2020年6月映画感想文 卒業(1967)/パディントン/ドクター・ドリトル/ホワイト・ファング
今までは1~2ヶ月ごとに観た映画の感想文をTwitterにスクショで投稿していましたが、せっかくnoteを作ったからこっちに書いていきます。
過去の分もそのうちここに再掲します。そのうち。
卒業(1967)
原題 :The Graduate
製作年:1967年
製作国:アメリカ
(映画.comより)
鑑賞日:2020年6月12日
鑑賞方法:テレビ録画
ダスティン・ホフマンの出世作にしてアメリカン・ニューシネマの代表作。
『結婚式の場から花嫁を強奪する展開のはしり(?)』ということくらいしか知らず、てっきり爽やか青春純愛系かとばかり思ってました。見事に裏切られました。不倫て。
最初はまだ、半ば無理やりDT卒業させられてベンジャミン可哀想だと思ったけど。エレーン狂いと化して本能のままにひた走っている後半は、もう、アチャーって。一昔前にネット上でよく見た懐かしの顔文字 (ノ∀`) が浮かんだよ。タガの外れた優等生はヤバいということがよくわかる。
なまじこれまで優等生だったばっかりに、思春期の青さ、恋情をコントロールできない未熟さ、痛々しさを、大卒の年齢で発露させていくのがなんかもう、いたたまれない。外聞も何も気にせずに突っ走れるのは一周回って爽快ですらある。
そんなだからベンジャミンにも、ロビンソン夫人にも、真ヒロインのエレーンにも、誰にも感情移入はできなかった。というか、妻と不倫された上に娘の結婚式を台無しにされたロビンソン氏が一番の被害者だと思う。奥さんをほっといてた冷たいところはあったとはいえ、そんな仕打ちを食らうほどの悪行でもないでしょうよ。だから余計にベンジャミンお前……って気持ちになる。
ただ、カメラの使い方やシーンの映し方がめちゃくちゃ上手いからか、画面から目は離せなかった。情事の表現でのサブリミナルと、たびたび映るプールが特に印象的。
将来の見えない虚ろな日々に割り込んでくる人妻との情事。それでもなお満たされず、モラトリアムの中でうつろう青年の心理が、バシッとわかりやすく伝わってきた。ああいう映像表現大好き。プールに沈んだり浮かんだりするのがそのまま心理描写になるんだから映画は面白いよね。そういう意味ではエレーン登場前の方が観てて楽しかったかもしれない。
そして最後の二人の表情は本当によかった。聞きしに勝るラストシーン。
実際には撮影が終わったと思って気が抜けてただけらしいけど、愛だけを信じて他をすべて投げ捨てた華々しい駆け落ちの向かう先にハッピーエンドがあるはずないと、彼らの行く末を滲ませるにはこれ以上ないくらい、覿面なカットだったと思う。
これを観てから数日間はサイモン&ガーファンクルのThe Sound of Silenceが頭の中でエンリピしていました。
パディントン
原題 :Paddington
製作年:2015年
製作国:イギリス
(映画.comより)
鑑賞日:2020年6月14日
鑑賞方法:テレビ録画
原作絵本は読んだことなかったけど存在はなんとなく知っていた。一言で言うなら、子供向けは子供騙しに非ず、という感想。
パディントンの可愛さ、健気さ、丁寧で素敵な紳士ぶり、都会のシビアさ、同情の余地と狂気を供えた悪役、家族の絆、全て丸く収まるハッピーエンド、を丁寧にミックスした誠実な映画だと思った。
それこそ、見た目はふわふわでかわいいけど、実際には長い歴史に裏打ちされた確かな職人技によって作られている高級テディベアみたいな。パディントンはテディベアじゃないが。
まずオープニングがシャレオツで好み。森でのマーマレードの作り方最高じゃん!!なんて呑気に観ていたらいきなりのヘビーな展開にびっくりした。実は生きてましたというオチかと思ったのに全然そんなことはなかった。油断ならないな。
パディントンが期待を胸にやってきた大都会ロンドンのよそよそしい冷たさと、そこに住まう人々の優しさのバランスが良かった。ブラウン一家もそうだけど、骨董品店のご主人の優しい言葉にほっこりした。怒られても仕方ないパディントンのやらかしぶりは、一家には申し訳ないがつい笑ってしまう。本人に悪気がまるでないから余計に。エスカレーターのところは可愛すぎ&笑いすぎて死ぬかと。
パディントンを一番疎んでいたパパが、クライマックスでパディントンの為に文字通り身体を張る漢へと変わったのはベタだけどグッときました。
・ロンドンが舞台
・両親と姉弟の四人家族
・そこそこに裕福な家庭
・家庭への闖入者を疎む父親
・その闖入者のおかげで家族の絆が深まるエンド
と、ちょくちょくメリーポピンズと似てる部分があったのも楽しかった。二十歳までに観た映画で一番好きなのがメリーポピンズなので。
あと松坂桃李くんの朴訥とした吹替がパディントンにぴったりで素晴らしかったですね。プロの声優の演技ではないからこそ、異質でありながら誠実さと善良さがふんだんに滲み出てる、まさに『紳士的な熊』っぽさがよく出ていた。
それにしてもこれ、ロンドンに行きたくなる映画ですよね? パディントンがロンドンに着いたあたりから、これひょっとしてロンドンのプロモーション映画じゃねえかって気はしてましたけどね? 全編にわたってロンドンの街の映し方がめちゃくちゃきれいなんだよね!!
