が浮かんできた。映像は次々と切り替わる。
父親から蹴られ、母が庇う、私は泣いている。17歳ごろ、静かな家。虚ろな目をしている。何故自分が俯瞰して見えるのだろう。夜に家を逃げ出した時の映像、角ばった砂利を踏む足の痛み、住み込みで働いていた宿、来客に怒られている。初めて契約したアパートで布団に転がる時の感触、五感が持っていた様々な情報が細切れに、重なって、高速で、乱暴に、次々と流れ込んでは過ぎてゆき、その記憶たちは、砂袋からさらさらと砂がこぼれ落ちていくように、もう2度と戻ってこないように思えた。
めくるめくアンコントローラブルな速度に、三半規管はぐるぐる混乱し「助けて」そう思ったとき「コンコン」とノックの音が聞こえた。私は目が覚めて現実に戻った。ノックをされたら蓋をあけることを思い出し、私はゆっくり棺桶の蓋を持ち上げた。 視力を失ったと思った。見渡す限り光しかない。白い光がただ私の周囲すべてに展開していて、それ以外には何もない。
しかし目が慣れてくるとやがてそこに白い椅子やテーブルなどの物体が少しずつ現れていった。「ここはどこ・・?」この世なのかあの世なのか全く分からなくて、でも自分の存在の輪郭はいつものようにはっきりしている。そして私は立ち上がり、周囲をきょろきょろと見渡す。先ほどの仮面がいない、どこにいったのだろうと不安になり空間を歩き回り散策するも、どこにも見当たらない。
ここが天国?と思ったところで 「アキさん、ようこそ」 後ろから突如名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がりそうになった。そしてその鼓動がようやく自分の体に現実感を取り戻し、肉体を所有していることにほっとした。先ほどの仮面かと思いながら振り返ると、そこには天使がいた。遺伝子構造のような幾何学模様の白い仮面から口だけが見えて、髪は非現実的なシルバーのサラサラとした長髪、華奢な身体を真っ白な服が包んでいる。
なぜそれで天使だと思ったかというと、あまりに美しかったのと同時に羽根が生えていたから。 「それでは問診に移りますね」 そうか、ここはAndroid Clinic。少しずつ記憶を思い出してきた。これから問診が始まるんだと、指定された席に座った。「では1つずつお伺いしていきます。来世のあなたはどこに生まれたいですか?」私は「生まれる場所・・え、ほんとにそこまで設定できるんですか?」と正常な自分に戻るまでの猶予を確保するように、おどおど質問をした。
すると天使は微笑んで「はい、貴女の思う理想の全てを実現することができます。」と答えた。私は頭を整理しようと息を深く吸って、長く吐いて「そしたら、朝霧高原の小さな診療所が良いです。」と答えた。「かしこまりました。ではどのようなご両親のもとに生まれたいですか?」「そうですね、2人とも優しくて、そこそこにお金を持っていて、穏やかで、私を愛してくれている。父は大きな会社、あ、宇宙開発系の会社でちゃんと働いていて、私のことを守ってくれる。母は料理が得意で、誕生日にはケーキを焼いてくれます。両親とは毎日一緒に晩御飯を食べるんです。」
「かしこまりました。ご両親はあなたをそれぞれ何歳の時にどうやって出会い、どのように暮らして出産まで至ったのでしょうか?」そんなことまで聞くんだ・・・なんて思いながらそれからも私の来世の年表を1つ1つ細かく埋めていくように質問が続き、あっという間に30分ほど経過した。 「以上で問診は終了いたします。お疲れ様でした。」「あ、ありがとうございました。」自分の内側の全てをさらけ出したみたいで妙な疲労感と達成感があった。「ではまた現世に意識を移しますので、こちらに横たわってください。」
え、現世?ってことはやっぱりここは・・・「こちらの飲料をお飲みください」と天使にドリンクを手渡されまた1息で飲み干し、横たわると「またお会いしましょう」と天使が微笑み、蓋が閉められる。暗闇の中で私は頭の中で先ほどの質問と、自分の答えを反芻していた。「あれでよかったのかな」「本当に私は26歳で30歳の世界的アパレルデザイナーと結婚するんだろうか」
「でももし全部本当に叶ったら・・」膨れ上がって身体が爆発してしまいそうな期待を抑え込むために、出来る限りの可能性を疑って、出来るだけネガティブにネガティブに考えるようにして、必死に口角が緩むのを我慢していると「コンコン」とノックの音が鳴り、私はまた蓋を開けた。 元の場所に戻っている。
辺りは薄暗く仮面は見当たらない。これからどうすればいいんだと思いながら、とりあえず荷物をまとめてそそくさと出口の方へ向かうと、後ろから「Happy Re BirthDay!」愉快な仮面は笑顔で私を祝福し、拍手をしていた。
「では次はまた来週にお越しください。その時までに来世の貴女のプログラムを完成させておきますので、いよいよ新しい人生の始まりです!」と両腕を広げ仰々しいポーズをとっていた。 まだ頭が少しぼやぼやしながら施設を出て、現実感のない現実的な道路を歩く。てっきり今日で生まれ変われるのかと思っていたけど、まだ私がいるなぁと頭の中の自己を確認する。「もう少しだけよろしく」と私に私が話しかけると、返事はなかった。
