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論文紹介:核酸ワクチン接種後の医療従事者における新規自己抗体の発現

今日は核酸ワクチンによる自己抗体産生に関して、医療従事者を対象とした前向きコホート研究を紹介しよう。論文は以下のものだ。

「The onset of de novo autoantibodies in healthcare workers after mRNA based anti-SARS-CoV-2 vaccines: a single centre prospective follow-up study」(Autoimmunity.2023 Dec;56(1):2229072.)

実は、以前にも似た様な論文を紹介した事がある。
「The Risk of Autoimmunity Development following mRNA COVID-19 Vaccination」(Viruses 2022, 14(12), 2655)

この手の仕事が着実に増えている事は、免疫学を専門とする医学系研究者にとって核酸ワクチンが免疫疾患のリスクとなることはあまりにも自然な理論だからだろう。この論文のアブストラクトにおいても、論文の著者らは核酸ワクチン接種後の自己免疫疾患リスクに関するデータが議論の的となっていることを述べている。まずはこの事実を正しく認識してもらいたい。

さて、本題になるが、この単一施設での前向きコホート研究は、核酸ワクチン(ファイザーのBNT162b2およびモデルナのmRNA-1273)を接種した医療従事者が自己抗体の発現および/または持続を示すかどうかを、核抗原に対する抗体(抗核抗体、ANA)の検出に焦点を当てて評価することであった。155人の対象となる医療従事者が登録され、そのうちの108人が3回目の接種を受け、さらなる分析の対象となった。血液サンプルは、ワクチン接種前(T0)、初回接種から3ヵ月後(T1)、12ヵ月後(T2)に採取し、すべてのサンプルについて、抗核抗体を含む自己抗体を測定している。

この研究によると、mRNAベースの抗SARSCoV-2ワクチンは、22/77人(28,57%)の被験者に新規抗核抗体の産生を誘導することができ、陽性の割合はワクチンの暴露回数に直接相関しているようであった(2回接種では6/77人(7,79%)、3回接種では16/77人(20,78%))。

過去に何度も記している通り、核酸ワクチンはその特有の機序によって免疫系を強く活性化する。また、免疫系が過剰に刺激されると自己免疫につながることもよく知られた事実である。筆者らも、これらの結果は、免疫系が過剰に刺激されることで自己炎症につながり、最終的には自己免疫疾患につながるという考えをさらに裏付けるものであると考察している。

当然ながらこの考察には私も同意である。核酸ワクチンが本来自己免疫状態になかった個体に自己抗体を産生させる、自己反応性T細胞を活性化させるなどのリスクを有していることは明白と言ってよい。それが実際の疾患に繋がるかどうかは別の段階であるが、この様な「後天的リスク」の蓄積こそが自己免疫疾患の発症に重要な意味を持つということを理解しなければならない。例えば自己抗体が確認されても、発症しなければ問題無いということでは全くない。その状態が数年単位で継続するようであれば、それは確実に長期的自己免疫疾患発症リスクの増大に繋がるからだ。自己免疫疾患、自己免疫反応、その仕組みとリスク要因、発症機序の不明な部分と予防の大切さ、そういったことを包括的に理解し、正しい認識で核酸ワクチンを考えてほしいと思う。

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