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【運営ログ】高校生とVR上でイベントを行って感じた、帰属意識の重要性

皆さんはじめまして。インパクトラボ所属 バーチャル探究学者のLuminと申します。

この度、立命館守山高校の生徒有志(発起人:NAYUさん)による、MLGsをテーマとした「VIWAKO Pitch 2022」の運営協力を行いました。

本イベントは昨年実施した「びわ湖ピッチ」において、最優秀賞を受賞したカラフル「グローバドール」の考えを一つのベースとし、実際にVRで今回のような学びの場を開くと、どのようなことが可能か、高校生自身が体験しながら、検証することを目的としました。

イベントレポートは、下記MLGs公式サイトにて公開されています。

こちらのnoteでは、イベント当日、またアンケートで得られた回答から、現実の既存コミュニティでVRを使用した活動の可能性を、インパクトラボの視点で探っていきます。

帰るべき場所としての現実コミュニティの価値

「今、私達は現実で集まれているから、ここを中心に、みんなでいろんなVRの場所や集まりにつながっていきたい。」

という意見を高校生から頂きました。


既に構築されている現実のコミュニティは、VR上での如何に関わらず、継続することが可能です。

そのため、VR上コミュニティからの一部撤退、個人間トラブルがあった際の帰るべき場所が確保され、心理的安全性を保ちながら、VRに入り込むことができます。


現在、私が現在参加している私立VRC学園というイベントでも「本学園を通じて、帰ってこられるコミュニティを作り、そこから各々がVRの世界に羽ばたいてほしい」というコンセプトがあると伺っております。

実際、VR SNSを3年以上使われている方々と、以前意見交換したところ、

「VR SNSでは友人・知人とで閉鎖的になりやすい。それゆえ、個別のコミュニケーションを丁寧に行わないと、現実より簡単に崩れてしまう関係性がある。その結果、自分が所属するVR上コミュニティから除去され、VR SNSをやめざるを得なかった人を何人もみてきた。」

というご意見をいただきました。


このようなトラブルや問題があった際に、自身が帰ってくる場所としてのホームインフラ制度は、個人レベルでは私立VRC学園のような、VRコミュニティの中で醸成されることが大切です。

一方、本企画のように、母体となる現実コミュニティが存在する場合は、これをVR上のホームインフラの代替として機能することで、複数人がそれぞれVRに進出しやすくなるとも強く感じました。


一方、現実でコミュニティ構築している高校生たちが、バーチャルでも同様なものを作れるかということも検証してみました。

すると「顔が見えないので、相手がどのようなことを考えているかわかりにくい」「アバターの声が想像と違ったり、年齢が離れていたりして怖い」といった声を伺うことができ、現実世界でコミュニティ構築がうまい高校生でも、VR上では単純に同じように構築することは難しいと考えさせられる機会にもなりました。


このようなVRSNSの特徴を踏まえると、VRを楽しむためのコミュニティ構築は、先天的なもの(現実→仮想空間)と後天的なもの(仮想空間→Twitterのようなインターネット)、それぞれにおいて検討の余地があります。

今後、特に地方コミュニティへのVR導入における懸念事項として、このようなVR空間に最適化したコミュニティ醸成、及び帰属意識について、その重要度を知ることができました。

VRで現実世界の人を集客することは難しい

余談ですが、今回の現実のコミュニティを母体として、VRを活用する意見は、現実のコミュニティでのVRの活用事例として面白い視点でした。

なぜなら、既存コミュニティや地方でVRを活用しようとする方々は「自分たちのコミュニティへのアクセスを増やすためにVRを活用しよう」という文脈で話をされる方が多いためです。

VR原住民の方から遠ざけられる、ビジネスメタバースな方々(メタバース・Web3.0に傾倒し、その上、自分たちではHMDをかぶったことがない、NFTを所有したこともない、暗号資産を所有したこともない人々)が、こういう文脈でspaceやclubhouseなんかで話してたりします。

このような目的に応じた話は既存コミュニティが強力、もしくは都会をVRに落とし込んだからできた事例ばかりで、一般のコミュニティ・地域では達成するには相当の努力・戦略が必要、もしくは実現不可能と思います。

もちろん、VRを日常的に活用されている方に向けて、集客を行う場合はVRに最適化した広報手段、イベント構築を行うことで、ある程度の集客を見込むことは可能です。

しかし、このような話題を話す際に使われる常套手段である「メタバースであれば、どんな人でも来ることができる」妄想は現状(2022年2月現在)は不可能です。


まず、VRに慣れ親しんでいる方以外に向けたイベントを検討する場合は「イベント日程より前の日程で、事前体験会を設定すること」がほぼ必須です。

これはHMDだけに限らず、スマホ、PCを使ったVR SNSでも変わりません。

これは以前弊社で参加した、VRChat企業・自治体ワールド見学体験ツアー、及び今回の企画開催、双方で体感しました。

事前体験を行ったとしても、「長時間HMDを使うことは辛い」「酔いやすい」「機械への苦手意識が否めない」「回線が遅くて使えない」など、利用すること自体に抵抗感がある方もいます。

VRを世間一般の人、さしてや地方の人に向けた広報活動とするためには、まだまだ絶頂のタイミングとはいえないものの、ナレッジの仕込む時期としては、非常にいいタイミングとも考えられます。

最後に

今後様々な地域、特に地方では東京や世界との隔絶を避けるため、その格差を是正するためにと、VRを活用したイベントや活動を検討されていくことでしょう。

しかし、ユーザ目線に立たない、施策ベースの活用はVRにおいてはかなりの確率でコケやすいと考えております。これは弊社自身、肝に命じるとともに、今後現実のコミュニティ・地域でVRを活用される方にも考えていただきたいポイントです。このポイントこそ、現実コミュニティにおいて、VRが新たな価値創出につながると我々は考えております。


今回のイベントを開催するにあたって、VRChatにてイベントを開催されている方々、clusterでイベントを開催されている方々、イベント参加者の皆様の多大なるご支援、そしてなにより主催の高校生の皆さんの尽力あって、今回の企画の実現に繋がりました。

書面ではありますが、インパクトラボを代表してここに感謝申し上げます。


また、clusterでは法人によるイベントの開催、ワールドの公開は必ず相談を行う必要があるとされています。

今回のような生徒が主体となった個人プロジェクトでのワールド公開・イベント開催している活動は問題ないようですが、法人がclusterを利用する事は難しいとのことですので、お気をつけください。



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