地下鉄で家の最寄り駅まで戻ると、街は一寸先も見えないような白が吹き荒れ、私は駅で無人タクシーを待っていた。手がかじかむので自販機でコーンスープでも買おうと構内を探し歩くと、モッズコートを着た長髪の男性と目が合う。芥川のような端正な顔立ちをしていたが、服は酷く汚れていて、酔っていた。周りには毛皮のフードのダウンジャケットやマウンテンパーカーなど、暖かそうな分厚い服を雑に重ね着した2~30代くらいの男女の集団が、共にワンカップの酒やウイスキーの瓶を酌み交わしている。分かりやすく頬を赤らめ、ゲラゲラと。
彼らは俗にホームモアと呼ばれている集団、思想で、この街で異常気象が常態化してから少しずつ数が増えていった。行政はすべてのホームレスの人達に避難場所を確保し、ほぼすべての人たちが別の地区へ疎開していったけど、元々ホームレスだった人、そうでない人、1部の人は群れとなってこの街を遊牧するようにサバイバル生活をしている。
彼らの暮らしはとても真似できないなと自分と切り離す一方で、なんだか少し羨ましく、あんな風に他人に心を開いて肌を寄せ合って生きることを、高嶺の花を見つめるような気持ちで今も眺めている。もし、彼らにAndroid Clinicのチケットを渡したら、使う人はいるのだろうか。そんなことを考えながらタクシーに乗り込み、ざくざくと雪を踏み鳴らしてアパートの2階の家のドアを開ける。
家の中もとても寒くて「おかえり」と誰かに言って欲しい気分だった。
4/Dreaming
新緑がさらさらと揺れ、その光景と同じ心地よさが身体を通過する。腰掛けるのにちょうど良い切り株に座り、目の前の陽の柱を眺めている。そこには時折小さな虫が横切ったり、柱がゆらっと揺らめいたりする。
私は微睡みながらも、醒めていて、ただその柱を見つめ続けることが人生のうちのすべてのように、時も気にせず過ごしていると、空中からモズの鳴き声が聞こえてくる。そうすると風が渦を巻き、葉が吹き荒れて身体を叩き、やがて地面にはブラックホールのような大きくて深い、途方もない闇がぽっかり現れて、私はなすすべも無く落ちていく。強い重力を感じながら、ああもうだめだ、というところで目を覚ました。
スマホを見ると、12時間も寝ていたらしい。よく寝たなと思いながらメールやSNSをチェックしていると、Android Clinicから1通のメールが届いていた。「こんにちは。お目覚めはいかがですか?これから次回の施術日まで、先日の問診の内容について、お考えの変更がないか再確認をさせていただいております。尚、本メールの返信を持って最終確定とし、今後の変更は一切できかねますので、くれぐれもご注意くださいませ。」という文面に併せて記載されたURLを開くと、問診の質問と私の回答がQ&A形式のリストとなって表示されていて、変更したい箇所を修正できるようになっていた。
文末には修正締切日が今週末までと記載があり、まだ時間があるので1つ1つゆっくり考えていくことにした。
Q「死を設定しますか?」
次の身体は歳をとることもできるし、とらないこともできる。通常の人間のスピードに合わせて老化していくこともできれば、その半分くらいの速度で老化することも、逆に2倍速で進めていくこともできる。
そして老化の末に死を設定することも、しないこともできる。 私は、設定することにした。死期は転生から1000年後。浅慮には永遠の命に憧れもしたけど、終わりがないということほど怖いものはないなとすぐに勘付いた。
とはいえせっかく転生するのに100歳で終わるのも味気ないし、1万年先はまるで世界の行方が分からない。人類は滅んで、別の生物が統べる時代が来ているかもしれない。だから、なんとなく人類はまだ続いていそうな気がする1000年後。この選択に変更はなかった。
Q「何歳から転生しますか?」
赤ちゃんから始めて、今世と同じように年を重ねていくことも、永遠の17歳となることもできる。いつから始めても、それまでの人生の記憶は設定した通りに過去として存在する。いろいろな選択肢がある中で私は今と同じ26歳から始めることにした。
実際の姿は見えないにしても、少なからず付き合いのある可奈や雪絵とこれまで通りの関係でいたいということもあったし、社会的にも26歳というのは何かとちょうどいいように考えていた。ここも、変更なし。
Q「職業を設定しますか?」
この質問の前にはお金の受け取り方について、能動的か受動的か選べる選択肢があった。例えば何らかの高位に立ち自動でお金が入ってくる設定にもできるし、自身のスキルや選択を通して能動的に社会経済と関わりを持つこともできた。
私は後者を選び、職業という概念を設定した。仕事というのは役割で、社会の中で役割を持つことが空虚な日々を送らないために大切なことだと、昔両親を見ていて学んでいた。
楽であることは魅力的だけど、積極的に楽を避けないと人として没落してしまうのではないかという恐れがあった。 そしてこの質問には下記のような注意書きがあった。
