ベトナムカレーの世界
カレーといえば、世界的に知られているのはインドカレーやタイカレー。
「ベトナムカレー」と聞いても、なかなかイメージが浮かびにくいかもしれません。
でも、ベトナムにもあります。
タイともインドとも違う、ベトナムのカレー「カリー(Ca-Ri)」が。
一体どんなカレーかというと、
ココナッツミルクの甘い香りが引き立つスープカレーを、バインミーや米麺でさらっといただく、南国らしいカレー。
インドからベトナム南部に伝わり、いまでは誕生日会や新築祝い、法事など人が集まる機会でよく作られているもてなし料理。タイカレーよりもマイルドでコクがあり、年齢を問わず食べやすい味が特徴です。
それでは、まずカレーの中身や食べ方から見ていきましょう。
ベトナムカレーとは
ベトナムカレーに入るメインの具材は、
鶏肉 = Ga(ガー)
アヒル = Vit(ヴィッ)
牛肉 = Bo(ボー)
ヤギ = De(イェー)
などの肉が定番。
料理名は、チキンカレーなら「カリーガー(Ca-Ri Ga)」、ビーフカレーなら「カリーボー(Ca-Ri Bo)」と、食材名が後ろに付きます。
ココナッツウォーターで柔らかく煮た肉と、大きく切ったさつまいもやじゃがいも、ココナッツミルクが入ったカレーは、甘みがありまろやかな仕上がり。
スパイスは、クローブや八角、コリアンダーシードにターメリックなどを配合したカレー粉(Bot Ca-Ri)を使うのが一般的で、調理過程で生のニンニクやエシャロット、レモングラスも使い香りをプラス。あとは食べるときの調味料やハーブで仕上げの調整ができるスタイルです。
バインミーか米麺で食べよう
カレーの食べ方といえば、ポピュラーなのが「カレーライス」。
ワンプレートに盛らずとも、多くの国でカレーはお米と一緒に食べられています。
もちろん、お米大国のベトナムも…と思いきや、ベトナムでご飯とカレーを一緒に食べることはほぼ皆無。
実にタイの2倍、インドの1,5倍の米生産量(※) を誇るにもかかわらず、通常カレーと一緒に食べるのは米ではなく、バインミー(パン)か米麺ブンの2択です。
(※)2019年 1haあたりの生産量
個人的には、さらっとしたカレーに中がふわふわのバインミーを浸して食べるのがオススメですが、米麺ブンも意外に相性よし。暑いときでも後味あっさりと楽しめるので、一度体験してみるのもありです。
ハーブで味変しよう
たとえばフォーでもブンでも、卓上の調味料やハーブで味を変化させながら最後まで楽しむのが、現地の人が常々やっているベトナム流の食べ方。
出されたまま、何の調味料も入れずに食べるということがほとんどない日常の風景に、改めてベトナムは“味変文化”だなと感じたりします。
ベトナムカレーも同様に味変が可能で、添えられるオリエンタルバジルやもやしを投入したり、唐辛子塩にキンカンを搾って具材をディップしたりして味の変化を楽しむことができます。
香りや味、食感を自分の好きなバランスでカスタムしながらベトナムスタイルで味わってみては。
ベトナムカレーのはじまり
お次は、ベトナムカレーの歴史について。
海外に「ジャパニーズカレー」として発信されている日本のカレーが、イギリス経由で伝わったインドのオリジナルから大きく現地化して、いまや国民食の1つになっているように、ベトナムカレーも独自の変化を遂げています。
19世紀後半に、フランスの植民地下にあった南インドの街ポンディシェリと、同じくフランス領下にあったベトナム。
当時はお互いに貿易関係にあり、南部の街サイゴン(現ホーチミン市)には約2000のインド人(主にタミル人)が暮らしていたそうです。
その居住地は、サイゴンや華人街チョロンのほかメコンデルタにも広がり、貿易商やお店を営む人、料理人としてフランス人に仕える人などがおり、一説には彼らから南インドのカレーが伝わったといわれています。その際、伝統的なレシピを再現するというよりも、フランス人の好みに合わせながらコストを抑えられる方法として、ココナッツミルクをふんだんに入れるなどアレンジを加え、徐々に変容。