今世界がコロナ禍でなかったら軽率にロンドン行ってたのに!!!
ドクター・ドリトル
原題 :Dolittle
製作年:2020年
製作国:アメリカ
(映画.comより)
鑑賞日:2020年6月20日
鑑賞方法:映画館
数ヶ月ぶりの映画館鑑賞。最後に映画館に行ったのはパラサイト半地下の家族だったな。実に四ヶ月ぶり。
原作のドリトル先生シリーズはまったく読んだことない。小学校の図書室や、地元の図書館の児童書コーナーでも見かけていたはずだけど、なぜか食指が伸びなかった。
映画の方は、ぶっちゃけると、とんでもなく豪華な日本語吹替声優に釣られて観に行ったんですけど。お話が普通に面白くて、途中から吹替声優がどうこうってあんまり気にならなくなってた。
個性豊かな動物たちはかわいいし、偏屈だけど頭が良くて亡き妻に一途なドリトル先生がちょっとずつ丸くなっていくドラマ部分はそれなりに見応えがあったし、日常生活、手術、航海の冒険、どこででも大活躍する動物たちが、とにかく、ほんとに、かわいい。
動物が怪我したり痛い目に遭うシーンも、ケヴィン(リス)が誤射で撃たれるのと、ポリー(オウム)がバリー(トラ)に引っ掻かれたところくらいしかなかったから、ほんとに優しい映画だよ。いがみ合ってたヨシ(シロクマ)とプリンプトン(ダチョウ)に友情が芽生えるシーンが一番好き。
しかしドラゴンの腸マッサージは笑えばいいのかなんなのかわからなかった。映画でも小説でも数多のファンタジー作品でドラゴンと出会ったけど、腸マッサージを受けて放屁するドラゴンには初めてお目にかかったわ。多分この先も二度とないと思うわ。
それにしても原語版のチーチー(ゴリラ)のCVがラミ・マレックなのはまったく知らなかった。つーか原語版でも声優がめちゃくちゃ豪華じゃん。エマ・トンプソン、トムホ、マリオン・コティヤール、セレーナ・ゴメス、レイフ・ファインズって、普通に字幕でも観たくなるだろうがよ!!
ホワイト・ファング
原題 :White Fang
製作年:1991年
製作国:アメリカ
(映画.comより)
鑑賞日:2020年6月20日
鑑賞方法:レンタルDVD
先のドクター・ドリトルが最新技術を駆使したハートフルファンタジーなら、こっちはCGを一切使わず、開拓時代のアラスカを舞台に生き物たちの過酷な生存競争と、人間と狼犬のストイックな友情を描いた作品。雄大な大自然の猛威の前に、動物も人間も容赦なく死んでいくシビアな世界。
私はフィクションにおいては人間よりも動物が傷つく方が耐えられないタイプです。動物虐待のニュースを見聞きするたびにテレビやスマホの前でキレています。
だからホワイトファングが酷い目に遭うたびに心がキリキリしてつらかった。母を殺され、仔犬一匹で彷徨っていたら罠にかかり、インディアンの労働犬にされ(ここは別に酷くはないが)、闘犬賭博の見世物にされて、ブルドッグとの戦いで死にかけ……。
とりあえずホワイトファングを虐待した闘犬賭博野郎は地獄に落ちろ。ディズニー映画の悪役でこんなに頭に来たのはビアンカの大冒険のメドゥーサたち以来だわ。あいつらほんとにムカついた。
とはいっても、こっちもだいぶファンタジーは入ってる。ヒグマもっと早く走れるだろとか、ヒグマがオオカミに威嚇されただけですごすご退散するわけないだろとか。せっかくジャックとホワイトファングの間に、明確な心の結びつきが芽生える大事なシーンなのにツッコミどころばかりだった。
それでも後半、ジャックが傷ついたホワイトファングを介抱し、少しずつ友情と信頼関係を築いていくのは、ハードな半生を送ってきたホワイトファングがようやく報われたように思えて、素直に良かったなぁと思えた。
というかジャックに心を開いてからのホワイトファングがめちゃくちゃかわいい。作中でも言われていたけどマジでデカい犬。金塊の鑑定のために一緒に街に行く時、身体にハーネスつけられてるホワイトファングの可愛さがヤバかった。ベタベタなハッピーエンドなラストシーンは不覚にも目頭が疼きました。
狼犬は人間と寄り添って生きることを望み、人間は金塊で得られるはずの栄光を捨て、大自然の中で狼犬と生きることを選んだ。尊い。こんなオタク構文しか浮かばない己の語彙力の乏しさが憎い。
驚いたのはホワイトファングの表情の見せ方の巧さ。怒りや警戒心が剥き出しの獰猛な姿や、ジャックの前で嬉しそうだったりリラックスしてたりする姿。CGじゃなくて調教された動物を使った、三十年近く前の作品なのに、2020年制作のドクター・ドリトルと比べてもまったく見劣りしない。マジでどうやって撮ったんだ。
◆◆◆
別に意図したわけではないんだけど、今月は動物映画ばっかり観ていました。他にも子供の頃に繰り返しビデオで見ていたディズニー映画を、ディズニープラスでアホみたいに観まくっていた一ヶ月でした。初見だったのはメロディ・タイム、メイク・マイン・ミュージック、イカボード先生とトード氏、かな。どれも面白かった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?