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WEB3とフェスティバルのこれから

OzoneDAOのリリースから早2ヶ月ほど。メンバーは現状74名まで増え、今月末には皆で三重までトークンガバナンスを決める合宿に行きます。匿名でありつつもめちゃくちゃよく会うし、既存のDAOっぽくないDAOです。しかし僕らの考えるDAOは、オンラインのプロジェクト遂行で終わるものではなく、より自由で納得度の高い暮らしや社会を共創する生態系のことを指しているので、身体を突き合わせ、互いの息遣いなどを感じ合うことはウェルビーイング的に大事。

さて今日はWEB3とフェスの話です。
OzoneDAOはWEB3プラットフォームを介して、最小単位の社会を模したフェス作りを行うことで、これから立ち上がる自治区の身体的なプロトタイピングを行うわけですが、WEB3はフェス作りにおけるいくつかの課題を解決すると思うので、共有です。

そもそもフェスづくりは、元々WEB3的。

そもそもの話から。
フェスはカウンタームーブメントから自然発生的に現象したもので、ウッドストックでバリケードが破壊され、想定以上の人数が押し寄せ、混沌とした無法地帯になるかと思いきや、そこには助け合いの光景が多く見られ”自分が楽しいためには環境が、あなたが楽しいことが大事”というバイブスの基本ロジックが類い稀な規模感で合意形成され、その環境要因だった「素晴らしい音楽」や「自然あふれる環境」や「美味しい飲食」などを踏襲しながら編集し”あの感じ”の再生としてグラストンベリーが作られ、グラストンベリーに影響を受けた日高さんがフジロックを作ったという歴史があります。

グラストンベリーの時代、彼らはグリーンフューチャーというコンセプトのもと反体制を訴えるだけでなく、こうなったもっといいという時空間を自分たちで一時的にDIYしようと作ってきました。規模が大きくなるにつれ、あるいは部分的にはトップダウン形式を採用する場面もありますが、基本的にフェスティバルとは生き物であり、縦横無尽に変化していく予測不可能性があるので、各所にフレキシビリティが要求され、自律分散的な運営体制が求められ、成立してきました。

餅は餅屋へという思想が広く伝播していて、大きな企画ではクリエイティブディレクターやステージ演出が全体をまとめますが、中小規模のフェスやレイヴでは「いい感じに任せた」でいい感じになってしまうことも多いです。
それは信頼関係にも関わってきますが、VISIONを恒星として象り、然るべき引力を発生させれば、滞りなく各所の星は巡るのです。


よりフェアで、能動的な連携が可能になる、新たな運営方法

自律分散的な運用方法がなされてきた中でも、それが故に立ち上がってきたフェスづくりの1つの課題として、責任や作業分担がオーガナイザーや幹部陣に偏りがちという点があります。

コミットやタスク量の格差が生じると、そこからチームワークが瓦解してしまう場面も見受けられます。また、見積もり→合意→作業→納品→請求、という資本主義の基本的なワークフロー下だと作業内容やコミット量が事前に規定されてしまうので、生物であるフェスティバルに対してフレキシビリティが発揮しづらいのです。

この課題をDAOという組織体制で、スマートコントラクトという技術を使いインセンティブ設計を行い、トークンエコノミー下で運用することで解決していくことができます。

例えばフェスの会議中、ネーミングに対するアイディアだしで活発に意見を出してくれた人への報酬。従来であれば事前に規定して金銭以外のやり取りは全体の収支計画を調整する上で捻出しづらいところがありました。しかしこういった些細なコミットにもインセンティブが発生する設計を組んでおき、トークンという形ですぐさま発行できれば制作予算に差し障ることはありません。

またトークンの価値を維持するために、関係者のフェスへのコミットはより能動的なものへなっていきます。また、スマコンでもっと抽象度の高い、例えば誰かに感謝されたらトークンが発行される、などの記述をしておけば、感謝経済でコミュニティが循環するようになり、関係性はより強固なものになっていくでしょう。そしてそれは確実にフェスティバルのクオリティにも結実します。

ステーキングという新たな収益源の確保

そしてもう1つ重大な課題。
それは収益の確保です。実質、フェスティバル制作で黒字を出し、ましてやそれ一本で生計を立てているオーガナイザーは一握りです。数えるほどしかいないかもしれません。

それほどフェスはお金がかかりますし、こだわろうと思えばいくらでもこだわれるので少しでも黒字になりそうであればアーティストフィーや装飾に次々投資してしまうという、オーガナイザーの悪癖(いいところ)もあったりします。

これまでのフェスづくりは主にチケット売上、飲食売上、企業協賛、出店費などでまかなっていましたが、WEB3のフェスづくりでは「ステーキング」が追加されます。
これはクラウドファンディングのように外部から支援を募りますが、支援者は寄付をするのではなく預入をします。預入なのでいつでも引き出すことができます。ステーカーは預け入れた金額のうち既定の割合で金利が発生し、トークンとして収穫することで、利益を得ることができます。

つまり株式会社のように、制作するフェスの将来的なポテンシャルを外部に示すことができれば、ステーカーは将来的な価値向上を期待して投資をします。そしてトークンの価値が向上するほどステーカーの利益は増すので、フェスへの参加はもちろん、その他の調達においてもコミットを期待することができます。実際にフェスに参加できない地域にいる方や海外に向けても収益口を広げることができるのもポイントです。

転売を促進することで利益が発生する新たなチケッティング

これはジャストアイディアでまだ実装していないのですが、NFTをチケットとして発行することで転売時にマージンを得ることができます。NFTチケットの少数発行→出演アーティストなどを少しずつ発表していくなどして少しずつ価値向上していく→チケットの流動性が増し座席数=売上に捉われない新たなチケッティングが可能になっていくかもしれません。


などなど、元々Web3的であったカルチャーがあるので、そこに技術を導入していくことで、既存の株式会社がDAO化していくよりも速い速度でDAO化していくことができると思っています。そしてそれは関係性の構築を前提に作られていくので、投機的な目的で規模が増えているDAOより本質的なものになっていくはずです。

フェスティバル経済圏の中で各所のガバナンストークンが交易可能になり、例えばフジロックトークンがサマソニの出店で使えたり、Ozoneトークンが逃げBarで使えたり、フェスとフェス、ハレとケの隔たりも溶けてより有機的に繋がっていき、互いで支え合うことで持続可能なカルチャーを育てていくことになっていければいいなと思っています。

日本は既に世界的に見てもフェス大国で、毎年数えきれない数のフェスティバルが作られています。一方でそれがパイの取り合いや、持続していくために商業路線に走ったり、主催が身を削るという方向になっていくととても残念なことなので、フェスティバルカルチャーの原初に立ち帰り「こうなったら良さそう」という未来を共に表現して生きていく共生体として、WEB3がコネクティングドッツしてくれないかと期待しています。



アメミヤユウ/体験作家

「こんな未来あったらどう?」という問いをフェスティバルを使ってつくってます。サポートいただけるとまた1つ未知の体験を、未踏の体感を、つくれる時間が生まれます。あとシンプルに嬉しいです。