
チャム族店主が伝える本格マトンカレー(ヤギ)
初訪 2016.05 更新 2022.04.28
ベトナムのカレーといえば、ココナッツミルクの甘い香りが印象的な、マイルドなカレー「カリー(Ca Ri)」。
ですが今回調べる中で、華僑がアレンジした鶏出汁の中華系カリーや、インド文化の流れを汲むチャム族のスパイスカレーなど、さまざまな文化が混じりあうカレーがあることを知りました。
ということで今回は、ホーチミン市内で食べられる
「チャム族のマトンカレー(インド風)」をご紹介。
少数民族チャム族の文化を知って味わうカレーは、いつもとは一味違う食体験になってくれるかもしれません。
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ではまず、チャム族とはいったいどんな民族でしょうか。
チャム族とは
「チャム族(Nguoi Cham)」は、ベトナムに暮らす少数民族の一つ。
ベトナム中部で2〜17世紀まで栄えた、チャンパ王国の末裔として知られ、現在は国内に10万人超が住んでいます。
中南部のニントゥアン(Ninh Thuan)省や、カンボジア国境に近いアンザン(An Giang)省など、居住するエリアによって仏教やイスラム教など異なる宗教・文化を持っていますが、この記事でいう“チャム族”はアンザン省のチャム。

イスラム教に則ってヒジャブを着用しています
アンザン省のチャム族は、大半がイスラム教徒のため豚肉は食べず、お祈り後に処理した鶏や牛、ヤギ肉などを食べています。
マトンカレーは羊ではなくヤギ
日本でマトンカレーといえば羊肉ですが、本場インドでマトンカレーといえばヤギ肉が一般的。今回は、インド風のヤギ肉カレーということで “マトンカレー" という表現も使用しています。https://www.news-postseven.com/archives/20160703_424827.html?DETAIL
チャム族のカレー
インド文化の影響を受けるチャム族には、伝統的に作られている名物料理があります。
それは
カレー
牛肉の煮込み「カプア(Ca Pua)」
炊き込みご飯「コムニー(Com Ni)」
など。庭にインド原産の “カレーリーフ” (La Ca Ri)の木を持つ家も多く、摘みたてを熱した油に入れて香りを移したり、ハーブやスパイスをすりつぶしたカレーペースト(Ca Ri Tuoi)をベースにカレー作りをする、伝統的な食文化が残っています。
とはいえ一方で、文明も伝わる現代では、市販のカレー粉やMSGを加えることも実際あるようです 笑 便利ですもんね。
そして、とんだカレー好きでも。カンボジア国境付近までカレーを食べに行くのはちょっと…と思われた方、ご安心を。
ホーチミン市内でも、チャム風のカレーを味わうことができます。
(チャムのカレーでもっともおいしいといわれるヤギのカレーです。)
インド人シェフを父に持つインド人であり、アンザン省出身のチャム族でもある「ムサ(Musa)」さんのお店。その名も「カリーアンドームサ(Ca Ri An Do Musa)」です。
お店の場所
お店があるのは、中華系の人が数多く暮らすホーチミン市5区。

スーヴァンハン アパート(Chung Cu Su Van Hanh)の一角にある、このゲートが目印です。
ゲートをくぐって、そのまま直進すると、

突き当たった一角にお店があります。
店内席と屋外の通路席があるので、好きな席を選びましょう。

なかなかローカル感があっていい雰囲気。
以前は、チャム族の女性が接客したりということもあったようです。
メニュー
メニューは、ヤギ肉カレー以外にも種類豊富で、基本的には大皿料理なので、グループで訪れればよりいろいろな料理をシェアして楽しめそう。
ヤギ肉料理のほか、シーフードや鍋などのベトナム料理も揃っています。

ベトナム語のメニュー名に英語も併記されているので、内容はなんとなく推測できそう。
ヤギ肉カレーは約1000円〜で、年々物価の上昇とともに、こちらも値上がりしていますが、円換算すれば許容範囲内…笑
ヤギ肉カレーの下には、バインミー(パンのみ)やコムニー。そしてヤギ料理が並びます。一番下には「半生ヤギ肉のライム和え(De Tai Chanh)」なんかもありますね。
英語の文字が小さいので部分的にベトナム語を書き出すと、
De = ヤギ
Nuong = 焼く
Xao = 炒め
Hap = 蒸し
Chanh = ライム
Gung = 生姜
の意味。
たとえば、「De Hap Gung」は「ヤギ肉の生姜蒸し」です。

