しがCO₂ネットゼロ次世代ワークショップ|DAY2
こんにちは。インパクトラボの窪園です。
8月10日に滋賀県東近江市にて、しがCO₂ネットゼロ次世代ワークショップのDAY2が行われました。本noteでは一件関係ないように感じる農業とCO₂ネットゼロの関係を解き明かしつつ、滋賀で生きる皆さんの取組を紹介します。
環境にやさしい農業、持続可能な農業をする
はじめに、福永久嗣さんが運営する福永梨園へ伺いました。福永さんが農業を始めてから38年間。現在は24品種の梨の他、さくらんぼなどを育てています。
梨園がなくなることとCO₂ネットゼロの関係性
福永さんが愛東町で農業を始めて38年、幾つか変化があったと言います。
その一つが異常気象です。収穫時期が変化し、年々予測が難しくなってきたことが原因で、ベテランの人であっても、農業の継続意思をそいでしまうことに繋がっているとのことです。実際にかつて75件あった梨園は、35件にまで減少しました。
「農家が何年もかけて育ててきた梨園に終止符を打つのは心苦しい上に、経済的な損失も大きい。」
このように、自然の力を利用する農業だからこそ、気候変動の影響を大きく受けてしまいます。このような気候変動に立ち向かうためには柔軟な考え方ができるプレイヤーが必須です。
そこで、梨園を継承する人を増やすための取組も始まりつつあるとのことでした。特に最近は、女性で果樹園の新規就農者が多いと言います。農業大学に通うことによって国から2割、県から6割の補助金を受けられる支援の体制も整えられています。
また現在、福永さんの梨園では八日市南高校の高校生が手伝いに来ていらっしゃいます。他にも環境学習として年間約200人の受け入れを行っており、そのうち半数は小学生です。農業は社会を支える基盤的な産業です。
農業の重要性や困難性を学ぶと同時に、その中にある楽しさを多くの人、特に次世代を支える若者にまず知ってもらうことが、なり手不足解消、ひいては地域でCO₂を固定化する果樹園を支える第一歩になると感じました。
土壌から考えるCO₂ネットゼロ
福永梨園では果樹を育てるにあたり、土壌づくりに非常に重点をおいていらっしゃいました。福永さんの梨園では日野町のリサイクル業者の野菜屑と街路樹の剪定枝を原料とした有機肥料を利用しています。また今後、梨園で出る梨の剪定枝も肥料化して梨園で循環する仕組みも考えておられるそうです。
有機肥料の利用は、土壌中への過度な窒素供与体の排出を防ぎます。、化学肥料と比べ一酸化二窒素(N₂O)という温室効果ガスの排出削減に繋がり、温暖化防止を防ぐ方法の一つと言えます。
また、化学肥料は多くの熱(エネルギー)を使って作られる肥料であり、肥料の製造過程から考えてもCO₂ネットゼロの貢献に繋がっていることが明らかです。
さらに化学肥料を利用する場合に比べて、有機肥料の利用においては果物の糖度が高くなる傾向にあるとのこと。CO₂削減だけでなく、味も良くなるそうです。
しかし、利便性の問題からか、それらを使用する農家が十分にいないのが現状です。単純に「有機農業だから使う」のではなく、上記のような利点を伝えていき、意味を感じながら使ってもらうことが大切だと感じました。
NPO法人 愛のまちエコ倶楽部の取組を知る
昼からは、あいとうエコプラザ菜の花館でNPO法人 愛のまちエコ倶楽部の主な取組について、レクチャーを受けました。
レクチャーでは伊藤真也さんにお話頂き、NPO法人愛のまちエコ倶楽部での活動について、「これらのローカルプロジェクトを通して、Food, Energy, Careで自立した地域を作っていきたい」と語っていただけました。
NPO法人 愛のまちエコ倶楽部は2005年から東近江市(旧愛東町)を拠点に活動を開始しました。正職員が6人のうち地元スタッフが1人で、多様なバックグランドを持つメンバーで構成されています。地域における課題をどう解決するか、どのようにビジネスに繋げるかという視点で、ローカルプロジェクトと称して様々な活動を行なっています。
その中でも特に、前述した農業×CO₂ネットゼロの文脈で事業を行われている事例を紹介します。
民泊・農泊のコーディネート
昨今、滋賀県だけでなく、農山漁村地域に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」、通称「農泊」が日本人のみならず、インバウンドの方々含め、非常に興味を持たれています。
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/nouhaku_top.html
その中でも特に「暮らしの体験」を行いたい人が多くいらっしゃるとのことです。もちろん現在の文明化された社会の中で生きているため、大正・昭和の昔ながらの電気エネルギーを利用しない生活というわけではありませんが、「自然の知恵」を存分に活かした生活様式に心引かれている方が非常に多いとのことです。
2019年時点では民泊・農泊利用者数が1449人で、民泊・農泊協力家庭が49軒です。伊藤さんは「農業に関わる人はいろいろな顔がある」として、これから先、自身が農家として過ごすだけではなく、関係人口として係わる事、農家が行う「自然の知恵」を活かした、省エネな生活様式を取り入れることに繋がる可能性があります。
新規就農・移住支援
これまで就農成立は10件、移住成立は16件を支援してきたとのことですが、この数字は決して単純なものではありません。中には熱意がありつつも農業や暮らしに対する理想と現実の差異を感じ、途中で断念する人もいるようです。そのような事例を解消するため、いくつかの取組があります。その一つが「なこーど」です。
これは県の農村振興課や市の農業水産課、JA、道の駅、NPO法人などで構成される団体で、「農業を始めたい」、「農地を引き継ぎたい」といった就農者支援をチームで行うというものです。チームで行うことにより、就農者が安心感を得られることや情報集約が効率的になることなどのメリットが挙げられます。
もう一つの取組として「だれんち?」があります。だれんち?は空き家をリノベーションした施設で、コミュニティースペースやゲストハウス、生業づくりなどの役割を担っています。伊藤さんは「移住者や新規就農者などと地域をつなぐことを目的としていて、ただの知り合いレベルではなく、〇〇さんと呼べるレベルまでにすることを目指している。」と熱く語りました。
私たちがこの地域における取組アイデアを考える上で、CO₂の排出量削減を促進することはもちろんのこと、地域社会全体の持続可能性につながるような仕組みも考えていく必要性を強く感じました。
アイデアワークショップ
初めにDAY1とDAY2のワークショップを振り返り、参加者は自身の学びや気づき、疑問点を付箋に書き、整理しました。ファシリテーターを務める田口さんは頭を悩ませる参加者に対し、「右脳も使うために、図や絵などを描いて頭を整理してみてください。」とアドバイスをしました。参加者はアイデアの構想やこれまでの学びを絵で表現し、そこから新たな着眼点を得て議論を活発化させていました。
その後、参加者は自分自身が取り組みたいテーマについて47字でまとめ、発表しました。47字はTwitterのツイート文字制限数の3分の1で、田口さんのユニークな文字数の設定に対して、参加者は楽しみながら自身のテーマをわかりやすくまとめていました。
参加者が考えたテーマの内容は、地域の農作物の価値を向上させて地産地消を促進すること、フードロス問題と絡めた有機農業を行い、地域内循環を推進することなどです。これらのテーマをもとに、類似の関心を持つ参加者を集めた三つのグループを作りました。
参加者は次回に向けてテーマをさらに追究するために先行事例を調べる宿題を課されています。最終回の成果報告会ではCO₂排出量削減を促進するためのより具体的で実践的なアイデアが発表されることを期待したいと思います。
協力していただいた方々、ありがとうございました!
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