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おねえさんなんだから

1月は最高だ。
12月の後半に誕生日を迎えた長女が「ひとつ、おねえさんになった」という自覚を持つ。その上、年度末が見えてきた保育園でも「もう少しで緑帽子(年中)さんですよ」というアナウンスが度々あるようで、もうすぐ年中さんになって、そうしたら年少さんのお世話をしてあげるんだ!という気持ちが育ってきている。

上の子に対して「お兄ちゃんなんだから」とか「お姉ちゃんなんだから」という声掛けが良くないって、多く聞くけど、絶対にダメってわけじゃないと思っている。

炭治郎だって「俺は長男だから頑張れた」って言ってるし。うん。

そして何より、年功序列は時代が進んでもなくならないと思っている。
悪しき年功序列は、撤廃すべきなのだろうけれど、年長者を年長者というだけで敬う、というのは、ゼロにしなくても良い、むしろあるべき気持ちかな?と思っている。
まぁ…「俺はお前たちより長く生きてるんだから偉いんだぞ、敬え」と凄い剣幕で言ってくる義父と決別した私が言うのも、説得力がないけれど。

2歳差なんて、社会に出てしまえば、同年代という一つの枠なのに、中学生、高校生の間はそうはいかない。
3年生は最後の試合だからと優遇され、1年生は早く行って準備する。そういう慣習は、きっと完全には無くならない。無くならないから、抗わない。

要は、使い方なんじゃないかと思う。
「姉なんだから」と我慢ばかりを強いられたら、そりゃぁ嫌気がさすけれど「姉でいること」で良いことが沢山起きれば、得のおすそ分けみたいな気持ちで妹や下級生にも優しくしてくれるんじゃぁなかろうか。そして、妹も「姐さん!」と慕ってくれたら嬉しいなぁと目論んでいる。



「おちゃ、いれて」と次女が言った。
続けて「おちゃ、いれて」と長女が言う。
たったそれだけで「どっちがさき?わたしがさきだよね!?」「さきにいったひとでしょ?」と喧嘩の火種になっていたけれど、今では喧嘩は起きない。

私は、決まって長女のコップに先に注ぐ。
「お姉ちゃんだから」
「先に産まれたから」
と、最初の内は説明していた。

時々、次女のコップに先に注ぐと、「え!なんで?」と長女が驚く。
まぁ実際は、間違えただけとか、近くに次女のコップがあったからなのだけど、そんなことは顔に出さず「お姉ちゃんだから、ちょっと待てってくれるんじゃないかなーと思って!」などと言うと「まてるよ!」と得意げになる。

2人が同時に「やりたい!」と言い出したことは、まず長女にやらせる。
料理のお手伝いも「長女」「次女」「長女」「次女」「長女」の順。
そう、なんなら長女の回数が多い。それぐらいの優遇もする。

「ゆーちゃんは、お姉さんだから、すーちゃんよりも出来ることが多いのよ。お母さんは、ゆーちゃんよりも、もっとずっと前に産まれたから、もっともーっと出来ることも知ってることも多いんだよ」と言うと、姉妹はふふふと笑う。




朝食を食べながら、長女が次女に声を掛けた。
「すーちゃん、すーちゃんのすきなウィンナあるよ。がんばって、きがえておいで」

よぉし。じゃぁお母さんと一緒に着替えよう。

着替えている間も、長女はキッズチェアに座ったまま「がんばれ、がんばれ」「さむいけど、がんばれ」と声を掛けていた。

着替えが終わると「オムツと、パジャマ、かたづけておいでね」「ウィンナ、たべずに、まってるからね。いっしょに、あさごはん、たべようね」と言う。
次女は、返事もしないで片付けに行った。

片付けて戻って来て、食卓に着いた次女のために、長女がヨーグルトの蓋を開けてあげていた。
各々ヨーグルトを食べる。

コストコの大きなバナナを半分に切ってプレートに乗せておいたら、長女が次女のプレートに乗ったバナナを「おっきすぎない?」「ちっちゃくしてあげようか?」と確認して「うん」と言うのを待ってから、フォークで器用に小さくしてあげていた。「いっこずつ、フォークでさして、たべるといいよ」と、ご丁寧にフォークの持ち手を次女側に向けて置いていた。

「おかあさん、ウィンナもうあつくない?」
「熱くないよ」
「すーちゃん、ウィンナもうあつくないって」←聞こえてるでしょうよ

「すみっこぐらし…」と次女が言えば、食い気味に「そうだね!すみっこぐらしのウィンナだね!かわいいね!たべちゃおう!」とそそのかし、一緒に食べる。


自我も強い次女が、ウザがらずに素直に従っているのが不思議なくらいの過保護。


長女のプレートが空になって、次女のプレートにはピーナッツクリームのパンのみ。
「すーちゃん、ピーナッツのパンたべる?たべない?」
これは、食べさせてあげようというお姉さん心からくるものではなくて、食べないのならちょうだい、という、食いしん坊心から聞いている。
その証拠に『食べない』という選択肢を提示してきおった。

「…たべない」と次女。
これは、お腹がいっぱいだから要らない、とかではなくて、未知のものだから口にしたくない、という臆病な心からくる発言。

「食べてみよう?パン1口も食べてないでしょ?」と私が声を掛けてみるが、うーん…と渋っている。

「じゃぁ、お姉さんに、お願いがあります!」
と、高らかに宣言すると、パッと長女の目が輝いた。
「はい、これ持って」と、長女に次女のパンを持たせる。
「すーちゃんに食べさせてあげてね」

次女は、苦手な野菜や、手の汚れそうな食べ物に、決して自分から手を付けない。でも、人に食べさせてもらうと、なぜか口を開けて完食してしまう、という不思議な習性がある。

「すーちゃん、あまくて、おいしかったよ。ひとくちだけ、たべてみよ?」と言いながら、長女がパンを口元へ運ぶと、私の思惑通り、次女は口を開けた。

あうん。と食べたのを見て、私は「わぁ凄いね!パン食べられたね!お姉ちゃんが助けてくれて嬉しいね!」「ゆーちゃんも凄いね!お姉さんだね!上手に食べさせてあげられたね!お母さん、助かっちゃうなぁ!」2人とも、その調子だよ!と声を掛けた。

その後も
「すーちゃん、もぐもぐごっくんして、おくちのなか、なくなったら、いってね」
「ちょーだい」
「はい、どうぞ」
という、可愛いやり取りが続いて、結局2人とも完食した。

お姉さん、とっても頼りになる。

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