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なんで俺だけ?(『ミッドナイトスワン』)

大学生の時、同じ学科の女の子・Nちゃんに、「インスタやらないの?」って聞いた時に「自分がそんなに楽しくないときに人の楽しそうなの見るのが羨ましくなるからやらない」と言っていたのが、別に大した会話でもなかったけど、なんだか覚えている。(「インスタやらないの?」って質問、今なら恥ずかしくて言えねえ・・・)

インスタ含めSNSに出てくる写真とかストーリーってのは基本ハイライトだし、みんなそれぞれ、映らない平凡で地味な瞬間もあるけどなと思ってたけど、「ほえ〜なるほどね」と頷いて答えた。

「みんな楽しそう、自分ばかり」

っていう嫉妬とか、自分の現状への不満って誰にでもあるのかな。最近の自分で言えば、「新潟にいる同級生、みんなでサウナ行ってて楽しそうだな」とか「キャンプ楽しそうだな。俺は一人家で飯食ってるなあ」なんていう、ちっちゃなものだけど。

草彅剛がトランスジェンダーのひとを演じた映画『ミッドナイトスワン』は、俺とは比べようもないほどの「自分ばかり」という葛藤と戦うシーンに満ちた映画だった。

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身体は男性、でも心は女性。トランスジェンダーとして体と心に葛藤を抱える草彅剛演じる凪沙が、実の母から虐待を受けて避難した少女・一果と暮らすところから物語が始まる。嫌々ながら家にとめる凪沙と、同じく良い気持ちを持たないまま家に泊まる一果。家を綺麗にするルールは守りたくない、何も話したくない、そんな一果に呆れる凪沙。相容れないふたりだが、ある日、バレエの体験レッスンを受けた後に、これからもバレエを続けたいと願い、部屋を綺麗にすることから物語の角度が深くなっていく。少し心の距離が縮まり、バレエを続けさせてやりたいと月謝の支払いをなんとかやりくりさせようと奮闘する凪沙の心に芽生えていく、「女性として生き、母親になりたい」。

「なんで自分ばかりこんな身体なんだろう」と、心の孤独に苦しむ凪沙と、実の母親に愛されない、寂しさに埋もれる一果。「ひとり」の二人が苦しみながら引き寄せあい、生きていた作品でした。

一果を演じるのは、映像作品初出演の服部樹咲さん。もともとバレエの技術に長けていて、ジュニアバレエコンクール東京大会1位とかにも輝いたことがあるそう。レベル。

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一果が演じるバレエの華やかでしなやかな姿には、同時に儚さが見えるんです。その儚さが、この映画に芯として存在する葛藤や物悲しさを一層引き立たせていました、、。

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物語の中盤で、凪沙がバレエ教室の先生から「お母さんも頑張りましょうね!」と言われたことに「お母さんだなんて」と思わず笑っちゃうシーンがあるんですけど、「よかった、報われた」と感じて、そこで泣きそうになりました。全然終盤でもないし、物語全体を俯瞰すると報われていたのかわからないけど、凪沙本人的には思っていなくても、確かに母親として観られていたシーンだったから。

結末は、悲しい。詳細は書かないけど、悲しい。でも美しい映画でした。

あとふたつ。ひとつは、草彅剛が凄すぎた。途中から演じているのが草彅剛だとは感じなくなるほどの演技力というか、なりすまし力というか。あとひとつは、作中で凪沙が一果に振る舞う夕食のメニュー・「ハニージンジャーソテー」。豚肉のはちみつ生姜焼きなんですが、実際に作ってみたら美味しかった。作り方は、草彅剛のYOUTUBEチャンネルに出てて、真似して作ってみた。

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はちみつが効いているから、しょっぱすぎずほんの少し甘さもあった。


私生活もしっかり混ぜた映画レビューを書きたかったのですが、映画レビューに比重が傾きすぎたかな?最後の、家感満載の生姜焼きで私生活側のウェイトもしっかり取れたかな?おわり。

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