「しょうがい」いもうと By ET◎

私と暮らすモモちゃんは、じぶんが「知的障害者」にカテゴライズされているなんて、ちっとも…

「しょうがい」いもうと By ET◎

私と暮らすモモちゃんは、じぶんが「知的障害者」にカテゴライズされているなんて、ちっとも知らない。

最近の記事

「もう、もう、イヤダーーーッ」と叫んだ日

実家の3人が広島に引っ越してしまってから、 母とモモちゃんがうちに引っ越してくるまでの 約15年間は、 私にとって、 薄ぐら~い闇の日々だった。 子育てをしながら仕事をするのも、 すごくキツかったし、 その間をぬって、 広島にいる3人の様子をみにいく必要もあった。 子どもたちのおばあちゃんとして、 活躍してくれていたハルコさんは、 子育てサポートのポジションから、 介護される側へと変貌していった。 2011年、 私はパソコンにかじりつき、 資料を片手にワードと格闘していた

    • 同じ音のなかで育ち、まったく別の道をゆく

      モモちゃんが聴きたがったり、 カラオケで歌いたがる曲を、 私はたいてい知っている。 私たちの子ども時代には、 「みんなが知っている曲や番組」がたくさんあった。 モモちゃんが「ババンババンバンバン!」と言えば 私は絶対に「アビバノンノン!」と返せるし、 ピンク・レディーのイントロクイズなんて、 たぶん今でもできるんじゃないかなあ。 当時のベストテン番組の第1位は、 ふたりとも、たいてい歌えると思う。 私の子どもたちが子どもだったころ、 うちのテレビで音楽番組が、 流れてい

      • じどうはんばいき、買ったの!

        ここ数日、 モモちゃんと私は、 ギリギリの交渉を繰り返してきた。 モモちゃん「自動販売機のふろく、買ってください」 私「ふろくの付いた本は、 いつもたくさん買っているでしょう。 もう、お金がないのよ」 モモちゃん「自動販売機のふろくう~!」 私「でも、その雑誌だけじゃなくて、ほかのも欲しくなるでしょ?」 モモちゃん「自動販売機のふろくだけで、いいです」 私「ホンマかいな?」 最近の子ども雑誌には、 豪華なふろくが付いている。 公衆電話のふろくは、 新聞にも載るほどの話題に

        • ああ、遠くに来ちゃったんだなあ

          「なんね、これは… どこからどこまでが布団で、 いったい誰がどこにおるんね?」 2011年3月、 テレビが東日本大震災のニュース一色だったころ、 私は介護の真っただ中にいた。 家族くんのお母さんであるハルコさんが、 道で転び、頭と足にケガをした。 私がハルコさんのベッドのすぐそばに布団を敷き、 しばらく寝泊りしていたら、 次男くんがやってきて、 一緒に寝るというので、布団を増やした。 そこに私の母が広島からやってきて、 ガラッと戸を開けたら、 私と次男くんが布団の海の中で

        「もう、もう、イヤダーーーッ」と叫んだ日

          マイナスワード蟻地獄から、はいあがるで

          モモちゃんのキゲンは まだまだ安定しているとはいえないけど、 ちょっとずつ、 マシになっていると思う。 モモちゃんのキゲンを安定させるために、 私がずっとしてきたのは、 「野菜を食べさせること」と 「マイナスワードを減らすこと」だった。 野菜は意外なほどうまくいって、 いっぱい食べている。 マイナスワードを減らすほうが、たいへん。 モモちゃん「子ども番組、見なかった!」 私「モモちゃん、寝ていたからねえ。何度も起こしたんだけど」 モモちゃん「シッパイした」 私「がっかりし

          マイナスワード蟻地獄から、はいあがるで

          里中さんコンプレックス

          「里中さん、痛いのないから」 「里中さん、水かけしたら注射するのよ」 「里中さん、ホットケーキ、いたしません」 起きてからずっと、 モモちゃんは「里中さん」を連呼している。 「里中さん」は モモちゃんの支援のために訪問してもらっている 40代くらいの女性のヘルパーさんで、 モモちゃんの中でとくに 「里中さん」がブームというわけじゃない。 あれこれ言うだけ言って、結局は、 「里中さん、11月、退職してください」 という方向に話が進んでいく。 モモちゃんと暮らすようになって

          よもぎ大福、こんにちわ

          モモちゃんの話す言葉は、 どうして私たちと揃わないのだろうか。 一緒に暮らしていて、 ものすごく大きい謎だ。 言葉以外に、うまくいっていないこと… たとえばモモちゃんに料理ができないのは、わかる。 料理だと、 「オムライスを作るには、何がどれだけ必要で、 こんな道具を使い、こういう順番で…」などと、 考えることやすることが、 すごく複雑に絡み合っていて、 正直、私にも難しい。 料理をしている人のそばで、 マネをしたからといって、 同じような料理を作るなんて、とてもできそうに

          キライと言うのも、一苦労だった

          子どものころから、 好きなものは「好き」 キライなものは「キライ」と言えていたか、 あんまり自信がない。 親はモモちゃん育てで精一杯だったから、 「好きキライ」を言うときは、 親の都合まで考えていたように思う。 「モモちゃんがいいなら、私もそっちでいい」 ってなってしまう。 もともと「姉」にはそういう傾向があるのかもしれない。 そのうえ モモちゃんは「好きキライ」を譲らなかったので、 私のほうが譲るようにしていたように思う。 それがイヤだったというよりも、そのほうがラクだっ