当時、料理人として働いているのは華人が多かったため、中国でも人気の血のかたまり(中国語:豬紅/ベトナム語:Huyet)が入っているのは一説にはその影響といわれています。
また、現在ベトナムカレーでもっとも一般的なのは鶏肉なのですが、鶏や牛に並んでヤギ肉カレー(Ca Ri De)も浸透しているのは、インドから本場のマトンカレーが持ち込まれた名残ともいわれています。
ちなみにカレーの語源は諸説あるものの、南インドのタミル語である「kari」からきているという説が有力。
ベトナム語でカレーは「カリー(Ca-Ri)」と表記し、間のハイフンは海外から来た外来語を意味しています。
1939年頃には約6000人のインド人が暮らし、ベンタン市場周辺など数カ所に集中して居住していたという現在のホーチミン市。
いまもそれらのエリアにはいくつかのヒンズー教寺院が残り、当時の面影を伝えています。
食べるならここがオススメ
南部に移住したインド人から伝わり、独自の変化を遂げたベトナムのカレー。
ベトナム南部の名物料理は、コシのある米麺「フーティウ」やベトナム版お好み焼きといわれる「バインセオ」などさまざまありますが、南部を訪れたらベトナムカレーをチョイスしてみるのも通っぽくて◎
ココナッツや野菜の甘みが生きた、南部らしい味わいが楽しめます。
おすすめの専門店は、
レトロカフェのような空間で、スパイス香るカレーが味わえる「カリーガーバーテー(Ca Ri Ga 3T)」。
“ピンクの教会”として知られる「タンディン教会(Nha Tho Tan Dinh)」や「タンディン市場(Cho Tan Dinh)」からも徒歩圏内で、味よし・雰囲気よし・接客よしの三拍子揃ったお店です。
しっかりとスパイスが感じられる、香り豊かな味わいが特徴の人気店。
こちらはご飯も選択できるお店です。
詳しくはこちら ↓
チャム族のカレー
ベトナムとカンボジア国境付近に、インド文化の流れを汲むチャム族の人が暮らすエリアがあります。ホーチミン市から車でおよそ6時間のアンザン省北部。
このエリアでは、庭のハーブなど生のスパイスを鉢ですりつぶしてフレッシュなカレーペースト(Ca ri Tuoi)を作る、という伝統的な食文化が残っています。
スパイス香るチャム族のカレーには興味をそそられますが、実際に現地に行くのもご馳走してもらうも、実際難しそう。。
と思われた方、大丈夫です。
興味のある方はここホーチミン市内でも、チャム族特製のカレーが味わえるお店があります。
ホーチミン市民の好みに合わせて、ココナッツミルクを増やすなど調整はしていますが、チャム族の男性が作るカレーを食べながら、ベトナムカレーの世界を感じてみるのも一興です。
※後日、紹介記事を貼り付けます。
まとめ
調べてみたら想像以上に奥深かったベトナムカレーの世界。
長くなってしまいましたが、まとめると、
ベトナムカレーは
・ココナッツミルク入りのまろやかなスープカレー
・ライスではなく、バインミーか米麺ブンで食べる
・上にのる赤茶色のかたまりは”血のかたまり”
・ハーブやチリソルトで好みの味にカスタムを
・歴史的にはインドから伝わり変化した南部料理
・インド文化の影響を受けたチャム族のカレーもある
といったところでしょうか。
マイルドで年齢問わず食べやすい、ベトナムのカレー「カリー(Ca-Ri)」。
ココナッツや野菜の甘みが溶け込んだ南国のカレーを、新感覚の米麺やバインミーで一度味わってみては。
#ベトナムカレー #とは
参考
・Urbanist
・Bao Soc Trang
・Thanh Nien
・Doan Nhan
・Kenh14
・Nguoi Do Thi
・Du Lich TP. Ho Chi Minh