患者の4割がデジタル体験の悪い医療機関は避けると回答
デジタルヘルスケア News 9月第4週
アメリカのアンケート調査で、デジタル体験の優れていない医療機関から切り替えると回答した人が4割を越えました。eコマースなど消費者向けサービスと同様に、患者目線でのデジタル体験が医療機関も必須になってきています。
医療機関の最優先事項は患者アクセスの改善
医療機関の検索とスケジュール管理を提供するKyruusが、患者エンゲージメントを改善するEpion Healthを買収する。Epionが提供する遠隔医療、オンラインスケジュール登録、オンライン患者受付、患者リマインダーツールを⾃社に取り込んでいく。買収後は、500以上の医療機関・クリニック等にサービス提供することになる。
調査によると、患者の約4⼈に1⼈が、かかりつけ医院の担当者と電話で連絡を取るのが困難であると回答している。多くの患者は、時間外の連絡、当⽇、または翌⽇の予約を希望するため、オンライン予約機能がなければ、これらを迅速に⾏うことは困難となる。別の調査では、約42%の患者が、オンライン請求や予約管理などのデジタル体験が優れていない場合、医療機関を切り替えると⾔う。
妊娠中絶の判決とデータプライバシー
人工妊娠中絶の保護を打ち切った最高裁判決を受け、中絶禁止を法令化した州においてテック企業がどれだけ加担すべきなのか議論が盛り上がっている。テック企業はアプリを介して、ユーザの場所、友人・家族とのメッセージ、生理日のトラッキングが可能であり、これらのデータを人工中絶が違法な州でどのように取り扱うかがキーとなっている。
今夏にはネブラスカ州の女性が違法な中絶で起訴され、Facebookでのプライベートメッセージがその証拠になったデータ・プライバシーに関する事件が起きている。連邦取引委員会は、アイダホに本社を置くKochavaが数百万人のユーザーの位置データを販売したとして訴えている。
また、アップルストアで人気の生理記録アプリであるFloは、ユーザーのデータ保護を求める声に応じ、「匿名モード(anonymous mode)」を稼働させた。名前やメールアドレスなど、ユーザを特定する識別子を利用せずにアプリにアクセスできるようにしたと発表。同アプリは、4,800万人のユーザーに対して、すべてのデータが暗号化されていることを保証しており、8月には、サイバー攻撃、ハッキング、データ漏洩からデータを保護するためのISO 27001認証を取得している。
大手保険会社のUnitedHealthcareがPelotonとの提携を強化
UnitedHealthcareはPelotonとの関係を拡大し、1,000万人の会員が同社のフィットネスサービスを利用できるようにすると発表した。UnitedHealthcareは昨年、Pelotonと契約し、当初は約400万人の会員が同社のアプリを利用できるようにしていた。
このパートナーシップの一環として、対象となる民間プランの会員は、特典の一環として、Pelotonのアプリ1年間のメンバーシップ、または追加費用なしで3ヶ月間のオールアクセス・メンバーシップを受けることができる。オールアクセスメンバーシップは、Pelotonのデバイスを通じてフィットネスクラスを受講することができ、アプリへのアクセスと同時に測定値をトラッキングすることが可能となる。
約1年前の最初の立ち上げ以来、UnitedHealthcareの会員は毎月100万件のPelotonフィットネスクラスを受講しており、月に少なくとも1回クラスを受講している会員は平均して毎週3回受講しているという。
電子カルテベンダーEpicが臨床試験のマッチングプログラムを開始
電子カルテ大手のEpicは、治験・臨床試験のマッチングを促進することを目的とした新しいライフサイエンスプログラムを立ち上げた。このプログラムは、医療機関、製薬会社、医療機器メーカーと協力し、研究参加者の募集、マイノリティーの人々へのアクセス拡大、新しい治療法の開発のスピードアップを図るもの。
「ライフサイエンス・プログラムは、参加患者、医療提供者、研究スポンサーを単一のシステムでシームレスにつなぐことを目的としています。臨床研究とケアデリバリを統合し、研究スポンサーとの直接的なつながりを構築することで、研究をより効率的に、よりアクセスしやすく、より効果的にし、新しい治療法の開発を加速させることができます。」と、Epic社副社長のAlan Hutchison氏はプレスリリースで述べている。同社によると、470万人の患者を対象とした10万件以上の研究がEpicのプログラムで管理対象となっているという。
スマートフォンのカメラで血中酸素を測定できる可能性を示唆
ワシントン大学およびカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループは、スマートフォンのカメラで撮影したユーザーの指の映像のみを使って血中酸素濃度を解読する人工知能アルゴリズムを開発しようとしている。自宅など専用デバイスが無い環境でも測定できるようにすることを目指している。
検証では、各参加者に酸素と窒素の混合物を吸入させ、ゆっくりと酸素濃度を下げてアルゴリズムの精度をテストした。その結果、酸素飽和度が90%未満の低酸素状態を感度81%、特異度79%で検出することができたと発表している。
この研究の共著者で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校Matthew Thompson医学博士は、「この方法を使えば、自分のデバイスを使って低コストで複数の測定を行うことができるようになります。さらに、情報を医師に送信して遠隔診療に連携したり、看護師がトリアージで患者を救急にまわす必要があるか素早く判断するのに有効である。」という。また、近年、一般的なパルスオキシメーターは主に肌の色素が薄い人を対象に開発・テストされてきたため、肌の色が濃い人ほど正確な結果が得られないことが、複数の研究により明らかになっている。
論文:Smartphone camera oximetry in an induced hypoxemia study
スタートアップ資金調達
Tuned
9/19/2022、シード; $2.5M
VC - Idealab NY, Elements Health Ventures
福利厚生として聴覚健康サービスを提供する会社
Tunedのプラットフォームを通じて、聴覚専門家や製品にアクセスが可能
市販の補聴器や耳鳴り管理アプリも提供
3,700万人以上の成人が聴覚の問題に苦しんでおり、長時間のヘッドフォン使用、聴覚疲労、聴覚処理障害、耳鳴りなどの影響を受けている
労働年齢の成人の25%、学齢期の子供の15%が、難聴から耳鳴り、平衡感覚、聴覚処理障害(APD)など、聴覚の問題を経験していると言われている
Tunedが実施した350人以上の成人を対象とした調査では、パンデミックによって聴覚の問題が増加していることが明らかになっている。調査結果によると、成人の1/3が1日8時間ヘッドホンを装着しており、聴力疲労や聴覚処理の問題につながる可能性があることがわかった。回答者の50%が聴覚疲労を経験し、その結果、生産性の低下を自覚しているという。
Bicycle Health
9/22/2022、シリーズB-2; $5M(5/23/2022、シリーズB; $50M)
VC - Cobalt Ventures, Questa Capital Management, City Light Capital, Frist Cressey Ventures, InterAlpen Partners
オピオイド中毒治療に特化した遠隔診療
医師と行動療法の専門家からなるチームによって、患者ごとにカスタマイズされた治療計画を作成し、オンラインで治療を進める。さらに、即日で処方箋を発行したり、自宅でも可能な進捗確認テストなども提供
現在20州以上で利用可能
アメリカでは300万人がオピオイド中毒者で、グローバルでは1600万人になると言われている
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