ヤコブソン・バレエ団 ダンサーインタビュー No.2 大塚カレン【ヤコブソン・バレエ団編】
こんにちは!
前回に引き続き、ヤコブソン・バレエ団ダンサーインタビュー企画・第2弾として、現在唯一の日本人ダンサーでアーティスト(コール・ド・バレエ)、大塚カレンのインタビューをお送りします!
今回は【ヤコブソン・バレエ団に入団してからの日々】についてお話を伺いました。最終回です!
★プロフィールと前回のインタビューはこちら★
①プロフィール&日本時代編 https://note.com/impresariotokyo/n/n544943434524
②ワガノワ留学時代編 https://note.com/impresariotokyo/n/na41738ad202b
~Vol.3 ヤコブソン・バレエ団編~
1.ヤコブソン・バレエ団で踊り始めたのはいつ頃ですか?
2018年6月にワガノワを卒業し、8月に団員として初めて舞台に立ちました。8月はヤコブソン・バレエ団が最も忙しい時期です。マリインスキーバレエ団が海外ツアーや夏休みになるのですが、世界中からは沢山の観光客がサンクトペテルブルクを訪れますので、代わりに私たちがマリインスキー劇場で『白鳥の湖』などをほぼ毎日上演しています。
連日にわたる公演は怪我人を出してしまうハードさですが、常にギリギリの人数で公演を回しているので、できるだけ早く来てほしいとバレエ団から頼まれ、夏休みもそこそこにロシアへ戻りました。
2.プロになって初めての舞台は何でしたか?
『白鳥の湖』でした。ほぼ2日間で白鳥の群舞の振付を覚え、自分が立つ位置はほとんど分からない状態のまま舞台に上がることになり、最初の数回は緊張感が凄かったです。
出番は多くなかったですが、早速プロの洗礼を受けた気分でした(笑)
(「白鳥の湖」本番前に)
3.ヤコブソン・バレエ団はどのような雰囲気ですか?
アットホームな雰囲気です。ツアーがメインのカンパニーなので、みんなで世界中を旅しているうちにそういう雰囲気になるのかもしれません。所属ダンサーは70名程ですが、若いダンサーが比較的多いです。
(「くるみ割り人形」終演後)
4.ツアーがメインということですが、これまでどのような場所に行かれてきましたか?
私が入団してからは、フランス、スイス、ドイツ、イタリア、モロッコ、ジョージア、日本などを訪れました。
5.ツアーで訪れた中で最も気に入った場所はありますか?
名前を忘れてしまったのですが、フランスのとある街が綺麗でした。あまり観光をする時間がないので、滞在先のホテルの朝食の美味しさや部屋の綺麗さが一番印象に残っておりまして…(笑)
6.ロシアでも公演があるのですよね?
サンクトペテルブルクでは、アレクサンドリンスキー劇場をメインに、マリインスキー劇場、ボリショイドラマシアターなどで公演を行なっています。サンクトペテルブルク以外の公演もありまして、先日はジョージアの隣に位置するウラジカフカスという所へツアーで行ってきました。来月には、モスクワのボリショイ劇場で初めて公演を行う予定でしたが、コロナウイルスの感染が再び拡大しているのでキャンセルになりそうです…。
7.監督のアンドリアン・ファジェーエフはどのような印象ですか?
とてもストイックな方だと思います。現役時代からそうだったというお話をよく聞きますが、今も団員たちのリハーサル前にトレーニングしている姿を見ます。私たちにも高いレベルを求めてしょっちゅうげきを飛ばしていますが、彼の美意識やストイックさのお陰で成長することができていると感じます。今はコロナの影響で忙しくされているのか、あまりリハーサルには来ませんが…。彼のような一流のダンサーだった方の下で踊ることができるのは幸運なことだと思います。
(ヤコブソン・バレエ団の現芸術監督で、マリインスキー劇場元プリンシパルのアンドリアン・ファジェーエフ)
8.ヤコブソン・バレエ団にはどのようなレパートリーがありますか?
レパートリーは『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』などの古典作品が中心ですが、1年に1度は新作に取り組んでおり充実しています。
一昨年は英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍していらっしゃったイナーキ・ウルレザーガさんによる振付の『スペードの女王』を完全な新作で初演しました。私たちには珍しくドラマティックな作品だったので、新鮮で楽しかったです。衣装もとても美しかったですし。
(「スペードの女王」ポスターイメージ)
(『スペードの女王』の衣装を着て)
2018年にはダグラス・リーさん振付の新作『火の鳥』に参加させて頂きましたが、こちらは思いっきりコンテンポラリーで楽しかったですね。ほぼ歩くだけの役だったのですが、コンテンポラリーの内面を表現するところが好きなので出演できて良かったです。
(ダグラス・リー振付「火の鳥」より)
古典作品でも、『眠れる森の美女』はジャン=ギョーム・バールさん、『ドン・キホーテ』はヨハン・コボーさんの改訂版なのですが、どちらもロシア・バレエの技術を下地にしつつ、彼らのスタイル…パリ・オペラ座やロイヤル・バレエのエッセンスが入っていたり、新しい解釈が入っていたりして、踊っていても楽しいです。
あと、私はまだ本番で踊ったことがありませんが、レオニード・ヤコブソンの作品も年に数回ほど上演しています。とても面白い作品ばかりなので、ぜひいつか日本のみなさんにご覧いただきたいです。
(「ドン・キホーテ」より)
9.昨年は新作としてジョン・クランコの『オネーギン』を上演する予定だったそうですね?