※設定された職業、キャリアに紐づいて必要な思考や記憶が自動設定されます。
例えば著名なコンサートピアニストを設定するならば、幼い頃からピアノを毎日練習していたという記憶が設定されたり、人前で演奏することが快楽に感じるような思考になっていたりすることだと理解した。
私が設定した世界的アパレルデザイナーという職業には何が紐づくのだろうか。服飾系の専門学校を卒業したとか、幼少の頃に海外で生活した帰国子女だとか、とにかくセンスがいいとか、そういうことなのかな。私はその職業になるためにどうすればいいかとかよく分からなかったけど、とりあえず良しとしてそのままにした。
それから日々少しずつ来世を校正した。すぐに決意が済んだものもあれば、逡巡するものもあって、時間がかかる質問は大概、これまで考えたこともないような種類のことだった、例えば、生まれてくる子どもがどういう風に死ぬかなんて、一度も考えたことがなかった。
よく分からないことはおまかせ自動設定にも出来るので、来世にはいくつかの余白があるものの、概ね私の意図で埋め尽くされていった。
明日はいよいよ転生日(バースデー)。外は変わらず真っ白で、びゅんびゅんと風が窓を揺らす音だけが部屋に響いていた。私は座椅子に腰掛けて、ゆっくり、おおきく息を吸い込んで音もなく静かにスローに吐いていった。
意匠は済ませたけど遺書とか一応書いておこうかなと思いたち、バックの中に散乱した適当なボールペンをつまみ、昔買った滝の絵画のポストカードに遺書と書き、裏にメッセージを書き遺すことにした。 そして書く言葉を考えるうちに、あれ、これ誰が読むんだろうと考えた結果、何も書くことはなかったので丸をぐるぐると何度も重ねて書いて、テーブルの上に置いた。
テーブルと一体になったディスプレイを見ると天に可奈と雪絵がログインしているようだったので、ヘッドマウントディスプレイを装着し世界へ入った。「アキだ〜」とふわふわな白いワンピースを着た雪絵のアバターが私に声をかけると「お疲れー」と可奈も続ける。私のアバターは笑顔で「実は可奈にもらったチケットで早速Android Clinicに行ってきたの。それで、急なんだけど明日転生するんだ。」と告げると、可奈と雪絵の間に一瞬重い沈黙が流れ、それはこの天で付き合い始めてから本当に珍しい、真実味を持った時間だった。
「・・・え、明日?はやすぎてびっくりした。」と可奈は驚いたような引いたような表情をしていて、雪絵は「すごいね!ところで次はどんな人になるの?」と笑顔で聞いてきた。「明日からも26歳の女だけど、世界的なアパレルデザイナーになってるから、よろしくね」と冗談っぽく話たが、伝えながら何をよろしくして欲しいんだろうと我ながらよく分からなかった。というか、どんな気持ちでこんな話を受ければいいのか、もし私が目の前の2人だったら、ただ沈黙してしまうかもしれないと少し後悔した。
2人は、そこから先は深く聞かず「ま、とにかくおめでとう。今日は最後の日を楽しもう」という結論にまとめ、いつも通りにカフェに行ったり、クラブに行ったり、仮想空間を満喫して時を過ごし、別れを告げた。
目覚ましが鳴き疲れた頃に目を覚まし、慌ててスマホを見ると転生の施術まであと1時間。やばい。と思って無人タクシーを手配した後、配給された朝食も食べずに慌てて身支度を済ましタクシーへ飛び乗った。車内では360度企業広告映像が流れ、逃れる空間がないので目を瞑って耐え凌ぐ。
到着すると駅構内へ走り出し、何とか予定していた地下鉄に間に合った。これで安心と一息つきながら、こんな時間にルーズな自分とも今日でおさらばだと思い、大きな鉄の塊と力の抜けた身体が同じように揺れていた。 頭には何故だかホームモアのうちの1人、長髪の男性の顔が浮かんでいた。 駅のホームに到着し、長いエスカレーターと階段を少しずつ上昇していく。 改札を抜け、外に出ると目の前のベンチに黒い服を着た大柄な女性が座って、何か呟いていた。
私はどきっとしたが、この時間にこの場所にいるということは彼女もこれからクリニックに向かうのだろうかと思っていた。「大丈夫、次の私もやっていける、練習はしてきた、大丈夫、不安はない、やっと始まる、これから、やっと」俯きながら呟いている彼女をつい見つめてしまい、彼女が顔を上げた瞬間に目があった。
目の奥に通ずる隠しきれない不安の色に、つい私は共感して声をかけた。「あの、もしかしてこれからアンドロイドクリニックに?」女性はビクッと体が震え、おどろおどろ「は、はい、、あなたも、ですか?」と返答した。「はい、私もこれから。次の施術は合同で受けるようで、何名くらい来るのでしょう。」「そうですね、、あんまり多いと、ちょっと・・・」私は頷き、ベンチに座って良いか目配せし、彼女も無言で頷いたので、ベンチに腰掛けた。「不安ですか?」と自分に聞くように黒い服を着た女性に話しかけた。
女性はこちらを見ず俯いたまま「そうですね・・・でも、転生するためにここまでやってきたので大丈夫です、多分。」と返答した。私も同じ気持ちだった。転生することに迷いはない。「そしたら向かいましょうか」と私たちはクリニックへ歩き始めた。踏みつけるコンクリートの感触が、いつもより少し硬いように感じていた。
