『戦闘能力高い嫁と国家機密な旦那さん』第2話【週刊少年マガジン原作大賞連載部門応募作品】
『あなたの子供が私の可愛い子を叩いたのよ!暴力よ!!』
…幼稚園の保護者達がザワザワし、
それを狙って
『やっぱり自衛隊の両親だとなんでも暴力で解決しようとするのね!怖いわぁ〜!信じられない!どう言う教育してるの!?おたくは!!?』
カッとなった!
『やっぱり噂はそうだったのねぇ〜自衛隊だったのね〜!
だから暴力を振るうのもわかるわ〜…怖い!』
ヒソヒソと好奇の目で見られて、どんどん広がっていく…
保育士さん達が集まり、園長も出てきて、その場を収めて、両家の話となった。
保育士さん達は口を揃えて、”おもちゃを取るときに我が子の手が、
相手方の子の顔に当たった、明らかにアクシデントだった“と
証言してくれているのだが…。
向こうの親は『叩いてきた』の一点張り。
剰え、こちらが自衛官と知っていたのを、ここぞとばかりに罵り、悪態をつく…子供達は別室でそれぞれ他の保育士さん達が預かっていてくれてよかった。
向こうは旦那さんも駆けつけて、二人揃って、罵詈雑言の嵐。
状況を収めるためにも、とりあえず話しを聞くことに我慢している。
ぐっと血が出るくらい手を握りしめて…
『自衛隊は暴力を振るう両親だから、仕方ないわね!人も殺す位だからね!昨今の事件でもそう!怒りに任せて人を銃で撃ったり!本当に信じられない暴挙だわ!子供達もそうやって育ってきたから、暴力も普通なのね!!』
…我慢しろ、反論すれば長引く。
『しかもあなた高卒ですってね?”学もないから自衛隊入ったんでしょうね?“普通の家庭なら女の子は大学位は出るはずよ?京都ではそれが普通なのに…』
…関係ないことまで引き合いに出してくる…個人情報なんて女の集団の前では皆無に等しい。世間一般の価値観とは令和になった今でも”勉強できないなら自衛隊にでも入れ”という認識なのだ。国防と学は切り離せないものなのだが。いまだに体力ありきの暴力集団という…。つくづく京都は“都”のままなのだ。今まで聞いてきた京都の国防に対しては”新撰組“が根強く、強いて言うなら”芹沢鴨“だろうなぁ〜…こういう別のことを考えてないと、余りにも粘着質にネチネチと言ってくるアホ女を投げ飛ばしたくなる…。なぜこうも同じ事をネチネチと言うのだろうか。勿論こちらに過失があるにしても…そこまもう小一時間ネチネチと。進展のない仲介する園長や保育士さん達の話も聞かず…。何がしたいのかさっぱりだ。
子供達をこの間にも待たせているし。
…あぁ、別室にしてくれて感謝の限り、こんな言葉聞かせたくない。二人共辛いだろうな…きっと。傷ついてる、どんな理由であれ、アクシデントでそうなった、それだけでも傷ついてる。
保育士さん達や園長も気まずそうに収める様に持っていこうとするが、全く収まらず、
『こんな恐ろしい家族と同じ幼稚園なんていやよ!退園させて!この件で!自衛隊なんてこの平和は日本にはいらないのよ!軍なんて、ましてや武器を持って人殺しを喜んでする様野蛮な人間が、我が子のそばにいると思うとゾッとするわ!』
…グッと我慢だ。アクシデントとしても、相手を傷つけたのだから、ここはグッと我慢だ…。…例え何を言われても。
…「申し訳ございませんでした。大切なお子様を傷つけてしまい…」と。
どうにか保育士さん達、園長も含め、監視不足でしたと謝罪をし、やっと収まった。
帰るのは、向こうが完全に帰ってからにした。
我が子達の所に行き、まずぎゅっと抱きしめた。
二人は、我慢していた。あの罵詈雑言も聞こえなかったわけではないだろう、自分達が原因で自分の母親が怒られていることに。
「本当に申し訳ございませんでした。」
と保育士さん達と園長に深々とお辞儀をした。
「いえ、こちらの落ち度です。本当に申し訳ございません。
向こう方の子はいつも他の子達が遊んでいたおもちゃを奪うことを毎回していて、それを諌めようとして、おもちゃが弾みで当たったんです、それを見て、あなた様のお子様は、さっと冷やす手当てをして、冷静に対応していました」
…泣くな、我が子達のために泣くな。いまここで泣くと我が子達は“自分達のせいでお母さんが傷ついて泣いた”そう思わせてしまう。
…ただ黙って帰路に着いた。
こう言う時、旦那さん…きっと彼ならもっと軋轢のない様に対応しただろう。自分の不甲斐なさにまた泣きそうになった。
幸いうちの両親は、さっと気配を読み、何も聞かず普通に我が子達に接してくれた。
…夜寝る前に「ごめんなさい、
僕がもっと気をつけてたら、当たらずに済んだのに、傷つけちゃった…」
すかさず横にいた双子の妹は「ちがうの!
わたしがちゃんと向き合って止めれいれば当たらずにすんだのに…」
…二人ともが連携して、さっと止めようと駆け寄っていたのかと想像するとまた泣けてきた。
「ありがとう、皆が怪我しないように、順番に使おうと言ってくれて、横取りはダメだよって注意してくれたんだね。ありがとう二人共」
…二人は堰を切らして、大泣きした。
私はぎゅっと二人を抱きしめて、二人の傷が少しで癒されるように願いながら。
翌日からの周りの目は大体想像がつく、幾らでも自分を罵ってくれ、ただどうかこの二人には聞こえないように…。
その願いは最も簡単に崩される事になる、わかってはいたが。
…辛い。
↓第3話