【GRIP.4】木質バイオマスを学ぶ長浜市・木之本ツアー
こんにちは。インパクトラボの窪園です。
2022年8月4日(木)長浜市木之本町にある株式会社バイオマスアグリゲーションを訪問しました。今回は、立命館大学グラスルーツイノベーション・プログラム(GRIP)の「カーボンニュートラルを軸とした新たな教育パラダイムの創出・実践・量的評価指標の開発」(代表者:山中 司・立命館大学教授)の研究の取り組みの一環です。(注)
また、本報告は木質バイオマス熱利用プラットフォーム WOODBIO 交流PFにおける、ユース人材育成に向けた検証・調査としても実践を行いました。(注2)
研究では、若い世代が関心を持つSDGsだけでなく、よりマクロな視点で重要な脱炭素やカーボンニュートラルを意識した取り組みに関心を持つきっかけや理想的な脱炭素を意識した教育プログラムとは何かを考えています。今回は、島根県立大学の大学生10名、地元虎姫高校新聞部の生徒4名、さらに立命館守山高校の生徒1名に加えて、立命館大学の大学生3名の合計18名が参加しました。
バイオマスエネルギーは再生可能エネルギーの1つです。そして、バイオマスの資源にも様々な種類があります。今回は、バイオマスアグリゲーション代表取締役の久木裕さんのご自宅とバイオマスアグリゲーションが取り組んでいる木質バイオマスの取り組みについてご紹介します。
ゼロカーボン住宅の見学
はじめに、バイオマスアグリゲーションの久木裕さんのご自宅に伺いました。久木さんのご自宅は、省エネとバイオマス熱利用にこだわったゼロカーボン住宅です。「省エネ」と「創エネ」を組み合わせることで、家庭で年間に消費するエネルギーの量を概ねゼロ以下にする仕組みを目指しています。家計や環境にとって優しいことから、多くの人が憧れる理想的な住宅です。
*省エネルギー
「何よりもまず家の省エネ化が大切」と久木さんはおっしゃっていました。家の壁には杉皮のフォレストボードという高断熱素材を使用するパッシブソーラーという建築手法で、風が通りやすい庇の角度や窓の位置にすることで窓からの日射量を抑えるなど、様々な工夫が見られました。外は雨が降っていて、湿気がありましたが、室内に入ると、カラッとしていて涼しかったのが印象的でした。
*創エネルギー
家の隅にあるボイラ室では、バイオマスボイラで熱を作っています。この熱を各部屋へ送り込む仕組みができており、湖北の厳しい寒さでも、冬は薪ストーブと合わせて快適に家全体を温められるそうです。また、給湯の役割も担っており、「冬だけでなく、1年中有効なシステム」と久木さんは話します。
ボイラーは、完全にコンピュータ制御で効率的なオペレーションとなっており、人がやる仕事は薪をくべることのみ。久木さんがバイオマスボイラで使っている薪は、元々お酒の樽だったもので、今ある資源の活用が実現されていました。
バイオマスアグリゲーションの木質バイオマス熱利用
次に、木質チップを作る現場を見学させていただきました。チッパーと呼ばれる機械で製材端材を細かく刻む工程は、轟音が鳴り響き迫力がありました。出てきた木質チップは、ボイラーの設備を持つ福祉施設や団地に運ばれているそうです。
チップは、スクリューコンベアに投入すれば自動的にボイラーに移動し、バイオマス発電を行う仕組みになっています。「薪やペレットなど、木質バイオマスにも様々種類はあります。しかし、木質チップの特徴はまるで液体のように、自由に使えること。人間の手を使わない為、自動化につながります。」とスタッフの前田さんは教えてくださいました。
また、ここでチップになる木材は、建築などで使われたものが残り、いわゆる製材端材です。地域の資源を最大限利用する仕組みが、実現されつつありました。
よりマクロな地域レベルで
ヨーロッパでは、地域全体が連携し、エネルギーの自給自足を行なっています。しかし、日本では、エネルギーを手に入れるために地域外・海外にお金を支払っているのが現状です。(現状、石油などのエネルギーはますます高騰しています。)
つまり、エネルギーを外から購入することは、地域外・国外にお金が流出し、地域経済が活性化しないということです。むしろ、急激な人口減少により、さらなる過疎化が予想されている中、今のままではさらに衰退してしまいます。
「地域内のエネルギー自給自足システムを作るために、特に地域内の連携強化に取り組む必要がある」、「供給側と需要側のバランスを整え、循環するシステムを構築する必要がある」と久木さんは語ってくださいました。
最後に
"省エネ"や"再生可能エネルギー"と聞くと、どうしても我慢を強いられる印象がありました。また、コストがかかるという印象もあります。しかし、決して我慢をしない、初期投資も確実に回収できるだけの十分な利益が得られることが非常によくわかりました。日本でより一層、新しいエネルギーの向き合い方が普及していくでしょう。
バイオマスアグリゲーションの皆様をはじめ、貴重な機会をありがとうございました。
これまでのプログラムを通して得た経験知・実践知から、理想的なカーボンニュートラルを軸とした新たな教育プログラムを開発したいと思います。