足るを知るということ
日経新聞でこんな記事を見つけました。
佰食屋の存在は以前から知っていました。別の記事に載っていたのを読んだことがあったからです。その時、働き方について考えていた時期だったため、大変感銘を受けたのを覚えています。
改めて読んで、この事例は、働き方がテーマというより、資本主義社会の限界がテーマなのではないかと思いました。
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このお店は、100食限定の店で、100食販売したら店を閉めることを徹底しています。そのため、社員全員が午後5時台に帰ることができるそうです。さらに経営者の中村朱美さんは午後6時に帰宅し、家族でゆっくりとした夜の時間を過ごすとのこと。
家族の時間を大切にすることを前提として、自分たちが幸せに暮らすにはいくらしたの収入が必要なのかゴールを設定し、そこから逆算をして100食限定という営業スタイルを導き出したと書かれています。
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佰食屋の事例で感じたことは、大は小を兼ねることばかりではないということです。資本主義社会では競争し、成長することを求められてきました。しかし、モノが溢れる現代の日本において、企業を成長させることだけが一番良いことなのでしょうか。人口が減少する日本において、この疑問は多くの人が抱いていることだと思います。
私は、成長することより、倒産せず長く続けられる企業にすることの方が大事だと思います。
今では資本主義の問題点ついて多くの人が語っていますが、それでも働いている当事者として、これまでの経済の在り方を見直して実際に行動する人は決して多くありません。
そんな中、佰食屋の例のように、思い切って100食に限定することで本質を説いてくれるような事例が生まれるのはとても重要なことです。経営者の中村さんは、100食に限定したことには次のようなメリットがあったと語っています。
①食品ロスがゼロである ②食品ロスゼロなので地球環境にやさしい ③残業ゼロの職場で働きたいという求職者により、人手不足とは無縁である
必要なモノを必要な分だけで生活すること、つまりこれまでオーバーしていた多くの物を適正な量に調整することで、環境保全や人材確保、ワークライフバランスを実現しています。
現在多くの企業でオーバーしていると思われるものが、在庫、残業、利益などです。
過剰在庫
過剰在庫は飲食店の例でいうと、食品ロスにつながります。在庫保有や廃棄のコストが増大するだけでなく、廃棄することにより環境汚染に影響を与えます。
必要な分だけ生産することによりコストの削減と環境保全が図れます。
残業
多くの人に影響を与えるのが残業です。毎回根拠なく上げなければならない目標設定に四苦八苦し、無理に理由付けをして残業で補うという状況や、給料アップのために残業代を頼りにしていることもあります。
削減と言ってもそんなに簡単なものではないということは重々承知です。しかし、無理だというだけではなく、行動してみなければならないと思います。
残業については、次の改善策があると思います。
①残業を減らす取り組みを行う
残業の根本の原因である真因を追求し、改善していくことです。必ずしも真因が人手不足ではないと思います。人が足りないという周りの愚痴に惑わされず、本当の問題を見つけなければなりません。
②目的や目標設定から見直す
また、目的も残業という方法以外で果たせるものかもしれませんし、はたまた目的自体本当に果たすべきものなのか今一度見つめなおす必要があると思います。すると、目的が果たすべきものでなくなると、目標設定も見直すことになります。その目的が、会社が設定したものであれば、全社的な見直しが必要ですし、給料アップという個人的目的ならば、給料を上げる必要性を今一度見直すことが重要だと思います。
③職場を変える
転職や起業などの選択肢があります。給料アップを目的とした残業をしていた場合、残業ではなく、副業という選択肢もあります。残業で同じ仕事を時間を延ばすことにより均すより副業で新たな付加価値を生み出すことの方が生産性が高いと思います。
利益
利益については、従業員ではなく、経営者の問題ですが、利益余剰金を活用せず、社内の貯蓄としてキープしている企業も少なくありません。実際、日本企業は内部留保が多いと言われています。コロナ禍でキャッシュを持たない企業の存続が危ぶまれる中、内部留保を持っていることは一見安心なようではありますが、多くの企業の内部留保は現預金ではなく、投資や不動産に代わり、コロナ禍を乗り切るキャッシュを持っているわけではないようです。
利益は従業員への賃金に代えたり株主に配当されたりすることにより循環していくべきものだと思います。このように、企業は利益を溜め込みすぎて滞っている可能性があります。成長することが悪いわけではなく、企業は成長することに比例して経済的影響力や責任が大きくなることを自覚しなければならないと思っています。
つまり、企業に対する適正量というのは、企業規模を適正にすること、または利益余剰を適正にすること、両方の意味があります。
成長する企業は、経済の循環に大きく寄与する必要があります。その企業の在り方も大切だとは思います。しかしこれからの社会においては、佰食屋のように、ゴールを設定し、逆算経営によりそのゴールをキープしつづける企業の在り方も重要だと考えます。
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これからの社会では、足るを知ることがとても大事だと感じています。
社会も人生も適正化が重要です。自分にとって過剰なものはないか、今一度立ち返り、ゴール設定をしてみてはいかがでしょうか。そして逆算をしてみると、まったく違う生活スタイルになるかもしれません。すると、多くの余裕が生まれ、逆に豊かな生活が待っているかもしれません。