【しがのふるさと応援隊2022】DAY2|自然体験@甲賀市今郷地域
こんにちは!
インパクトラボの豊田です。
この記事では、9月25日に開催した「しがのふるさと応援隊2022」DAY2の様子についてお伝えします!
農山村のイメージを共有してチェックイン
チェックインでは、「今日1日をよりよくするために、仮説を立てよう」とファシリテーターの田口さんからのお話のあと、参加者それぞれが今持っている農山村のイメージを言語化しました。
農業を継ぐ人がいなくて、若者が減っている。おじいちゃんおばあちゃんが農業をしているイメージ
小さい頃、棚田での稲刈りや田植えを体験して、そういう暮らしに興味がある
トンボやコオロギなど虫がいて恐怖の思い出(笑)
ふるさとに田んぼと川があった。けど自分が農業などをやっているわけではないから知識は少ない
地域コミュニティが親密(大根できたよ!みたいな物々交換など)
このように、農山村に対してさまざまなイメージを持っていることがわかり、これまでの経験も含めてお互いを知るきっかけになりました。
今郷地域ってどんなとこ?
その後、DAY2の舞台となる甲賀市・今郷地域の取り組みについて、今郷棚田集落協定の福野憲二さんよりお話ししていただきました。今郷地域は、農林水産省の「つなぐ棚田遺産」に認定されていて、自然環境保全などに積極的に取り組まれている地域です。今郷地域の自然環境のことや、地域活動について教えていただいたことを3つに分けてお伝えします。
①今郷の棚田と「つなぐ棚田遺産」
今郷地域は73世帯・約300人の集落です。集落のメンバーが中心となる今郷棚田集落協定という組織を設立して棚田を守る活動をされています。
「つなぐ棚田遺産」は、農林水産省が認定しているもので、今郷地域以外にも滋賀県内に7つあります。棚田の条件をクリアしていることはもちろん、ただ棚田が存在するだけではなく、どんな活動をしていくのか、その棚田をどのように守っていくのかが、「つなぐ棚田遺産」認定のポイントとなります。
今郷地域では、「今郷棚田の自然を学び豊かな自然を守ろう」をテーマに、活動されています。
②貴重な自然を守り、伝える
その活動の一つとして、県内の博物館などとの連携による生態系保全活動があります。今郷地域で行った自然調査では、ヤマトサンショウウオ(絶滅危惧増大種)やササユリ(要注目種)などの様々な希少種が確認されました。そして、自然観察会の実施やビオトープ整備を通して、「人の営みと生き物の暮らし」や「自然を守ることの大切さ」を学ぶとともに、持続可能な地域の仕組みづくりを進めていっておられます。
③つながり、ひろがってきた活動
棚田や自然を保全する活動は、2010年から自然発生的に始まったご近所さんの活動だったそうです。そこから、甲賀市・滋賀県の行政担当者や集落の活動への理解者や博物館の学芸員さんら専門家とつながり、そのつながりを大切にして活動を広げることで、現在に至っているということです。
魚釣りを楽しみながら外来魚駆除
今郷地域には、池が4つありますがそのうち2つには外来魚が入ってしまい在来種を食べてしまっている状況です。今回は、今郷池という調整池で釣りを体験し、外来魚駆除をしました。(今郷池も外来魚が入っており、釣り人が訪れる場所になっています。)
一人ずつ竿を持って釣れそうなスポットに移動しました。針の先にミミズをつけて池に入れると、あっという間に「釣れた!」という声が聞こえてきました。池には透明な部分があって魚の姿が見えていたため、「来た来た!」「いま(竿を)ひいて!」と大盛り上がりでした。
その後も次々に魚が釣り上げられ、あっという間に袋から飛び出すほど一杯になりました。魚釣りも初めてで、ミミズも触ったことがない、という学生も多かったですが、今郷地域の皆さんがたくさんフォローしてくださり、全員が楽しく魚釣りをすることができました。
最後にグループごとに釣った魚を見比べてみました。大きさや数に違いがあるものの、どのグループもブルーギルとブラックバス(どちらも外来魚)しか釣れておらず、外来魚の被害を目の当たりにしました。
地元の食材から歴史・文化を知るお昼ごはん
午前中のアクティビティを終えて、昼食にはみんなで長い干瓢巻きを作りました。干瓢は水口(滋賀県甲賀市)の特産品で、今郷でもイベントで干瓢巻きを作っているそうです。
段ボールで作ったオリジナルの巻き簀をテーブルに敷き、ながーく繋げた海苔の上にご飯をおいたら均等になるように綺麗に伸ばしていきます。そして干瓢ときゅうりを並べたら、掛け声をかけながら一斉にくるっと巻いて、最後にキュッとおさえたら綺麗に巻き寿司が出来あがりました!
