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表コミ授業日記⑥ パリンとピリン。
こんにちは、いもいも表コミの古谷(あき)です。
表コミ授業日記⑥。前回に引き続き「聴覚」を使ったワークの話です。
違う音は誰!?
今回行ったのは、「音を言葉にする」がテーマのワーク。
ひとりひとりヘッドフォンで効果音を聴くのですが、ひとりだけ違う音になっています。誰が違う音だったのか、みんなで話し合って当てるワークです。
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「ひとりだけ違う音」と言っても、たとえば「水音」と「ノックの音」のような全然違う音ではありません。
例えばこちらのサイトの、「木のドアをノック1」と「鉄のドアをノック1」。ぜひ聞いてみてください。
「コンコンっていうノックみたいな音だった」
「私もノックだった」
「ゴンゴンって感じ」
「ゴンゴンではない気がするなぁ」
「なんかガラスのドアをノックした感じ」
「うーんガラスっていえばガラスかも…」
だいたいこんな会話になります(笑)
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音をなんとかして言葉で表現しなければ伝えられないのですが、感じ方も表現も人それぞれ。同じ音のことを言っているのに食い違うこともあれば、違う音のことを言っているのに通じ合ってしまうこともあれば。
客観的な表現は不可能なので、賢くやれば必ず正解できるってものでもありません。
でも、僕たちのコミュニケーションって実はそんなもんですよね。伝わっているつもりでも、実はニュアンスまで共有できていることの方が少なかったりします。
このワークも、ある種伝わらないことは前提です。その上で、なんとか音を表現するための試行錯誤に出る個性が面白い。
答え合わせで二つの音を聞いてみると、なるほど相手の言っていたことがよくわかったり、逆に感覚の違いに驚いたり。
ひとそれぞれ全然違うこと。
だからこそ、なにかを共有できたらとてもうれしいこと。
そんなコミュニケーションの本質が詰まっている……なんて言ったら、ちょっと言い過ぎでしょうか(笑)
パリンじゃなくてピリン。
そんな難しいワークなんですが、やってみて驚きだったのが、開発段階で大人と高校生とでやってみたときより、小学生同士でやった時の方が断然正答率が高かったことでした。
大人からみたら「そんなんで伝わるの?」と思ってしまうようなやりとりで、誰が違う音を聞いていたのか、あっという間にあぶり出します。
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最後にやったのは、「金属バットで打つ2」と「グラスを合わせる」。
ぜひ聞いてみてください。この2つの違い、言葉のやりとりだけで判別できますか?
高校生と一緒にやってみていたときには「無理じゃないか」という意見も出たのですが、ここまでの小学生がすごすぎたので、ちょっとやってみました。
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話し合って最初に出てきたのは、
「野球でボールを打ったときの音」
「アニメとかで野球してて、ボールが家に飛び込んでガラスが割れた時の音」
という2つ。
バットの音とガラスの音なので、まさに!なのですが、3対1になるはずが2対2になってしまいました。
「キーン」「パリン」とそれぞれ擬音表現もしてみるものの、やはり2対2のまま。
子どもたちの希望で、もう一度聞いてみることに。
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聞いてみた後も、しばらくはやはり2対2の平行線だったのですが……ある子のひと言で急に動き出します。
「パリンじゃなくてピリンだった。」
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(一文字変わったところで……)って思いますよね。私も思いました(笑)
でも、子どもたちの間では決定的なひと言だったようです。この言葉が出た途端、「パリン2人キーン2人」だったのが、「ピリン3人キーン1人」に!
そしてこれが大正解でした!!
小学生の間には、私たちとは違う回路のコミュニケーションがあるのかもしれません。
大人になるにつれて、僕たちはより客観的な表現を身につけていきますよね。でもこのワークは、いかに主観を表現するか、そしてそのニュアンスをいかに汲み取るか。
もしかすると、我々は客観的な視点の獲得とともに、そんな力は失っているのかもしれませんね。
ワーク誕生のきっかけは…
ワーク誕生のきっかけは、別の聴覚ワーク中のある小学生の言葉でした。
やっていたのは、「耳で神経衰弱」。めくると音が出る(という設定の)カードで行う神経衰弱です。同じ音の出るカードを探します。
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似たような音も混ざっている中、どのカードがどの音なのか、覚えなければなりません。
ある子が始めたのが、「あそこは金属バット」「あそこは水音」「あそこはこもった水音」というように、音に名前をつけてその名前で覚えるという方法でした。
数字の羅列より語呂合わせの方が覚えやすいように、漠然と音で覚えるより、名前づけをした方が覚えやすい。実に理に適っていますよね。素晴らしい工夫を見つけたなぁと感動しました。
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そしてその名付けが、どれも絶妙なんです。名前を聞くとバッチリ音が呼び起こされる感じ。授業終了後、スタッフ間で「音の名付け」の面白さについて話していて、そこからできたのが今回のワークでした。
ワークの中で、想定しなかった面白さを子ども達が見つけてくれるのは、とてもワクワクする瞬間のひとつです。
このワークができたのは、土曜小学生クラスのH君のおかげ。感謝しています。
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