5/Enter
右膝を上げて、少し前に出す。その際左腕をやや後方に振り、右足の着地と共に左腕をやや前方に振る、などと、やり方を意識しながら歩行すると途端に難しくなる。私は今そんな歩き方をしていた。二酸化炭素で温められた空気が生ぬるく身体を包む。白い壁まで辿り着くと眼前の扉を開け、靴を脱いで踏み込み、薄暗い院内へ入っていく。
すると私たちの他にも既に多くの人がいて、壁際で誰かと話していたり、瞑想している人もいる。院内の中央にはオレンジの揺らめきが1、2、3、25本。25本のロウソクがそれぞれ間隔を空けて1本ずつ横にきちんと並べられている。更に火に近ずくとロウソクはそれぞれ小さなケーキに刺さっていて、その下に見知らぬ顔写真と何かのシートが差し込まれていた。
「皆さま、ようこそお集まりいただきました!」入口の方から声がするので振り向くと仮面がいた。道化のような口元でニヤニヤと私たちを見つめている。「今日はここにいる皆さま全員の、新たな誕生日。本当におめでたい、バースデーです。皆さま全員分のプログラムは既に完成し、そちらのケーキの下に皆さまの来世をまとめたシートを置いてあります。
まずはご自身のものをお探しいただき、ケーキもぜひお召し上がりください。私たちからのささやかなお誕生日プレゼントです。」と同時にブラームスのハンガリー舞曲 第5番が爆音で流れ始め、ドキドキして待っていた私はすぐに自分の名前を探し始めた。
周りの写真を見てみると、やはりどれも皆美男美女だなと思いながら、猫の写真もあったのでビクっとした。先ほど出会った女性も焦った顔で名前を探していて、モデルのように黒髪のスラッとした女性の写真を取っていったのだが、その写真の女性を私はどこかで見たことがある気がした。まぁいいかと、私はせっかくなのでケーキもいただき、人工的な甘さが口内に広がっていった。
「それでは皆さま、本日はお祝いですから乾杯しましょう」と仮面はより高揚した声調で人数分のグラスを並べた。私たちは言われるがままにドリンクを持ち、宙に掲げ「新たな誕生日に」という仮面の声に合わせて周囲の人たちとグラスを重ねた。見渡すと、中年から初老の姿が7割ほどで私や駅前で出会った彼女の若さはやや浮いていた。中には本当に体調の悪そうな人もいて、私は妹の顔を思い浮かべながらそもそもそういう使われ方が正しいのかもなぁと思っていた。 薄暗い院内の正面に突然光が射し、人の顔が映る。
見ているとこれはこれまで転生をしてきた人たちのインタビュー動画のようだった。「求めていた姿が実現され満足しています」と美しい女性が話す「これが本当の自分だったんだ。」と敏腕経営者風の男性が話す。
通販のダイエットサプリのCMのような既視感がありつつも、アンドロイド化するということはいい判断なんだと、私は思っていた。「あなた、、います、め、、」声が聴こえるが、映像からではない。耳で聴いている感じでもない。脳の中から響いているようなそんな間隔だった。音はぶつ切りで、叫びにも聞こえる。気になりながらも、私は引き続き映像に意識を移し、まだかまだかと転生を待っていた。
映像が終わると院内からは拍手が起こり、大いに盛り上がり、私も笑顔で拍手をしていた。今日はなんていい日なんだと思いながら周囲を見渡すと、何人かの人が消えていることに気づいた。入り口を見ると靴の数も減っていたので、もしかしたら途中で帰ったのかもしれない。院内のスピーカーからは繊細で潤いのあるピアノの旋律が響き始め、どこからかあの時の天使が姿を現した。飄々と、しかし凛としていて、気づいた人から目を奪われていた。
天使は緩やかに話し始める「それでは皆さん、最後の質問です。あなたはこれから、転生しますか?」一呼吸置き「転生されると今のあなたは事実上この世から消えることになります。そして新たな人生が始まります。一度転生をしたら引き返すことはできません。最後の判断を、今一度あなたの意思でお選びください。」と続け、転生する方だけ3分後にこの部屋に残るようにと指示があった。 私は3分間じっとロウソクの火を見つめ、3分の1くらいの人はその場を後にしていたようだった。部屋の明かりが更に暗くなり「それでは・・・」と天使が囁くように空間に言霊を遺す。
すると私は永遠の旅に出た。
めくるめくフラクタル、時間も空間もない精神世界。惑星より大きな馬の蹄が落ちてきて、次の意識では古民家のぎしぎし鳴る廊下、水彩画のような淡い世界に移ることもあって、楽しさや悲しさや切なさが融和して感じているような、そんな感覚を得ることもあった。平衡感覚のない気持ち悪さを感じて、少し吐き気がする、と意識が現実に戻ってきているのを感じた。 アキは長い長い旅から目を覚ますように、光を取り戻していった。永遠のような時間は、この世界では3分ほどだったようだと時計を見て知った。
