見出し画像

個人で資産運用をする人しない人:資産運用の意欲=住宅購入の有無×金融リテラシー×山っ気

「儲からない投資の知識」ということで、しばらくnoteを書いてみたいと思います。これまでに、金融機関の資産運用部門や、運用会社(アセットマネジメント会社)で働いてきました。

私は現在30代中盤ですが、周囲の人(友人、親戚、同僚など)と資産運用について話すと、資産運用、特に株や投信などの有価証券による運用に関する意欲がてんでバラバラで驚きます。

共通点をくくりだして見ると、資産運用に関する意欲はおおむね以下の3ポイントが大きく関係しているように感じました。

資産運用の意欲=住宅購入の有無×金融リテラシー×山っ気

以下では、これらのポイントについて書きたいと思います。当たり前の話がありましたらご容赦ください。

住宅購入の有無

例えば、転勤族なので家を買うタイミングが無かったという人は資産運用に関心がある人が多いと感じています。昨年久しぶりに再会した高校時代の友人は海外を含めて転勤のある会社で働いています。妻子含めて社宅生活で満足しているため、住宅購入の予定は当面ないと言っていました。彼は個別株を数銘柄保有し、積立でインデックスファンドを買っていると話していました。

反対に、家を買った人は、基本的に証券による資産運用より住宅ローンの繰り上げ返済に熱心です。繰り上げ返済による住宅ローン金利の削減は確定リターンなので、これは合理的な行動です。

この点については、資産運用やマネーロンダリングに詳しい作家の橘玲さんが「住宅を購入したら個人の資産運用は終わり」ということを書かれていました。自分の家族が居住するための物件であっても、住宅購入は「資金を借り入れて行う大規模な不動産投資」という側面があります。住宅購入をすると、スーパーリッチマンでも無い限り個人のリスク許容度はパツパツです。
逆に言うと、住宅購入をしない理由がある人には、余裕資金を運用するニーズがあり、現在の低金利環境では証券による資産運用に目を向けざるを得ません。

金融リテラシー

リテラシーとは「読み書き」のことです。「金融リテラシー=金融に関する基本知識」くらいに考えて良いです。

金融関係の仕事をしている人はそれなりに資産運用の意欲が高いです。日証協などの規則や会社の内規で取引が制限されている場合もありますが、可能な範囲で個別株、公募投信、ETFを買っている人が多いです。(転勤のある会社が多いことも一因だと思います。)

逆に、金融に特に興味がなく、家族や友人に金融商品に詳しい人がいなかった場合は、元本割れのリスクがある商品は敬遠して、定期預金を中心に運用しています。「知らないものに手を出さない」「納得できないリスクは負わない」というのは正しい姿勢だと思います。ただ、こういった場合は、貨幣錯覚(※)などのライフプランを考える上で知っておいたほうが良い知識も抜けており、正確な知識があればまた違った決断をする人もいると思います。

ともあれ、資産運用に対する意欲には、金融リテラシーが大きく関係していると考えます。

※貨幣錯覚というのは、物価が変動するにも関わらず、資産の価値を名目ベースで考えてしまうことです。ノーベル経済学賞を受賞したアカロフ教授とシラー教授の共著『アニマルスピリット』でも取り上げられていました。

山っ気

辞書を引くと、山っ気とは「投機や冒険を好む気質。万一の幸運をねらって、思いきって物事をしようとする心。」(小学館 精選版日本国語辞典)とあります。当たり前の話ですが、山っ気のある人ほど、お金を増やす機会=資産運用に熱心です。

ところで、「利得」と「損失」に関する人間の感じ方については様々な研究がなされています。例えば、行動経済学の有名な実験によると「同じ金額の利得と損失(1万円の得or1万円の損)なら、利得による快感より損失による不快感の方が大きい。平均で1.5倍~2.5倍ほど損失の方を大きく評価する。(損失回避性)」と言われています。この例は人間が全体的に損失回避性を持っているというものですが、「利得」と「損失」の感じ方は、個人差もそれなりに大きそうです。そう考えると「山っ気」の有り無しというのは、まさに「利得」と「損失」の与える心理的な重みの違いということかもしれません。

まとめると

さて、これまでの話に照らすと「住宅購入の予定がなく」「金融リテラシーがあり」「山っ気がある人」ほど、資産運用に熱心ということになります。これらは相互に関連しています。例えば、住宅購入の予定がなくて余裕資金があると、資産運用の勉強をしてみようという動機が出来ます。また、資産運用の勉強をしてみて、株価指数が過去にどのように動いたのか(例えば、分散されたポートフォリオであれば金融危機でもゼロにはならないということ)が分かると、資産の一部を株に回してみようかという「山っ気」が出てくるかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
こんな感じで、儲けには直結しないけど個人が資産運用を考える上で役に立てそうな情報を発信して行くつもりです。

いいなと思ったら応援しよう!