キャラをサイコパスにしがちな人にありがちなこと
物語から整合性を抜いた時の話をしよう。
タイトルは設定上のそれではなく
作者が無自覚にキャラクターを「ゴミくず化」してしまう現象のことだ。
素人だろうとプロだろうとやるときはやってしまう。
そんな現象を今日は紹介していく。
初めに悪い例を持ってきて話を進めよう。
ニセコイ キムチ事件
~ニセコイ キムチ事件とは~
ヒロインが主人公に「キスしてもいい?」と意を決して告白したところを
偶然別のヒロインが盗み聞きしてしまう。しかしあろうことか
「キムチでもいい?」と聞き間違えてしまった。
主人公は好きなヒロインの隣で寝ていてキスのくだりは聞いてない
ここで言う整合性がわかるだろうか?
「キスしてもいい?をキムチでもいい?なんて聞き間違えるわけないだろ」というところではない。
ヒロインがゴリラ並みの知能だとそういうこともあるかもしれないからだ。
このシーンの整合性ポイントはそこではなく、
好きなヒロインと一緒にいるのに主人公が寝落ちしてしまう点
案の定読者からは「好きな人といて寝落ちはないでしょ」
「海辺で寝るとか危険すぎる」などびしばし叩かれていた。
以降このニセコイという漫画はラブコメの反面教師として語られることとなり、人気は下り坂、最後には伝説となった。
この主人公は1話でも
自分の大切にしているペンダントを指でくるくる回して紛失している。
大切なものなのにそんな適当な扱いするか?
という矛盾の片鱗は1話目にして出てきていたわけだ。
もちろん作品の〆も「良いヤクザとして街を守っていく」という特大矛盾をかまして完結。
他にもまとめ出すと「なぜそうなる?」みたいな展開はたくさんあるが、ニセコイを叩く記事ではないのでこのへんにしておこう。
以下は特徴を書いていこうと思う。
全ての特徴に共通することはキャラクターが悪いことをしている自覚がない、まさしくサイコパス思考だということだ。
特徴1.リスクがあると思っていない
今放送中の幼なじみが絶対に負けないラブコメというアニメでは、
主人公があくどいお偉いさんにワインをぶっかけるというシーンがあった。
物語的には「ヒロインのために主人公が男を見せる」というような意図があったはずだが、一介の高校生がお偉いさんにワインぶっかけて、特にお咎めもなく、そのあと何事もなかったのように話が進む。
ここで言う整合性はお偉いさんにワインをぶっかけたことではない。
カッとなって水をぶっかけたりするシーンはドラマじゃよく見かけるし、
宣戦布告という意味でシーン映えするものだ。
で、その後「やべー、とんでもない人に喧嘩売っちゃったよ」みたいになるはずだが、この後主人公は特に焦った様子もなく、他のヒロインのフォローによって事なきを得ている。
こういったリスクを顧みない行動はサイコパスに見られがちだ。
普段から粗暴が悪いキャラが退学覚悟でワインをかけたという体ならシーンの見栄えがまるで違ったのだが、これでは※無敵の人になる。
(※失うものがないので平気で犯罪が出来る人のこと)
カッコいいシーンを作るなら主人公の行動にはリスクをつけるべきだ。
特徴2.非常識に対してのフォローがない
ヒロインが味見をせずに主人公にメシマズ料理を食べさせるなんて展開があったとしよう。
なぜか「一生懸命作った」という事だけで許されてしまう行為だが、
描写のやり方によっては酷い拷問に見えることもある。
(暴力ヒロイン然り)
そもそも作った失敗料理を全部捨ててしまうなんてことをやらせる作者もいるから驚きだ。
そこで許されるかどうかは見る人のモラルによるが、
「もったいないから失敗作も全部食べる」という展開にしておけば、
それが食材を無駄にした罰にもなるし、展開として見栄えがいい。
なのにそのフォローを怠ってしまう。
特徴3.設定に引っ張られた矛盾
子供が大人に偉そうにしたり、敬語を使わなかったりする作品は多い。
格好よくクールなキャラにしたいがためにそういう風にするわけだが、
挙句には上の画像のようにどうしても敬語使わせたくない作者が
「冒険者は敬語を使わない」なんてトンデモ理論を生み出してしまう。
そもそも敬語を使わないことが問題なのではない。
最初から「無礼なキャラ、荒くれもの、育ちが悪い」にしておけばいいという話なのに、どうしてもクールキャラにしたくて、敬語を使わなくてもいいなんて世界の常識を変えようとするからおかしくなる。
これは設定に引っ張られた矛盾だ。
この設定に引っ張られるという現象はシナリオを書いたことがある人なら誰しもが経験したことのあるものだと思う。
ニセコイの「ヒロインの前で寝落ちする」というのも、キスというイベントを先送りにするために起きた矛盾なのだ。
やりたいことのために整合性を無視するとキャラクターは簡単にサイコパスになる。
まとめ4.物語上では許されないこと
リアルなら「焦げだらけのものを食べたら身体に悪い」で正当化出来るが、二次元は焦げついたものを食べたって人体に影響を及ばさないので、ヒロインが気合で味見したほうがシーンとしてキレイだ。
そのほうが一生懸命さも表現できる。
リアルで「一目惚れ」は許されても創作で
「いつの間にか好きになっていた」は納得されないことが多い。それではキャラクターの行動原理が弱くなってしまう。
「幼少期に約束したことを忘れている」という設定に対して、いや昔のことなんて普通忘れてるだろ? という意見でフォローできない。
物語で言う約束は特別なもので覚えているのが普通なのだ。
「子供だから言動が幼稚なのは仕方ない」というのもリアルを基準にした考え方だ。見ていてイライラするような作りをエンタメとは言えない。
こういったリアルでは許される整合性が
ストーリーに起こすと途端に適用されない例は大量に出てくる。
どれぐらいの矛盾が許されるのか?
結論として、整合性は作者の人格が反映されやすい。
=作品に対する信頼感でもある
冒頭で食べ物を粗末にするキャラクターなんて出されたら、作品に不信感をいだき、以降なにか面白い展開があったとしても素直に楽しめないなんてこともある。
必ず整合性を保たなければいけないということは決してないが、
信頼を得るために最も注意しておきたい点であることもわかるだろう。
ニセコイ作者が人格まで叩かれだしたことで話題になったことがあったが、それぐらい人は矛盾に厳しい。
またもう一つの注意点として、リアルでは良くても物語では適用されない整合性があることも憶えておきたい。
ストーリーは現実よりもよっぽどモラリストだよ。
来週「ヒロイン力が高いを解説する」
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