この世界のことを現実とは言い表したくない抵抗があった。周りには誰もいない。 アキは無意識的に身支度を整えていて、そのまま出口へ向かう。受付にいた仮面は「随分お変わりになりましたね。おめでとうございます。」と声をかけた。
アキはそそくさとバックからスマホを取り出し、1コール鳴らすと、すぐにテスラの高級車が道路枠に停まり、車内へ乗り込むと補助席に乗った秘書と、明日の商談の打ち合わせをしていた。 車が家に到着すると「おかえり」と両親と妹が迎えにきた。アキはいつものようにそれぞれにハグをして「今日もお疲れ様」と微笑む妹の頭を撫でながら、幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
宮殿のように広くて、それでいて余計な装飾のないシンプルなリビングの食卓には、丸鳥をローストしてローズマリーを添えたものや、色とりどりのサラダやスープやパンが何種類も並び、部屋でささっと着替えを済ませたアキは食卓の椅子に着き、家族全員で祈るように「いただきます」と発した。父がスペースコロニーで体験した新たな発見や、妹の旅の話をアキは自分ごとのように楽しく聞いていて「今日は紅茶のシフォンケーキを焼いたの」と母が持ってきたケーキの芳醇な香りに感動して「わー美味しそう!」とアキと妹は目を輝かせ、美味しく楽しい家族との食事の時間は過ぎていった。
眠りにつく前には今日1日朝から働きづくめだった自分を労わるように入浴し、ストレッチ、軽いヨガと瞑想をして、AIアシスタントが話す明日のスケジュールを耳に入れ、今への感謝と共に眠りにつくのだった。おやすみ、世界。
「アキ、今日は来ないのかな」雪絵は首を傾げて可奈に聞く。可奈は「今日は、というか、もう来ないと思うよ。」「え、なんで。転生すると記憶もなくなっちゃうんだっけ。」「いや、記憶は無くならないよ。でも、性質が変わり、環境が変わると、無意識的に記憶を編集していってしまうんだ。記憶とか、過去っていうのは、事実ではなくてあくまで自分にとって都合のいい物語だからね。」雪絵は難しい顔をしながら「そっか」とだけ残した。
現実世界の可奈はじゃがりことストロングゼロを貪りながら、今日のパーティーの最中に突如院内へ飛び込んできた、金髪で青い目をした彼女の表情が忘れられないでいた。これから先、一生の悲しみが決まってしまったかのような、これまで積み重ねてきた自分という歴史の全てが嘘だと知ってしまった時のような、ムンクの叫びのような、そういう表情をしながらも、とても綺麗な顔立ちをしていた。
青い目の彼女は私たちに「今すぐ止めなさい」と叫ぶように必死に伝えた。温度じゃないぬくもりが必要なことについて、大切な人たちと共に綻べる意味について、機械の身体にどれだけの寂しさが伴うかということについて。理想を突き詰めた先の痛烈な批判。「またあいつか」と仮面は言い、バックヤードから呼び出されたスタッフの手により彼女は強制退場させられた。
恐らく別の場所で転生手術を受けた人だろうと察した。 可奈はこれから先100年で起こりうる悲観的な出来事について、ここに来る道中に思考を巡らせていたことが再び逡巡してしまい、もうこれ以上進むことを身体が拒んでしまった。野生の熊から逃げる時みたいに対象から目をそらさず、一歩一歩ゆっくり後退りし、施設を抜け出した。
後退しながら、部屋に残るアキの姿を見ていた。天の世界とトランスするかのように悦に浸った表情で映像を見つめる彼女には、もう誰の声も届いていないようだった。
雪絵は笑顔で「そういえば今日バーチャル渋谷で野外フェスがあるみたいなの!」と興奮気味に話し始める。可奈はVR内の月を眺めながら、手元のストロングゼロを一気に飲み干し、1つの小さな決意をした。
6/F
アキは起床し朝のルーティンを済ませると、家族全員とハグをして、白いシャープな長い傘を持って自動運転車へ乗り込んだ。車は同期されたスケジュール通りに目的地へ向かっていく。はじめに無人のスマートドラッグ店に寄りプラミラセタム、ニセルゴリンなどを購入してすぐに服用する。
次にドリームハック社へ寄り、次のキャンペーンに使うアバターコスチュームの打ち合わせを済ませ、枕へ記憶のバックアップを録る。外に出ると雨が降っているので傘を差し、車へ戻ると遅めのランチに華やかなミュージカルと食事を楽しめるミュージカルダイナーへ向かい、4歳上の彼と合流し満喫する。
彼はとても優秀なアパレルデザイナーで、きっとこのまま結婚するのだと予感していた。食事が終わると車は家へ向かう。車内では社内のメンバーがARで映され人事の打ち合わせをする。徐に外を眺めると、ドローンから放出される水蒸気と映像で円状の虹が空に描かれ、道路は官庁による「精神安定には毎日のスマートドラッグの摂取が大切です。忘れないようにしましょう。」というテキストと翼の生えた猫のキャラクターのホログラムが連なっている。
トンネルに入ると上部に設置されたオレンジ色のライトが、規則正しくびゅんびゅん視界を過ぎていく。日々はそのライトの点滅と同じように、あるいはこの車と同じように乱れのない、全く自然で安定して幸福なものだとアキは感じていた。車は巨大な空洞を突破した先にある白い光を目指している。