切り分けた干瓢巻きを食べながら、今郷棚田集落協定の長さんから、水口干瓢について教えていただきました。干瓢は、白い花が咲く夕顔という植物の丸い実を薄くスライスし、干したものです。なぜ「干瓢」なのかというと、夕顔のことを瓢(ふくべ)というので、干した瓢=「干瓢」と呼ぶようになったということです。水口(滋賀県甲賀市)には、江戸時代に伝わり、生産が始まって特産品になりました。歌川広重の「東海道五十三次」にも干瓢を干す様子が描かれており、現在国内第2位の生産量を滋賀県が誇っています。
そして、今回お昼ごはんを準備してくださった今郷好日会の皆さんが、お味噌汁も作ってくださいました。お味噌汁は、地場野菜(玉ねぎ、かぼちゃ、じゃがいも、冬瓜、なすなど)が入っていて具沢山でとてもおいしかったです!
ビオトープ・棚田見学
午後からは、ビオトープの構想をされている場所を見学させていただきました。ビオトープとは、ドイツ語でBio(生き物)+Top(場所)を意味する言葉として、「Biotop(生き物の住む空間)」を表す合成語です。
今郷地域では、希少種が生息する環境を守るために、ビオトープづくりを計画されています。見せるためのビオトープ(地域の外の人に発信し知ってもらうもの)と、見せないビオトープ(人が極力入らないようにするもの)があるのだと教えていただきました。
今回、見せるビオトープ予定地を案内していただき、今日訪れたことの記念として、紅葉の苗木を植樹させていただきました。今郷地域の皆さんからは、この近くを通ったら紅葉を見に来てくださいというメッセージと、これからビオトープをつくる上で学生からアイデアを提案してほしいというお話がありました。
棚田米食べ比べ
ビオトープを見学したあと、「つなぐ棚田遺産」に認定されている棚田も案内していただきました。今郷地域の棚田は、日本の原風景として連想される小さな田んぼが急斜面に段々と並んででいるものとは少し異なり、比較的大きな田んぼが緩やかに並んでいます。
棚田には、食用米だけでなく、大豆が植わっている圃場もありました。「転作と言って、食用米の余剰を防ぐためにそれ以外の作物を作ることが推奨されている。ここには食用米だけではなく大豆もあるし、飼料用米もある」と地域の方に教えていただきました。
今郷地域では、食用米でなくても転作という手段で棚田を守っておられるのだと知ることができたと同時に、ルールや制度を知らないとわからないことや現場を見ないと気づけないことがたくさんあると感じました。
その後、公民館に戻って棚田米3種類(コシヒカリ・みずかがみ・ミルキークイーン)の食べ比べをさせていただきました。
コシヒカリ:全国各地で栽培されている品種。噛むごとに甘みと旨味が広がるのが特徴。
みずかがみ:滋賀県で生まれたブランド米。甘みや粘りが控えめであっさりしているのが特徴。
ミルキークイーン:コシヒカリをベースに低アミロースに改良された品種。甘みがありもちもちしている。冷めても柔らかい特徴があるのでお弁当にも向いている。
3種類を同時に食べることはなかなかないのですが、比べてみるとそれぞれの特徴に気づくことができてとてもおもしろかったです。そして、実際に棚田を見たあとだからか、ついさっき見た風景を思い出しながら食べたおむすびは、いっそうおいしく感じました。
今日1日を振り返って
最後に、1日を振り返るワークショップを行いました。今回も前回同様、ポストイットに書き出しながらグループで共有→全体で一人ずつ感想を発表の流れで行いました。
1日の体験を通しての学びとして、「知識として知ってはいたものの、在来魚を誰も釣れなかったことで外来魚の強さを目の当たりにした」「棚田を見学したことで、これまで以上にお米の品種や味を意識した」「手が入っていないのが自然という考えもある一方で、人の手が入らないと維持できない環境もあるのだと感じた」などが挙げられました。
また、『棚田の生態系まるわかり 棚田一望ビオトープ』や『地元の食材や自然を堪能できる道の駅併設ビオトープ』などビオトープに関するアイデアや、「景観にどう価値を生めるか」「”楽しい”をきっかけに自然環境に興味を持ってもらうにはどうすればいいか」といった今後の可能性についても意見がありました。
そして、今回受け入れてくださった今郷棚田集落協定と今郷好日会の皆さんを代表して長さんと福野さんから、「人口減少で昔は人が手をかけられたところもそうではなくなり、今郷の人だけで今郷を守っていけない時代になった。皆さんのように若い人たちの意見も取り入れて私たちも新しい考え方を学んでいきたい」「歴史のこと・自然のこと、いろんな人に出会うたびに、自分の図鑑の種類が増えていくのを感じます。私たちが活動で意識している『つながり』と『ひろがり』を皆さんにもこれからの人生で大切にしてもらいたい」と、メッセージをいただきました。
最後に
長くなりましたが、最後までお読みくださりありがとうございました!
甲賀市今郷地域の貴重な自然環境やそれを守る取り組みについて、少しでも知っていただけましたでしょうか。
今回は自然体験や食というテーマで、自身のこれまでの経験や日常生活と結びつけて考える学生が多かったからか、限られた時間と情報の中ではあるけれど、学生にとって小さな変化が見られたのは興味深かったです。終了後に、「地域としてもひとつの事業で終わらせず、今回繋がった輪を広げていきたい」と地域の方がお話ししてくださったように、身近なところから考えや行動を広げていきたいと感じました。
インパクトラボのnoteでは、今後もしがのふるさと応援隊2022についての記事を上げていきますので、ぜひチェックしていただけますと幸いです!