海外で働く

私はシンガポールに渡星して今年で8年目になる。

初めはホテルマンとして夢を抱いて飛んできた。

念願の“海外で働く“を叶えにきたんだ。

高校時代は英語が2か1でみんなに笑われ、専門もサンドイッチ留学という1年と2年の間に留学があるコースも選べたけど、学費がバカみたいに高いから普通科に行った。

卒業後はザ・日系のホテルに進んでそこからは怒涛のように転職しまくるんだけどそれは別のお話。

シンガポールへは、日本の最高級ホテルから同ブランドのシンガポールに並行移動のような感じで飛んで、

それはそれは最高の5年間でした。

これこそが天職だと思っていたし、これ以上の仕事はないと思っていた。

でも、結婚して出産して母親になった時、自分の優先順位を変えないといけないことにも気がついた。

好きなこと>家庭

そんなこと言う人はわがままだと言うかもしれない。

やろうと思えば二つ同時に叶えることは可能だと。

果たして実際叶えられるのだろうか。

絶対に完璧に仕事をこなして、家庭のことをこなして、かつ自分の幸せも掴めることはあるのだろうか。

私はそれはないと思ってる。

だから、何かを切り捨てることにした。

大好きなホテルマンだ。

私はホテルマンとしてキラキラ働いてみんなに幸せになってもらうことよりも、自分の息子の笑顔を見逃さないことを選んだ。結果私は違う意味の幸せを得ている。


ホテルを辞めた時期はちょうどコロナ禍真っ只中で、当然ホテルにくるお客さんもいない。

タイミング的には今だと思って辞めたけど、あんなに貢献して幸せに仕事してきた会社なのに、コロナ禍なこともあり、お別れは誰も来なかった。

来れなかったって言うのもあるけど(シンガポールのコロナ禍の法律はめちゃめちゃ厳しい)あっけなかったな。

そのあとは間髪入れずにレゴのカスタマーサービスに入社。

電話越しだけど、ホテルみたいなサービスができて楽しいなとは思った。

仕事内容としては、パーツがない時の購入や作り方がわからないときのお手伝いなど、レゴに関することを全部受けてお答えするんだけど、

ある日、あるお子さんのお母さんが電話をかけてきて、トイストーリーシリーズの人形をポーチに入れていつも大事に持ち歩いていたんだけど、どこかにおき忘れてウッディと犬がいなくなってしまったと子供が泣いている。

どうにかしてそれだけを買うことはできないかという問い合わせだった。

ミニフィギュアだけは売っていないので、購入できないことは伝えて、確認すると電話を切った後に、自分の判断でウッディと犬をアレンジしてご自宅に発送することにした。

その報告をメールでするにあたり、“ウッディと犬はバズに内緒で多分冒険に出てしまったんだと思う。バズまで探しに行ってしまうと困るから、ウッディと犬が帰ってくるまでお家にお留守番させておいてあげてね“というメッセージを添えて、お母さんに送ってあげた。

その後、お母さんから涙涙の電話とメールが返ってきた。

自分の思いつく限り電話を通してできるサービスをしてきた結果、日本のレゴの社長に認められるほど、対応に関してはお褒めをもらった。

でもそこで、私がやっているサービスは私を評価されているのではなく、レゴの対応を評価されてることに気がついてしまった。

私がどんなに悪いサービスをしたとしても、レゴは購入されるし、私一人の対応が悪かったからレゴ嫌いにはならない。

そこで1年経った時に一気にやりがいを失ってしまった。

そのまま、すぐにアップルに転職した。

履歴書だけをみたらすごい経歴だと思う。

アップルでもカスタマーケアみたいなものだけど、今回は一切お客さんとはおはなししない部署。

でもさすが世界最高の会社。

サービスを必要としない。

決まった文言だけを返していればそれでいい。

余計なことを入れた時点で減点となる。

1年で速攻興味を失った。

レゴの方が断然温かみがあった。


そこからブレた。


私は何がしたいんだっけ。

なんのためにホテルを離れたんだっけ


そうだ、家族のためだ。


レゴやアップルなどの大企業でしかもカスタマーサポートは、秒刻みで時間が管理されている。

トイレに席を立つ時、飲み物を取る時。

常にクリック一つで時間が計算され、戻ってきた時にも計算されるので、分数が多いと、何をやっていたんだと報告せねばならない。

その数が多いとワーニングとなる。

こっちには子供ありきで仕事していて、突然保育園から電話とか色々ある。

時間で区切られる仕事するくらいなら、慣れ親しんだホテルの方がよっぽど家族の時間を持てると思ってしまった。


そして、現在の職に至る。


今の仕事はザ・日系な一般企業だ。

日系でもTOYOTAみたいに海外に目を向けている企業ならもっとグローバルな人材がいるのだろう。

でも私の会社は海外に目を向けていても内部の人間は社長とかを含めて英語を話せる人の方が少ない。

例えるなら、日本で超有名な和菓子屋さんが世界進出してみようと飛び出してみたらすごい人気になったけど、元々は小さな街の和菓子屋さんなので、親爺さんとかおかみさん全然英語だめ、下のものに頑張ってもらおう。的な感じ。

だからこそ、私は専門卒で学歴ないのに、シンガポールにいる永住権持ちと言うだけでこんな大企業に雇ってもらえた。

そこで最近感じることは、

日本って融通の効かない国だなぁと言うところ。

1+1=2でないといけない。

私はホテルで散々培ってきたので、1+1=2なのはわかるけど、人の見方によっては違う答えもあるかもしれないから考えてみるね?っていう先読みをするようになっていた。

それを現会社でやってあげると、いや、欲しいものはこの答えであって、あなたのこれをやることによって余計な詮索が増えてしまうからやらなくていい。みたいに言われてしまう。

そうか、余計な仕事をしなくていいのか。と言う気持ちにはまだまだなれそうにない。

海外の日系企業で働きたいと思っている人がいたら、その企業にもよるけど、日本の企業で働くということを忘れてはいけない。その土地が北海道とか大阪とか地域が異なるように海外っていうだけ。

その会社の色というのは、海外に行っても日本であるということは忘れずに転職活動をお勧めする。

私は40歳まであと少しの年齢なので、日本で新卒を感じてきた時は今みたいにグローバルではなくセクハラパワハラなんて言葉はなかった時代。

その時代を知っているから日本ってこうだよなぁって思えるし、

海外にいてそのことを思い出して日本らしさも大事だなって思えるけど、

今の世代の人たちが期待するものは違うかもしれないから、よく考えて見てみるといいと思う。


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