ここはサラダやエビ(Tom)料理など。

ここは上の方に、歯ごたえが面白い「ヤギのおっぱい焼肉(Vu De Nuong)」や、「ヤギの心臓と腎臓のサテ炒め(Tim Cat De)」。
下段に、田ウナギ(Luon)やナイフフィッシュ(Ca Thac Lat)、エビ(Tom)の炒めものが並んでいます。
実食
いろんなメニューを載せましたが、お店の名物はやっぱりこれ。

ヤギ肉カレーです。
1人なら小サイズ(Nho)、2〜3人なら大サイズ(Lon)がちょうどいいかと思います。 ※小サイズは18万5000VND
一緒に出てくるのは、バインミーと小さなナスの副菜、そしてライム入りのチリソルト。バインミーは別料金ですが、1本あたり4000vnd(約20円)と、もう書かなくていいじゃないかぐらいの安さです 笑

好みでライムを絞り、具材をディップします

カレーは、さらっとしたベトナムのスープカレーとは違い、スパイスや香味野菜の姿を感じるとろみのあるカレー。まずはバインミーをディップして。お次は肉にかぶりつきながらいただきます。
一般的に臭みが強いと言われるヤギ肉ですが、その特有の臭みが気にならないレベルまで抑えられていることに驚き。スパイスにしっかり漬け込み臭みを消すことで、カレーの風味がしっかりと楽しめます。
(盛り付けの運にもよりますが)皮付き骨付きのヤギ肉は、コラーゲンたっぷりのムチッとした皮がメイン。なので、一般的にイメージするマトンカレーよりも “ヤギ皮カレー" に近いかもしれませんが、臭みがなくて食べやすくバインミー3本もろとも食べきってしまいました。
地元メディアで「チャム族のフレッシュカレー(Ca Ri Tuoi)を味わいたいならこの店へ -Nguoi Do Thi-」とも紹介されているこちらのお店。
お店の味は、インド人であり、チャム料理が有名な店のシェフだった父から息子である店主が引き継いだもの。サイゴンの人向けに少しココナッツミルクを足すなどして “チャムとインドとサイゴン" と、いろいろな要素が混じり合っているようです。

チャム族の伝統料理でもある「コムニー(Com Ni)」。
本家では、まずクローブやシナモンをバターで炒め、煎ったカシューナッツパウダーを入れて炊き、炊き上がる前にココナッツミルクやレーズンを入れて炊き上げるというレシピですが、こちらはホーチミン市民の好みに合わせているのか、ココナッツミルクとバター、玉ねぎの甘みが前面に出たマイルドな味付け。単体よりもカレーに合わせるとちょうどいいかもしれません。
本場のコムニーは、スパイスがもっと感じられるのか。。いつか食べてみたくなります。
スパイスの香りとココナッツミルク、臭みのないヤギ肉が好相性のマトンカレー。カレーの奥に民族文化を感じながら、味わってみては。
ちなみに辛さですが、辛ラーメンが限界値の私でも無理せず食べられる辛さでした。(伝わりにくいか。。)
私はベトナムスケッチ(2015.1)を見て初めてこのお店を知ったのですが、今回カレーを深掘りしたのをきっかけに、知らなかったMusaの一面が発見できてとてもおもしろかったです。
また後日、中華系の人によってアレンジされたベトナムカレーの「華人編」を投稿して、「ベトナム」「チャム族」「華人」のカレー全3編を終えようと思います。よろしければ、お付き合いいただけたらうれしいです。
Cà Ri Ấn Độ Musa/カリー アンドー ムサ
住 001 lo B chung cu Su Van Hanh, Q.5, HCMC
営 9:00〜23:00
電 028・3833・9167
休 なし(祝日など休みの場合あり)
FB
〈参考〉
Thanh Nien01
Thanh Nien02
Nguoi Do Thi
Saigon Times
Bao Dan Toc
Bao Can Tho
Vinh Phuc Tv
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