衣食住に娯楽、医療、教育、日常のあらゆるものがデータ化された世界。可奈のようなセドリハッカーは、世の中で話題の商品や価値の高いもののデータをセキュリティの弱い後進国からハックして、それを先進国に高値で転売することを生業としていた。Android Clinicのチケットは予想外に手強い技術者に追跡され、危うく足がつきそうになったので、さっさと他人に渡していた。
可奈の転機となったのは満月の夜に見た1本の映画だった。それは随分古い映画で、あるストリーミングサービスのサーバーを掘っている最中にたまたま発見して、そのタイトルになぜか興味を持ち、ついでにいただいたものだった。物語は5人の美大生の青春モノで、何も報われないながらにひたむきであり続ける、そういう素晴らしさの存在を目の当たりにし、見事に影響を受けてしまったのだった。
日々の小銭稼ぎとストロングゼロで生きれてはいても、死んでいたって別に変わらないんじゃないかと思っていた。惰性で行なっていたVR WORLD上の自分のアバターを見ながら「もし生まれ変われることができたらこんな風に、そして美大に」なんて思っていると、Android Clinicのことを思い出し、気がつくと再びチケットを手に入れて3日後に予約を入れていた。
そして目覚める。時はバースデーパーティーの翌日。顔を洗い、歯を磨いて、コーヒーを淹れて、いつものようにヘッドマウントディスプレイをつけようとしたところで動きを止めた。「だめだ。ここから変わらなきゃ」と自分に囁き、ベッドの上で目を閉じて考えた。
これから何をすればいいかを考えた。でも、分からなかった。どこに行けばいいのか、どうすればいいのか何も分からなかった。それから可奈は美容の方法や、ダイエットの方法、美大への入り方など思いつく限り調べて、必要なことを全部紙に書き出した。慣れない作業にひどく疲弊しながらもまとめきった時には「よし」とつい口に出していた。
可奈は夜になると引き出しの奥の方からジャージを引きずり出し、ランニング用のアプリを入れた小さなMRグラスをつけて、夜の街へ走り出した。まずは順序立てて並べられた街灯のある方へ向かって走る。そこから出来るだけ人のいなさそうな小道を進む。目の前に長めの坂が現れるがそのまま勇気を持って進む。
坂を走っていると肺をカッターナイフで切りつけられるような苦しさや痛みが襲ってきて、足も既にボコボコの金属バットのようだ。それでもなんとか坂を登りきる。視界がぼんやりしてくるので、息絶え絶えに道路脇の花壇のレンガへ座り込む。
目の前には大きな柳を夜風がさらさらと揺らしていて、薄い雲の切れ間に上弦の月が少しだけ顔を出していた。柳は天国のさざ波のようなとても美しい音を鳴らしていた。お腹に溜めた空気を自分の血の香りと混ぜて、世界に吐く。乱れる呼吸を慎重に飼い慣らしていく。
いざと思い、少しずつ立ち上がり立ちくらみを堪えながら、ゆらゆらと走る姿勢を取り戻し、視線を前にした。道のない夜を再び走り始める。 どこに向かっているのかはまだ分からなかった。この道も、これからも。
それでも、走っていて気づいたことがある。少なくとも今、そして1秒前も、何かに辿り着いているということ。毎日もそうだ。朝起きれば朝日に辿り着く、ご飯を食べれば累計何万回目かの食事に辿り着く、誰かと話せばその時にしか出ない言葉に辿り着く。どこかに向かうつもりで走っていた道が急に消えてしまうことが人生にはあって、地図も、羅針盤もなく、どこかへ一歩を踏み出さなくてはいけないことがある。その時、足が荒野を踏み鳴らす感触は、もしかした今のような感触かもしれないと思い、走り続けた。
目の前のどこに視点を合わせているのかも分からないまま、頭だけが澄み渡るように冴えている。耳元から声が聞こえた。
「頑張れ」
MRグラスで繋がれている同時間に走っているランナーからだった。可奈は息を切らしながら「頑張れ」と同じように声を返した。誰もいない夜に、これまでにない繋がりを感じていた。
遠くで空が鳴っている。高速で移動するアンドロイドが雲を切り裂いていた。夜の匂いが立ち込めている。もう少ししたら倒れてしまいそうだという感覚と、このままどこまでも進んでいけそうだという感覚が等しく心に現れていて、身体は既に無に預けていた。
何もしなくたって心臓は動く、足は前に進む、目線はどこかを見つめる。自動的に何かにフォーカスして、それを時に運命だとか、試練だとか言うんだ。ただ在るだけでそこにロマンが見れるなら、辿り着くまでを愉しめた方がきっといい。
もしこのまま夜明けまで走ることができて、この街の丘の上の方から朝日が昇る時間に居合わせることができたら、きっととても綺麗なんだろうと思った。それは初めての夢の発症にも思えた。少しだけペースを下げて、同時に少しだけ口角を上げて、右足から前にやった。
雪絵は左足を前に出して、足の裏をワイヤレス充電パッドの上に置き、エネルギーを溜めていた。町中に設置されている放電塔より常に無線充電され続けてはいるが、急な運動を要する前にはこのようにして運動エネルギーを補給していた。