          キライと言うのも、一苦労だった

          ホンネは世間話に潜んでいる

          決算→年末→年度末に突入し、 私は昨晩、久しぶりに、 深夜1:30までパソコンにかじりついていた。 モモちゃんが眠っていたので、 「今のうち」と思ったのも大きい。 仕事が、はかどった。 朝5時半ごろになると、 階下からモモちゃんの声が響いてくる。 モモちゃん「今日は、大きいコロッケよ!」 家族くん「うん」 モモちゃん「いちご大福、の、猫背、で、す!」 家族くん「ええっ」 モモちゃん「飼い犬のお兄さんって、何なの?」 家族くん「う、うーーーん」 早く起きないと、 モモち

          ホンネは世間話に潜んでいる

          お墓が、ただの石に見える

          私はお墓参りに、あまり行きたいと思えない。 うちからケンケンで行ける距離だし、 「行こう」と言われたら行くけど、 行かないですむなら、行きたくない。 結婚してから、 家族くんの家に同居するようになって、 お墓に行っても、 眠っているのは家族くんの祖先だけ、 というのも一因かなと思っていたけど、 どうもスッキリしない。 家族くんの祖先の眠るお墓に行くと、 私は数珠を手に、 目をつぶって、こう祈る。 「私はまったく信心深くないので、 守ってもらわなくていいです。 私以外の

          お墓が、ただの石に見える

          怒るより大事なことがあると信じたい

          「イヤーーーーーーッ」 「今日のお昼ご飯、百人一首がいいの!!!」 モモちゃんの絶叫に 目が覚めたら4:30だった。 夜中? 明け方? どちらにしても、 まだ大半の人が眠っている時間だと思う。 モモちゃんがうちに引っ越してきて、 夜中に騒ぐのを聞いてから、 私は「夜中に騒ぐと警察が来る」と モモちゃんを怒り続けてきた。 ほかのことはできるだけ怒らないようにして、 「これだけは怒る」と印象づけてきた。 でも、 今朝はなんだか、 もう、どうでもいいような気がした。 階下に

          怒るより大事なことがあると信じたい

          どうやって、ここまで来たの

          雅子さまと私は同じような世代で、 結婚年齢も、わりと近い。 …それ以外は何もかもちがうけど、 それでもやっぱり同世代だと、 「悩んでるだろうなあ」「つらいだろうな」などと、 胸が痛むことも多かった。 稽留流産の記事が新聞に掲載されたのは、 1999年だった。 このときもやっぱり、 「つらいだろうな」と、胸が痛んだ。 私自身も、 そろそろ次の子どもがほしいと思っていたから、 本当に、胸が痛んだ。 「そろそろ」と言いながら、 私の仕事はそのころ山積みで、 長男くんの子育てと

          どうやって、ここまで来たの

          いざというとき、相性とか言ってらんない

          私がモモちゃんの お世話をするようになってから、 10人以上のヘルパーさんに、 支援を頼んできた。 想定通りだったけれど、 最初はなかなか、うまくいかなかった。 広島で暮らしていたころには、 ヘルパーさんに「帰れ」と叫んだり、 叩いたりしていたんだもん、 急に変わるなんて無理やろなと 思ってはいた。 最初のうちはまわりの人に、 「こういうのは相性があるから」と言われ、 「そういうもんかなー」と、 ぼんやり納得していた。 でも途中から、 「そんなこと、言ってらんない」と、

          いざというとき、相性とか言ってらんない

          紙に書くという「やくそく」

          「どうして自分の名前が書けないんだろう」 ここ数年、 実家でモモちゃんの様子を見ていて、 私は疑問に思っていた。 モモちゃんは小中高と、 いろいろありながらも通うことができていた。 専門学校にも通った。 その間、 きっと自分の名前をたくさん書いていたはず。 広島にいたころは、 ほとんど目が見えていないとは知らなかったので、 日ごろからエンピツを握っていないと、 書けなくなるのかなとしか思っていなかった。 そういえば家族くんのお母さんでも、 私の父でも、 老齢になって介護

          紙に書くという「やくそく」

          「心の中で言ってごらん」「いーえ、口で言って!」

          モモちゃんは、 親しい人から言われたことを そのままコピーしてしまうことがある。 ドラマやアニメのセリフを 真似しているときは、 ただのセリフなので、 スルーできるけど、 母や先生から言われた言葉には、 感情がこもっていて、 いい意味でも悪い意味でも、 スルーしにくい。 「チョコレート、買ってあげるから」 何かイヤなことがあると、 モモちゃんは、 腹いせのように、何度もそう叫ぶ。 たぶん母は、 「歯医者さんに行こう」とか「美容院に行こう」とか、 モモちゃんが苦手なところ

          「心の中で言ってごらん」「いーえ、口で言って!」

          日本ではいつから、政治を政治家に丸投げするようになったんだろう

          長男くんが小学校低学年のころ、 よく熱を出して、学校を休んでいた。 そんなとき、 ヒマでヒマで仕方のない長男くんは、 私にいろんな質問をした。 そのうちの2つを、今も覚えている。 「どうして、学校に行かなきゃいけないの」 私は「来た。きいてくると思ってた」と身構えた。 そしてその少し前に仕入れた言い方で、説明した。 「子どもが、学校に行かなきゃいけないんじゃないんだよ。 親が子どもを、 学校に行かせなきゃいけないって決まっているの」 「日本に住んでいると、そうすること

          日本ではいつから、政治を政治家に丸投げするようになったんだろう