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「さびしさは鳴る。」

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自作小説を集めたものです。表題は、某芥川賞作品の有名な冒頭から、拝借致しました。
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2015年2月の記事一覧

「四百四病の外とは言うが、」

「四百四病の外とは言うが、」

「どうしよう、めっちゃ心臓どきどきしてきた。」

色素の薄い瞳に西日が当たって、きらきらと反射した。セーラー服はこの子のために作られたんじゃないの、と、思うほど良く似合う。

「大丈夫でしょ。渡すもん渡せばそれでいいんだから。」

「もー!わかってるよ、わかってるけどー…!」

伸びたセーターで半分隠れた白い手の先には、ラッピングされたチョコレートが握られている。そんなにがちがちで掴んでいたら溶

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