雪絵は反重力エネルギーを解放し、ホワイトアウトした街の空中を駆け抜けた。凍てつく空気を切り裂く速度で、あっという間に墓地が密集するビルの屋上についた。「佐藤、君も来てたんだね。」透明で細長い墓の前で花を手向けている女性に声をかける。「真冬」雪絵はムッとした顔で佐藤に言った「その名前はもう終わったの。今は雪絵。」佐藤は俯いたまま、ごめんと小さく呟く。
「だってもう、来年だからね」「42回目のオリンピック?」「違う違う。ニュートンの予言だよ。君が話してくれたんじゃない。」雪絵は墓を見つめ、近づいた。墓の頂点に掌をかざすと、頂点から基板のようなものが彫られた小さな長方形のガラスのプレートが出力される。「これをアンドロイドクリニックで蘇らせればいいんだね。」
佐藤は雪絵を見つめ、こう話した。「うん、お願い。新しい身体に馴染むまで、リハビリが必要だと思うから、付き合ってあげて。」雪絵は静かに頷き、白く埋もれた街に灯る点と点を、星座を結ぶように形をイメージしながら順番に見つめていた。そのあと佐藤の方を振り向いてこう言った。「さ、そろそろ行くよ。AIとはいえ、寝る時間ってものがあるんだ」「だよね、私も」それじゃ、おやすみ、と2人は夜に融けていった。
駅の構内は今夜もお祭り騒ぎ。外は雪が檸檬大の雹に変わり。絶え間なく屋根を叩く。負けじとジャンベやスチールドラム、その辺に落ちていたゴミ箱などのガラクタ、色々な楽器を皆で打ち鳴らし、その音色にビール瓶を重ねる乾杯の音、笑い声が重なり、明日に聞こえるくらいまでの賛歌が響き渡っていた。
三角柱型のディスプレイに火を映し、周囲を囲んで音楽にあわせて、歌えや踊る。青い目の女性と長髪の男性は手を繋いでスウィングを踊る。周囲の人たちと手を繋ぎ換えクルクルと回る。酔いつぶれて床を愛しそうに撫で回している人がいる、雪に埋もれながら星を見つめる猫もいる、宙に浮いて飛び回る人もいる。
金髪の女性は床と背中をくっつけて、天井に開いているいくつもの小さな黒い穴の1つに吸い込まれるように、瞬きもせずに見つめていた。白い煙が蛇のように空間を漂い、それをかき消すように誰かが叫んだ「生まれ変わったような気分だ!」宴はプラットホームに最初の地下鉄が来るまで続いた。その地下鉄がどこ行きなのかは、誰も知らなかった。
7/æ (転生日から49日後)
「すみません、誰かいませんか?」
私は恐る恐る診療所のドアを開け、暗い空間目掛けて声を出す。
「いらっしゃいませ、ようこそアンドロイドクリニックへ」暗闇の奥の方から妖艶な男性の声が聞こえた。
白い仮面を被った男の姿が徐々に浮かび上がってきて、いかにも怪しい姿にたじろぎつつ「聞きたいことがあるんですけど」と院内へ足を踏み入れた。
仮面は「それではこちらでお話をお伺いいたします」と白い円卓と椅子まで案内した。卓上にはキャンドルが円状に置かれていた。私は円卓に車椅子をつけると単刀直入に話し始めた。「あの、こちらの診療所で高柳アキという女性が施術を受けませんでしたか?」仮面は両手の指を組んで卓上に置き、にこやかに佇んだ表情でこういった「恐れ入りますが個人情報ですので、お答えできかねます」
私も指を組み卓上に置き、こう続けた。「私、高柳アキの妹です。高柳サチと言います。1ヶ月半ほど前から姉と連絡が取れなくなってしまって、ずっと探しているんです。そしたら、姉がここに診療の予約を入れていたことが彼女のAIアシスタントのログから分かって、姉は転生してしまったのでしょうか?」話しながら、悪い予感が何度も頭を遮った。転生した、という回答が予知夢のように浮かんでは、強引に別の考え事をしてかき消す。ここに来るまでの道中も、それまでも、姉と連絡が取れなくなった日からずっとそんな感じだった。
「元ご親族の方でしたか。いずれにせよお答えはできかねますが、当院で転生された方は既に過去と決別し、新たな人生を歩まれております。もし仮にそのような方が当院で転生されていたとしても、余計な詮索はお互いにとって推奨できるものではございません。」
私は苦虫を噛み潰すような表情で俯いていた。しばらくの無音を埋めるように店外の走行音が鳴り響く。「・・・姉がここで転生したからといって、この場所を責めるつもりもありません。転生という死の形もあるとあると思うし、私は姉の人生を尊重したいと思っています。」仮面は一向に表情を変えず微笑むので、まるで生身の人間と対面している気がしなかった。
「もう1つ、聞きたいことがあります。」私は唇を震わせていた。「先日、姉の姿を見ました。連絡が取れず心配になって、姉の最寄駅まで探しにいきました。しばらく探していると吹雪の中から姉の姿が見えました。やっと見つかった、まだ生きていたと私は本当に嬉しくて、名前を呼びながら近づいていきました。すると彼女は怪訝な表情でこちらを見つめ、一瞥してすぐに離れていきました。」
「人違いだったのでは?」
そう言う仮面に、下を俯いたまま首を横に振り、話を続けた。「いいえ。あれは完全に姉の姿でした。だからこそ、とてもショックでした。それでも私は車椅子を走らせて必死に彼女に追いついて呼び止めました。お姉ちゃん、無視しないでよって。」
