【健康しが】インタビュー企画「Well-beingプログラムの開発と指標づくり」
こんにちは。
立命館大学食マネジメント学部の豊田です。
今回は、滋賀県の健康しが活動創出支援事業費補助金に唯一の大学生枠として採択された、「自然資源を生かした体験型プログラム『アウトドアダイアログ』」のプロジェクトを私たちが実施するにあたり、野外での自然体験がどのように肉体面や心理面などに効果が得られたのかを測る研究をされている立命館大学食マネジメント教授の吉積 巳貴先生にお話を伺いました。
ひとと地域を元気にする『Well-being』プログラムの開発
吉積先生らの研究チームで取り組んでいるのが「ひとと地域を元気にする『Well-being』プログラム」。大学キャンパスを含めた地域資源をWell-being創出資源として捉え直し、Well-beingを意識したキャンプの実施とWell-beingプログラムの評価方法の開発を進めています。
評価指標の開発には、立命館大学食マネジメント学部の保井智香子准教授や山中祥子助教、理工学部の岡田志麻教授らが関わっておられます。
地域づくりに欠かせないひとの幸せ
吉積先生の専門はまち・地域づくりや持続可能な発展のための教育(ESD)で、現在は、私も所属する立命館大学食マネジメント学部で食文化や地域の食資源を再評価し、地域資源を持続的に利用・管理しながら地域住民が主体的に行う地域づくりに関する研究や学生がフィールドで学ぶプログラムについての開発について研究をされています。
今回インタビューで取り上げたWell-beingプログラムの評価指標の開発は、滋賀県の農山村をはじめとした地域をフィールドで、吉積先生がまちづくりの研究をされる中で感じた課題がきっかけになっているといいます。
「地域がよくなることの大前提として、取り組む個々人が満足感や達成感といった幸せを感じていなければ、まちづくりは続かないと感じました。それをエビデンスとして見える形にできれば、今の日本のまちづくりにもっと活かせるのではないかと思います。」
特に近年は、Well-beingというキーワードが日本の行政でも世界的にも注目され、ひとの幸せについての研究に関心が集まっています。コロナ禍の影響でひととのコミュニケーションが制限されたり、食生活の乱れや精神的な疲労があったりすることが大学でも問題になりました。
大学生が地域と関わるきっかけをつくる
これまでも地域活性化を目的としたプログラムを開発することにも取り組まれている吉積先生。今回の研究も指標づくりと合わせて「ひとと地域を元気にする」をテーマにアウトドアプログラムを実施しています。
吉積先生は、「日本では、まちづくりと言うと高齢者が主体で若い人が少ない現状があります。地域に関心を持ち、地域の課題に取り組む重要性を知ってもらうにはどうすればいいか、そのきっかけとなるような機会を作っていきたいです。」という想いを持って活動をされています。
「ひとと地域を元気にするウェルビーイングプログラム」では、地域の自然を感じてもらえるように、そして若い世代・大学生に関心を持ってもらえるようにアウトドアプログラムを考案。地域の食材を使って野外調理をしたり、テントサウナや焚き火を行ったりしました。
Well-Beingプログラムに主要な要素とは
吉積先生を中心とした研究チームでは、滋賀県の豊かな地域資源である自然、農山村、食の魅力を「Well-being」創出資源として再定義し、参加者がWell-beingを感じるきっかけを創出するプログラムを開発することを目指しています。
その上で、Well-beingを構成する3つの要素を定義しています。
①喜び・楽しみ・休息・気晴らし
②意味がある経験・学部・自己達成感・自己啓発・自己実現
③利他的な活動・持続可能性・環境活動・地域コミュニティへの貢献
Well-beingを測る指標としては、OECDなど国際的な機関からも発表されています。しかし、これらの指標は長期的な視点を持って人生における幸福度を測ろうというものが多いです。
そこで、吉積先生の研究チームでは、ひとつのプログラムを通した個々人のウェルビーイングの向上を見える化する、短期的な指標づくりに取り組んでいます。
「評価指標をつくることはすぐにできるものではなく、実践と検討を重ねていきます。この指標をもとに、人と地域を元気にできたかどうか、ひとつのプログラムを通して測定し、地域とウェルビーイングに関するエビデンスとして見える化していけるように、引き続きプログラムづくりと効果測定を行っていきたいです。」とのことです。
最後に
今回の吉積先生の話を聞いて、私たち大学生も友人や家族と一緒に普段とは異なる環境で食事を囲んだり、グランピングを楽しむことで「幸せ」を感じることが多いです。普段は、あまり意識しなかったこの幸せを数値化、可視化されると滋賀県内でどこが一番ウェルビーイングが高くなる場所である、どんな人と一緒にキャンプやサウナをするとウェルビーイングを感じることができるのかを明らかにすることができると思いました。一方で、コロナ禍で若い世代にも孤独や孤立などのコミュニケーションの課題も顕在化してきました。このような課題に対しても、吉積先生の研究成果が応用されていくのではないかと思いました。今回の私たちの活動である「アウトドアダイアログ」にもこの効果測定を取り入れたいと思いました。