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ふるさと納税における寄付と自治体のファンを最大化する「ふるさとリピートマップ」について<中編>

「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域資源のブランド化による産業創出を行う株式会社イミューが提供する、自治体向けふるさと納税分析ツール「ふるさとリピートマップ(以下、FRM)」について聞きました。

▼前回記事

ー前編ではFRMの概要や導入メリット、ツールを用いて可視化できる項目の詳細についてお聞きしました。今回は、実際の分析や施策に関する事例をお聞かせください。

イミューではFRMを用いて可視化された寄付者に関するデータを、主に「顧客軸」「アカウント軸」「マーケット軸」の3方向で分析し、その結果に合わせた施策の提案を行っています。

FRMによる分析の3つの軸

「顧客軸」の分析について説明すると、例えば同じ自治体に寄付をされる方の中でも、高額寄付者と低額寄付者では年間の寄付の仕方が大きく異なります。高額の寄付をされる方は、年間を通して複数回に分けて寄付をする場合が多く、低額の寄付者は逆に1回の寄付を12月にすることが多いです。

ーこういった違いはどうして生まれるのでしょうか?

返礼品というモノが届くためです。寄付者へのインタビュー調査をたびたび実施するのですが、たくさん寄付している方は冷凍庫がパンパンになるのを考慮して計画的に寄付することがわかっています。この情報をステレオタイプに捉えると、他の自治体と比べて低額の寄付者を多く抱える自治体であれば、ポータルサイト内で打つ広告のボリュームを12月付近に集中するべきですし、逆の場合は通年でまんべんなく打つ方が効果的です。

「アカウント軸」の分析では、各自治体が提供している返礼品ごとの継続率や、在庫の数といった周辺データも含めた分析を行います。その結果、自治体が強みだと思っている返礼品の継続率が意外にも低かったり、在庫の少ない商品に多くのファンがついていたりといったことに気が付く場合も多いです。

在庫数などの運用的な問題は自治体担当者からのヒアリングで判明する場合がほとんどですが、FRMで可視化された数字的な観点と共に検討することで、具体的な施策を提案することが可能です。

実際にこれまでに担当した事例の中には、町で1番人気の返礼品として自治体が推していたものの、在庫の数が全く追い付いていないものがありました。そのため、2番目に人気の返礼品の寄付を増やそうと考えてFRMのデータに目を落としたところ、1番人気の商品か2番目の商品をそれぞれ単体で寄付した方の継続率は低く、1番と2番の両方に寄付をした方の方は圧倒的に高くなることが分かったんです。そこから、町への寄付を検討している方々に両方の商品を早い段階でリーチさせることで、在庫の問題と継続寄付率および寄付額の向上が可能となりました。

ーデータの可視化とコンサルティングの両方を提供しているからこそ、取ることができた戦略ですね。「マーケット軸」はどのように行っているのでしょうか?

マーケット軸の要素の1つであるポータルサイトについてお伝えすると、40以上もあるポータルサイトにもそれぞれ特徴があり、自治体の持つ強みがサイトにマッチしているかどうかも重要な指標になります。

例えば、ある自治体における2023年の「さとふる」「ふるさとチョイス」「ふるなび」の3つのポータルにおける寄付単価を比べると、それぞれ11,000円(さとふる)、15,000円(ふるさとチョイス)、16,000円(ふるなび)と、大きく開きがあると分かります。これは、さとふるが日頃からポイントを多く配っていることに起因していることが1つの要因として考えられるのですが、これによって、高価な返礼品を多く出品している自治体や、高額寄付者を多く抱える自治体がさとふるの広告出稿を増やした場合、思ったように効果が表れないことがあります。

FRMを用いれば、既存寄付者のポータルサイト別の寄付割合を確認することもできるため、それぞれの自治体にあったポータルサイト選定や広告出稿の配分、各返礼品の在庫の持ち方などを協議することが可能です。

より理解しやすいよう、以下のグラフで食品の返礼品が強い架空の自治体のポータル別シェアを示しています。この自治体の場合は楽天からの寄付が50%を占めていますが、市場全体を見ても楽天が最大シェアを誇っているため、健全な状態と言って差し支えないです。一方で、現在さとふるが市場の中で伸長していることや、比較的安価な返礼品である食品が人気な自治体であることを考慮すると、今後はさとふるへ積極的に展開することで寄付獲得を効率的に図ることができると考えられます。

ポータルサイト別の寄付額割合のダミーデータ

ーFRMが自治体にとって便利であることはもちろん、イミューが備えているふるさと納税市場全体に対する深い知見があるからこそ、このサービスが成立しているように感じました。

実際に現在イミューでは、ふるさと納税市場全体の約3%に関わるマーケティングやブランディングに携わらせていただいているため、市場のトレンドみたいなものをメンバーが肌間で持てている部分は大きいです。また、北海道白糠町で取り扱っている「極寒ぶり」をはじめとした自社ブランドの展開も行っているため、外様の立場ではなく自治体やそこに関わる返礼品の提供事業者や地域商社と同じ目線で活動できることも自社の強みだと感じています。

これは表に出にくい部分ですが、自治体が提供する返礼品はその自治体に所在する返礼品の提供事業者から提供されていて、寄付の約3割がその事業者に入る仕組みになっています。そのため、仮にお取引している自治体の寄付を、これまで人気だったAという返礼品から新たにBという別の寄付者に比重をかけようとする際に、どうしてもAの返礼品を提供する事業者から反感が出てしまう場合があります。このような、自治体担当者では説得が難しい局面でも、弊社の場合はEC運営としてと実際に返礼品を提供している事業者としての2つの立場から、それぞれの個別解を自治体/事業者と目線を合わせて協議することができます。

ーFRMを通じたデータ分析や施策提案にとどまらず、実施の段階でも踏み込んでいくことができるんですね。

イミューは分析ツールだけを提供する会社ではないので、各自治体に個別でカスタマイズした分析や施策の提案、そしてその後の実働までお力添えします。実際に自治体の多くが抱える課題として、提案された施策を実行するための専門性や労力が不足している場合が多いです。その点イミューでは、実働のためのプロフェッショナルを自治体の伴走者として稼働させられるため、多くのお取引様から頼りにしていただけていいると感じています。

ーありがとうございます。続く後編では、FRMの開発秘話や自治体からの反応についてお聞かせください!

▼後編記事はこちら

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株式会社イミューでは「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域資源のブランド化による産業創出を行っています。事業に関するご相談や取材、一緒に働きたいと思った方はHPからお気軽にお問い合わせください!

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