私はその日のことを思い出しながら話していると、いつの間にか涙がこぼれ落ちていた。「それでも姉は無視するので、腕を掴み歩みを止めようとすると、あなたと同じようにこう言いました。”すみませんが、人違いではありませんか?私はあなたの姉ではありません”と。そんなはずはないのです。何故なら姿容姿がいっぺんの狂いもなく姉の姿であったし、あの街に住んでいる少数の人たちの中で、同じ容姿の人間が2人もいるはずはありませんでしたから。それでも姉は演技をしているようにも、ふざけているようにも見えませんでした。私が動揺していると彼女はこう続けました。」
”私は三ツ川と言いますが、お姉さんを探していらっしゃるのなら近くの交番までご一緒しましょうか。”それから私は心が空になったまま、無心で交番まで同行し、姉の横で姉の情報を警察に事細かに伝えました。探している人はすぐ横にいるのですが、ここまですれば冗談では済まないですから、姉も観念すると思ったんです。それでも姉は”お姉さん早く見つかると良いですね”と言って、足早にまた雪の中へ消えていったのです。」
私は涙で濡れた目元を拭って仮面の方を見つめた「姉は転生したんですよね。それなら何故、同じ容姿の人間がいるのか教えてくれませんか。・・・姉の記憶を消した、と言う事も考えられますので、答えていただけないのなら、今すぐここを警察に通報して捜査してもらいます。」
仮面の首がかすかに動いていた。目線はわからないが、恐らく周囲を見渡していたんだと思う。外はもうすっかり暗くなっていた。
「分かりました。それでは特別に、当院の仕組みをお話ししましょう。当院は理想の来世に転生できる診療所、お客様の設計された理想をアンドロイドの筐体へプログラムし、新たな人生を送っていただくことができます。」私は無言で頷いた後「基本的なことは調べてきましたので知っています」と言った。
仮面は微笑んだ。「ありがとうございます。この”理想”という概念がポイントなのです。お客様は、ご自身の理想をお持ちですか?」私は天井に目線を移し少し考えた後「はい、あります。ここで転生する気はありませんけど。」と答えた。「そうですかそれは残念。ところでその理想とは、ご自身の中だけにある独創的なものだと思いますか?」「そうですね、今頭の中で少し考えただけで外には出していないし、理想の人生なんて人の数と同じだけ無数にあるものだと思います。」
仮面は組んでいた指をほどき、両掌を上向きに返した「それが、そうではないのです。理想の来世は既にパターン化されています。その種、およそ28。理想が独創的なものであるはずがありません、何故ならそれはロールモデルがあっての憧れですから。」私はよく分からなくなって眉間シワを寄せて聞いた「つまり、何が言いたんですか。」
仮面は再び指を組み卓上に置いた「当院のサービスは、開発ではなく運用なのです。誰かの理想の人生とは、既にこの世にいる誰かが過ごしている人生そのもの。お金持ちになりたいとか、美しい容姿でありたいなどに限ったことではありません。以前総資産100億円を超える資産家が理想として設計された人生は、あるホームレスの人生をそのまま転用させていただきました。価値とは、相対的なものなのです。人は、今いる立場から最も離れた場所にある、朧げな光に憧れ手を伸ばす生き物。ですので当院では、お客様方の記憶や遺伝子情報を収集し、保存し、需要と供給をマッチングさせて、人生を運用、リユースさせていただいております。」
仮面は口角を道化師のような角度まで上げていた。「・・・それじゃ、私の姉の情報も全て別の誰かに回されたってことですか?」仮面は声を荒げた「いかにも!」私は動揺しながら口早に「そんな、誰の許可を得てそんなことを・・・」と言いかけたところで仮面がかぶせるように語り始めた「世界はもはや!質量だけでなく情報も保存され、リユースされ運用されています。今あなたが何を思うか、明日のあなたが何を楽しむか、1年後のあなたが何を悲しむか、その全ての情報が、他者のニーズと結合するのです。全ての人生は我が社の大事な商品です! 喜びも悲しみも、切なさも虚無も、怒りも快楽も、全てが代え難い! 全てが尊い! ああ!人生はなんて美しいのだ!! 」
「何を、言っているんですか・・・?」唖然としている私の首元に、電気のような強い衝撃が走った。
Fin.
https://www.social-fes.com/aendroid-clinic
Ændroid Clinicへご参加いただいた皆様へ。
オンライン問診時にいただいた、皆様の貴重な人生のデータは当院で責任を持って運用させていただきます。この度はご協力いただき、ありがとうございました。 Ændroid Clinic
”これは今はまだフィクションの物語です”
「こんな未来あったらどう?」という問いをフェスティバルを使ってつくってます。サポートいただけるとまた1つ未知の体験を、未踏の体感を、つくれる時間が生まれます。あとシンプルに嬉しいです。