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ぱたぱたの夜

10年ほど前の話である。

老朽化したオンボロ貸家が震災でとどめを刺され、追い出されることになった。
同じ学区内に運良く空き家を発見し、懐具合と先々の世話を考えて、田舎の爺婆芋を呼び寄せるべく、当方は呪文を唱えた。

「金を出せ」。

包丁を突きつけていない強盗である。
もちろん、身ぐるみ剥がれた被害者二人は、現在手厚く接待させていただいている。



年寄りの移住準備が整うまで1年あまり。
相方芋娘芋の3人で、先に新居に移った。
今までの10センチ四方の借家から、一気にデカい二階建てになり、部屋の使い方に狼狽えながら、新生活が始まった。
障子と襖と網戸の張替えはこの頃マスターした。

2ヶ月ほど経って。



夜中に、蝶がいた。
(なんてメルヘン)



……………ちょうちょ??


パタパタパタ………。

でかいな。アゲハとかいうヤツか。

夜中の室内に、何故。
昼間に開けている窓も、全て網戸である。

なんでやねんと思いながらも、助けて放してやらねばと、怯えさせないよう、電気をつけずに捕まえようとした。

意外と素早い。
部屋から廊下へ、そしてまた部屋へ。


…………おかしいな。


追い回すうちに気がついた。



おまえ、蝶じゃねぇな?

( ゚д゚ )クワッ!!

やたらと天井に向かいたがり、ぶつかると小さい衝撃音が走る。

おまえ、おまえまさか………………


電気を、つける。


蝙蝠やないか!!!

( ゚д゚ )クワッ!!


ぐーすか眠る娘芋の部屋をしっかりと閉め、相方芋が帰ってくるまで、当方は2時間余りを蝙蝠との追いかけっこに費やした。

(相方の帰宅直前に追い出せたため、当方の苦労はイマイチ伝わらなかった(TT))

しかし、窓から追い出したはずなのに、翌日の夜にはまたパタパタしている。

_| ̄|○

後日、リフォーム屋さん(他に助けを求める相手がわからなかった)を呼んだところ、まだ使っていない和室のエアコンホースから室内に入ったらしい(そしてソコからまた入る)。

名前を呼べないアイツ以外の生き物は別に平気だが、野生の子となると、病気を持っていないかが心配である。
巣にされていた和室のエアコン(前の住人の置土産)は、撤去された。


和室は、客間としてスタンバイすることになり、そのまま物置となっている(客、来ないし)。



「私、あの時助けていただいた………」
という来客も、未だ、ない。



☆ヘッダー写真、お借りしました。いつもありがとうございます。

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