はい、ヤコブソン・バレエ団で初めて上演する予定でした。サンクトペテルブルクのバレエ団でこの作品をレパートリーに持つ所がないので、みんな気合を入れて準備していたのですが、コロナ禍に見舞われてしまって…今年こそは上演できたら嬉しいです。
10.バレエ団ではどのような役を踊られていますか?
まだアーティストですので、コールド(群舞)が多いです。たまにソリストの役を踊る機会もあって、これまでに『ドン・キホーテ』の“花売り娘”、『眠れる森の美女』の“宝石”などを踊りました。『白鳥の湖』の”パ・ド・トロワ”や『眠れる森の美女』の妖精のソリストも練習はしていますので、いつか舞台で踊る日が来たら嬉しいです。
(「眠れる森の美女」よりサファイアの精、カーテンコールにて)
(「ドン・キホーテ」よりバジルと花売り娘のパ・ド・トロワ、向かって左側)
最近は『白鳥の湖』のキャラクター・ダンス(民族ダンスなどの性格舞踊)を練習する機会もあって、先日マズルカを本番で踊りました。ワガノワ・バレエ・アカデミーでキャラクター・ダンスを教える先生に、ほぼマンツーマンでご指導いただいたのですが、手の高さなどの細かい部分から「宮廷で踊る場面なのだから気品を忘れずに」といった技術以外の面までアドバイスを頂いて、とても有意義なリハーサルでした。
(「白鳥の湖」マズルカの衣装を着て)
11.「プロになってぶつかった壁」のようなものはありますか?
入団して2年目の時、1か月ほど踊れなくなった時期がありました。
膝や足が痛かったのですが検査をしても異常は見当たらず、とりあえず本番への出演は控えることとなったのです。最近になって疲労骨折をしていたことが分かったのですが、今まで踊ることで怪我をしたことが私は一度もなかったので、プロとして踊るとはこういうことなのかと実感しました。
12.逆に、プロになってから嬉しかった出来事はありますか?
先日、『くるみ割り人形』の終演後に、メッセージが届きました。送り主は、その日の公演を鑑賞した方のようで、私の踊りをとても褒めてくださいました。あなたが後ろで踊っているのは残念だとまで仰っていただいて、私自身はここにいられるだけで満足だと思っていたので、そのメッセージにとても驚きましたし意識が変わりました。
それ以来、コールドで踊る私にその方はわざわざ花束を用意してくださったりするので、これからもその方に喜んでもらえる踊りをしないと!と頑張るモチベーションになっています。
(上記エピソードに登場するお客様から頂いた花束)
13.2018年、2019年の日本ツアーに参加されましたが、いかがでしたか?
日本で踊ることができるのはとても幸運なことだと思います。海外のバレエ団だと、日本で公演ができないところもあるので。
バレエ団も日本ツアーの時は特に張り切っています。日本のお客様は目が肥えていらっしゃるので、リハーサルもいつも以上に力を入れて行います。それと、バレエ団のメンバーたちはみんな日本が大好きなので、滞在中は観光や買い物など思い思いに楽しんでいるようです。
昨年はコロナウイルスで来日が叶わなかったので、今年はまた来ることができたらうれしいです。
14.コロナ禍はどのように過ごされていますか?
コロナが流行りだしてからしばらくの間は、ずっとロシアで過ごしていました。日本に帰ることができるタイミングもあったのですが、『オネーギン』のリハーサルも控えていましたし、帰国したことで遅れをとりたくないと思って残っていました。結局はすべての公演もリハーサルもストップしてしまい、3か月ほど暇な時間ができてしまったのですが。
ロックダウン中は、バレエ団の友人やその家族がよくしてくれて、ダーチャ(ロシアの各家庭が所有する別荘)に招待してもらったり、伝統的なお祭りを体験させてもらったりして、ロシアに住み始めてから最もロシアを感じることができる期間だったと思います。
(ダーチャの庭にて)
15.それはよかったですね。ちなみに、ダーチャというのは私たちが想像するような豪華な別荘なんですか?
いいえ、こじんまりとした小屋です。
ご家庭によっては綺麗なダーチャもあるそうですが、私がお邪魔したところは小屋みたいな感じでした。そこで、フルーツや野菜を育てたり、外でお肉を焼いたりするのが毎年の夏の楽しみだそうです。私も楽しみましたが、虫の量がすごすぎて1週間もいられないなと思いました…(笑)
(ロシア版BBQ、シャシリクという肉の串焼き)
(庭で採れたキノコ)
(ダーチャで綺麗に咲く花)
16.最後に、バレリーナとしてのこれからの目標を教えてください。
まずは、ヤコブソン・バレエ団でもっと色々な役を踊ることが目標です。
そして、これからもお客様に喜んでいただける踊りができるように頑張ります。
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「自分にはバレエが好きという気持ちが欠けており、ずっと消極的なバレエ人生だった」と語るカレンさん。
しかし、ロシアで踊り、様々な人と出会い、力をもらう中で、バレエに対する意識が変化したそうです。このコロナ禍でも、ロシアに残り続け、思うように踊れない中でも粘り強く日々を過ごされています。
一見飄々とした雰囲気でありながら、真面目にひたむきに努力を重ねるカレンさんの今後の活躍を楽しみにしております!
日本語でのインタビューだったのでついつい長くなってしまいましたが、
読者の皆さま、お付き合い頂きありがとうございました!
次回のインタビューは、プリンシパルのエレーナ・チェルノワです!
どうぞお楽しみに♪
★大塚カレンの【Instagram】アカウントはこちら★
↓↓↓
https://www.instagram.com/le_karen_gend/
取材/文:インプレサリオ東京
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