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子育てが面白い(ドイツ編)

American Robin' chicks @Connecticut, US. May 2020. パパー、ママー、お腹すいたよー。

私は今、幼児を育てている。彼女はドイツで生まれた。
娘が生まれ、ドイツからオランダへ引越すまでの1年強、新米母としていろいろと面白い経験をしてきた。
その時間の大半が乳児期というまた独特な時期だったのもあるけれど、記憶が残っているうちに書き残しておこう。

ヘバメ(助産師)の産前産後サポート

ドイツで妊娠・出産をして本当にありがたかったサービスが、ヘバメと呼ばれる助産師の産前産後のサポート。公的保険対象なので、無料でお願いすることができる。

夫も私もドイツでは外国人。初めてのことだらけで右往左往するなか、何でも質問ができる安心感は半端ではない。
ドイツ人で英語ペラペラの担当ヘバメさんに、妊娠中は数週間ごとの検診、産褥期には毎日の訪問サービスで娘と私の状態を見てもらうなど、本当にお世話になった。おむつのつけ方、沐浴方法、授乳ポジション、抱っこ紐のつけ方、ボディクリームなど各種ベビー用品おすすめメーカー、娘の睡眠に関することまで、何でも教えてもらった。インターネットに情報があふれる中、信頼できるリソースとしてのヘバメさんがいることのどれだけありがたかったことか。
母乳育児が軌道に乗り始めたあとは自宅訪問はなくなり、数週間に一度の訪問診断のほか、メッセージで質問を受け付けてくれた。どんな質問も丁寧に回答してくれて、本当に至れり尽くせりだった。

国際結婚かつ第3カ国であるドイツで初めての子育てをする我が家は、実家・義実家・ドイツで見聞きする子育て情報と、内容の違いが多々あった。正反対のことをアドバイスされることもあり、一体どうすればよいのだーとなったものだ。新米妊婦・新米母にとって、四方八方から飛んでくる妊娠・子育てアドバイスを捌くのは結構大変なことである。
なので、多種多様のアドバイスに混乱した際、「なるほど!でも、うちのヘバメさんはこう言ってたな」と、ヘバメさんの存在は私たち夫婦の心の拠り所となってくれていた。

うつ伏せベビー

ヘバメさんのくれたいくつかのアドバイスで最もユニークだったのが、これである。助産師の中でも賛否両論ではあると思うが、我が家のヘバメさんはうつ伏せ推奨派だった。

「新生児の頃から、できるだけうつ伏せに寝かせることで、首・肩・背中の筋肉が発達する。」
「ただし、ベビーをうつ伏せにするときは必ず大人がそばで見ていること。夜、大人も一緒に就寝する際は、ベビーをうつ伏せにせず、仰向けにして寝かせること。」

インターネットで検索しても、新生児突然死症候群とか、窒息とか、赤ちゃんをうつ伏せにすることに肯定的なことはどこにも書いていない。本当に、赤ちゃんうつ伏せにしちゃっていいの?
それでも私たちはヘバメさんを信じ、親である私か夫がそばにいる場合、娘をうつ伏せにして寝かせていた。その結果かどうかはわからないが、娘は生後1カ月から頭を持ち上げるようになり、生後10カ月には手すりなしで歩き始めた。今では体を動かすのが大好きな、筋肉ムキムキ幼児となっている。

自然派子育て・母乳

肌感覚でしかわからないが、おそらくドイツでは自然な出産・自然な子育てが好まれている。
母乳育児をこれでもかというほど推薦しているし、母乳の出に問題がある場合は、ラクテーションコンサルタントと呼ばれる母乳育児支援の専門家がアドバイスをしてくれる。乳隠しなしの授乳風景は街中のいたるところで見かけるし、2歳前後の大きい子供に授乳しているママさんもよく見た。
そんな当地になじみ、母乳の出の良かった私も、抵抗なく出先でがんがん授乳していた。郷にいては郷に従え。

自然派子育て・スクリーンタイム

これも肌感覚になるが、ドイツでは子供、とりわけ幼児がスマホを見ている場面にほとんど遭遇しない。私たちのヘバメさんにも、子供のスクリーンタイムはなるべく少なくするようにと言われているので、おそらくほかの家族もそういわれているのであろう。
なお、スクリーンタイムに関するドイツ政府からの推奨は下記の通り(2016年時点)。これは、連続して座っている時間を少なくするため(=体を動かす時間を増やすため)に推奨された時間のこと。子供は動け、遊べ、ってことなのかな。

Kinderlärm ist kein Lärm

最後はドイツ語。直訳すると「子供の騒音は騒音ではない」。そう。子供がどれだけうるさくても、それは子供の健やかな成長に必要なものであり、騒音ではないのだ。もっと言えば、子供の騒がしさを騒音と感じるほう(=大人)に非がある、ということになる。日本から来たものとしては、価値観がひっくり返る。

そしてすごいのが、この格言?フレーズ?は、ドイツの子供を保護する法律からきている。そう。子供が騒音を出すことを、子供が子供らしく振舞うことを、ドイツの法律が保護しているのだ。すごいなドイツの法律。
もちろん公共の場で大泣きする娘へ煩わしそうな視線を投げかける大人はいたけど、こっちには法律がついているんだもんね、そもそも泣き止ませ方を知ってたら教えてくれよ、てな感じで、堂々とすることができた。そして、そんな視線を感じることは日常生活ではほぼなく、大抵皆様ニコニコと娘に笑いかけてくれたり、話しかけてくれたりした。母親として、ありがたいことこの上ない。自分のドイツ語のできなさに辟易しつつ、娘を介したちょっとした交流に心が洗われた。

同じヨーロッパ大陸の近隣国とはいえ、オランダでの子育てはドイツのそれとまた違う。もう少しオランダでの子育てに慣れてきたら、記事を書いてみようかな。まあ、乳児期と幼児期で恐らくだいぶ体験することは異なるのだろうけど。



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