「ぼくのなつやすみ」の中に迷い込んだ話

ゲーム「ぼくのなつやすみ」は田舎で虫取りや川遊びなんかしながら、夏休みの小学生になることができるゲームだ。

私は鳥取県にある、山と山の間にある、本当に絵に書いたような田舎にあるタルマーリーというパン屋に行った。

私はパン屋なんてあんまり行ったことないし、パン屋を目的にでかけたこともない。そんな私がなんでこんな車でしかいけない、ましてや車でも2時間以上かかるようなパン屋に行ったか。それは、バイト先の私の大好きな店長が「鳥取にパン屋があるらしいよ。行くとこないなら行ってパン買ってきて。」といってくれたからだ。私はいわゆる遠距離恋愛中の身で、毎月5日間、長いときは1周間おやすみをとって、鳥取へはるばる彼に会いに行っている。鳥取は海がきれいで、家からでれば大山が見えて、24時間スーパーがあるし、住みやすくてとても好きだ。行く前は絶対に旅行の目的地にならない場所であったが。そんな好きな場所でも、毎月行くとなるといく場所がなくなってくる。そんな事をポロッと漏らしたことを覚えててくれて、店長が教えてくれた。調べると彼の家から高速道路で2時間半もかかるし、パンにそんなに興味がないけど、おでかけするようなところも尽きてきたし行ってみよう。結果、本当に行ってよかった。リアルに「ぼくのなつやすみ」の中に入り込めることができた。

パン屋は廃校になった小学校を改装していた。小さい木造の小学校だったことがわかる作りになっていた。私達はいのししバーガーとスコーンそれからアイスコーヒーを頼んだ。バイト先のパンが好きな人達へ、おみやげにたくさんパンも買った。パンは紙袋に直接いれてくれる。そんな体験初めてで、二人で「フランスみたいだね」なんていいながらボーっと頼んだものがくるのを待っていた。カフェスペースは教室がカラフルな壁になり、たくさんのパンや経営の本が並び、夏なのに扇風機のみで澄み切った風が通り抜けていて、庭はとんぼがたくさん飛んでいた。時間が関東の半分の速度で進んでいるんじゃないかな、あそこは。いのししバーガーはパンが美味しかった。いのしし肉は、食べ慣れてないからかな、ビーフがいいな。でも、バンズが本当に美味しい。スコーンはミルククリームみたいなのがかかっていて、小さいスコーンを甘いクリームとちびちび食べるのが楽しかった。アイスコーヒー飲みながら、二人で静かな空間でのんびり過ごした。やっぱり遠距離だから、関係を続けていくのは大変だ。片方が不安になってぶつかることが多すぎる。でも、高速で2時間半もかかるパン屋に行きたいと言ったら連れてきてくれるような、この非日常な時間が本当に進んでいるのかわからなくなるような空間を一緒に共有することができる人なら、大丈夫かな、なんてアイスコーヒー飲みながら考えた。

途中、スタッフさんがコーヒーもって外のベンチで休憩をしていた。ここで毎日働いていたら、自分の中の時間の進み方はどうなってしまうんだろう。そりゃ営業時間はあるから朝何時に起きなきゃとかはあるだろうが、この人の音がしない場所でどんなふうに時間がすぎるんだろう。毎月鳥取に行くたびに地方で暮らしてみたいと思う。

帰ってパンをみんなにあげたらとっても喜んでくれた。嬉しかった。彼もまた来月行きたいねって言ってくれた。嬉しい。

来月も会いに行くね。

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