spica.3 小説を書くときのこと。
以前、同じように小説を書くことが趣味の友人と話をしていた時に、「書き方」の違いについて驚かされたことがある。まさか一から十まで同じだろうとは思っていなかったし、自分の書き方もよく考えてみれば独特なものだったけれど、それに気づいたのは人と比べてからだった。
私は、正直に言うと、移動中に構想を得ることが多い。
大学(片道一時間半)は遠いし、就活中だし、電車に乗る時間は乗らない人が想像もつかない量を費やしていると思う。
私は人混みが苦手だから、外界と遮断するために音楽プレーヤーは必需品で、その時々の気分で曲を再生しながら本を読んだりゲームをしたり、窓の外や車内をぼーっとながめていることが多い。
景色をながめていると、その中に登場人物が出てきて、動きまわったりする。断片的な構想と、登場人物たちのなんとなくのビジュアルとが固まって来る。その時に構想を得た曲が、その小説の主題歌になる。その曲を主軸にして、その小説に合いそうな曲を探し、その小説の「プレイリスト」を作る。
気に入った曲があると、とりあえずその曲だけをエンドレスリピートで聞きまくりながら、構想とか難しいことは考えずに、簡単に小説にしてしまうこともある。一番楽で、行き当たりばったりで、だからこそ楽しい。
実は先刻あげた「七色の少年」も、バスピエの「七色の少年」を聞きながら何となく仕上げた後者だし、以前投稿した「愛のことば」も、スピッツの「愛のことば」だ。もし手元に音源があるなら、聞きながら読んでいただけたら、と、題名そのままで投稿した。(関係ないけれど、バスピエを最近聞き始めたら、YUKI好きな私としては大好物の声で驚いたので、YUKI系の声が好きでまだの方は、是非。)
「プレイリストをつくる」という話は友人にしてみれば意外だったようで、(確かに言われてみれば、不思議だ)その日はお互いの小説の作り方についてずいぶん話に花が咲いたことを思い出す。
私は、良くも悪くも「単調」で、「誰にでも書けそう」な文体なので、一癖も二癖もある文章や奇抜なアイディアがある人は本当にうらやましいのだけれど、ある人が、「ものすごく特徴があるわけではないけれど、今までずっと書いてきた人の、丁寧な、よく推敲された、すごく素直な文章。」と言ってくれて、その言葉を何度も何度も繰り返し自分の中に刻み込んで支えにしているから、「読みやすい」という評価が一番嬉しいし、それが自分の武器なんだろうなと思っている。(まだ多分、モンハンで言うとアオアシラをぎりぎり倒したくらいだけれど―――。)
noteには、小説を書いている人がたくさんいて、様々なアイディアや文体でそれらが日々投稿されていて、だからこそ、その人たちの制作過程一つ一つが気になる。文章の向こうに何か透けないかな、見えないかなと、画面とにらめっこしながら、今日も誰かの言葉を眺めている。