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母が思い出になる日

夏が暑すぎて、
秋が待ち遠しいとは思っていたけど、
冬になるのは怖かった。
次は2月になるのが怖い。

昨年の2月、
私とモモちゃんは母を亡くした。
高齢だったので私は覚悟していたけど、
入院すらせずに突然亡くなったので、
衝撃は大きかった。

その時点では
ちょっと不自然なくらい
おとなしく、いい子で過ごしていたモモちゃんは、
母の亡くなった「12:30」を
妙に意識して、騒ぐようになった。
母の亡くなった「金曜日」も
妙に意識して、暴れるようになった。

あれからずいぶん経って、
「12:30」も「金曜日」も、
何度も何度もあったから、
ほとんど意識しなくなったけれど、
「2月」はまだ1回しか訪れていない。

そして、
今年の「2月」のモモちゃんは、ヒドかった…
毎日のようにモノを投げていたかも…

私の仕事は11月から1月にピークを迎えるので、
2月にはマシになっていたのが幸いだったけど、
夜となく昼となく泣いたり騒いだり、
落ち着かないモモちゃんの対応に、
ずっと追われていたような気がする。

次の「2月」は2回目。
どうなるんだろう。

そんなことを考えていたら昨日、
モモちゃんがダイニングにやってきて、
不思議なことを言った。

「お母さんの写真、へんな顔してた」

母の遺影は飾ってあるものの、
モモちゃんにはたぶん見えていない。
話の内容からしても、
遺影のことではなさそうだった。

「お母さんの写真、へんな顔してた」

モモちゃんはもう一度言ったけど、
悲しそうというよりも、
懐かしそうな表情だった。

そして今日、
またまたモモちゃんがやってきて言った。

「お母さん、また会いたいね」

私はドキッとしたけど、
「そうね」と言った。

モモちゃんの雰囲気は、
母を失って激しく傷ついていたときよりも、
少しやわらいで、
「また広島に行きたいね」
と言うときに似ていた。

少し前になるけど、
モモちゃんが突然、
「広島のおうちは、もうないのよ」と言ったのを聞いて、
びっくりしたことがある。

モモちゃんが2年前まで住んでいた実家の建物は、
別の建物に立て替えられたので、
確かにもう、ない。
でもそれをモモちゃんに言ったことはないし、
私以外にも、言った人はいないはず。
モモちゃんはいったい、何を感じ取ったんだろう。

住んでいた家には帰れない。
母も思い出のなかにしか、いない。

それをいつかモモちゃんも
「思い出」にできるんだろうか?

この冬を、無事に越したい…

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