折に触れて

「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ。」
1952年からラジオドラマで流された「君の名は」の冒頭の名台詞が心に刺さる。2011年の今日3月11日に三陸海岸を中心に東日本を襲った大地震は2万人弱の大切な命を奪い、9年を経た今もその影響が到る処に残っている。亡くなった方々の90%は津波によるものとされており、圧死や焼死が主たる死因とされる阪神大震災とは全く異なる種類の大地震である。


 天災は直接体験したらなかなか忘れることが出来ない。大阪北部地震のような東日本や阪神の大震災と比べると小さな地震でも体験したら忘れられない。


小さいとはいえ、ブロック塀倒壊で亡くなった児童や老人もいた。遺族の方々にとっては絶対に忘れられないだろう。我が家もたくさんの食器が壊され、家のあちこちに不具合が生じ、半月ほどは風呂に入れない生活が続いた。我が家の近所には今日もまだブルーシートをかぶせた家が少なからずある。繰り返し言うが大阪北部地震の規模でもこんな影響が残っている。東日本大震災のようなマグニチュード9のレベルの地震ではどんなことが起こったのか、想像するだに恐ろしく感じる。


 起こってしまった天災は残念ながらこれは現実で、ある意味において、忘れ去ってしまわねば未来のステップに進めない。「君の名は」は恋愛ドラマではあるが「忘れ得ずして忘却を誓う心の悲さよ」という一節は確かに真理だと思うし至言だと思う。しかし、誓っても忘れられるものではない。


 この慰霊の日に何をすべきか、自分なりに考えてみた。まず、最も必要なことは日本は地震・台風などの災害が起こる天災大国だという事実を肝に銘じ、これを子どもたちから老人までに徹底することである。そして、身近に天災を感じて、それに対する対策を日常ベースで準備することである。過去の数多の天災からもたらされた教訓をしっかり整理して、それを着実に継承してゆかねばならない。


 これからも3.11は、区切りの日として続いてゆくだろう。津波に対してどう対策したか、原子力発電は今後どう扱えば良いだろう、そして福島の回復に向けてどう進めればいいだろう、これからの東北振興にはどういうアイデアがあるのか、、、等々考えたり進捗をフォローせねばならないアイテムは数限りなく存在する。祝祭日は別に祝う日だけを休日にすることもないのではないか。3月11日は鎮魂と防災を考える節目の日として休日にすべきではないか。日本全国で一斉に防災を考える日にしてはどうかとも思う。


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