新取組㉖氷点下の3000m峰稜線でテント泊...の予定が初ビバークに。

新しい取り組みの26個目です。

私は登山が好きで、今後やりたい登山の一つに厳冬期の南アルプスの3000m峰を縦走する、というものがあります。白峰三山とか、赤石岳~荒川三山とかですね。

とはいえ、いきなり厳冬期に行ったら死んでしまいます。夏には登ったことがあるので、雪が降り始める今の時期にもステップとして試してみることにしました。

今回は白峰三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)のうちの農鳥岳~間ノ岳まで行ってピストンで戻る計画を立てました。

初日に農鳥岳の先、間ノ岳の手前にある農鳥小屋(標高2800m)まで登り、そこでテント泊をしてから、2日目に間ノ岳に登ってテント撤収、下山するという流れです。

天気は晴れの予報、雨は降らないことと、GPV気象というページで見た限りでは風も穏やかだったため、比較的安定して挑戦できると想定していました。

2-3泊が推奨のコースですが、1泊2日の計画です。

初日・ひたすら上り

出発が遅れたものの、前半は心地よい天気の下、スムーズに進んでいきます。20㎏近く背負っていますが、先週の大無間山と似たようなペースで歩いて行けました。

登山口付近の奈良田。紅葉がみられる。
1時間ほど歩くと吊り橋。傾いていて揺れる上に隙間だらけなので苦手。
紅葉が広がる樹林帯。秋らしく美しい。
中間地点付近は沢を繰り返しわたる。
沢の源流。水の音が響いています。
振り返ると富士山。標高2800m近くまで来ています。

重い荷物を背負って累積で2500mくらい登るため、足が結構疲労感がありました。経験上無理ではないものの、毎回しんどさをすっかり忘れているのはなぜなのか。去年同じような条件で登った聖岳(南アルプス、3013m)でも同様に疲労を感じていました。

とはいえ、2800mを過ぎて稜線に出てから、宿泊地までは3000m峰を二つ超える必要があります。補給を十分にしつつ歩を進めます。

初日・稜線

ここで大きな誤算が発覚します。
爆風でした。

写真では全く伝わらない風。

若干恐怖を感じるレベルの風で以下のような状態でした。

・リュックや衣服のストラップが大暴れしてバチバチいって痛い。
・風を受けると煽られる。横から吹くときは80°くらいに身体を傾けないとバランスが取れない。
・風を顔で受けると息が出来ない。

ついでに気温も0℃程度なので、装備によっては凍死しかねない環境です。ガンガン体温が奪われるため、急いで上着を着ました。

後で調べると、このときの風速は16mほどだったそうです。
GPV気象だと山の上はあまり考慮されてませんでしたが、てんきとくらすというページを改めてみると、登山指数はA(登山に適している)なのに、風速はしっかり16mと書いてありました。

これはテント泊は無理だろうと思い、風が防げる標高まで戻ることにしました。ちゃんとした宿泊地まではかなり距離があるため、ビバークとなります。

幸い、万一に備えて道中で適した場所は探しながら登っており、標高2700mほどの地点に、ちょうどよい場所の目星がついていたので、そちらにテントを張ることにしました。

正式なテント地ではないが、おそらく誰かが繰り返し使っていると思われる場所。

周囲が岩場やハイマツでおおわれているため、万一強風が吹いて吹き飛ばされても転落するような心配はありません。無事にテントを張り、一夜を明かしました。

なお、本当は夜の稜線上で星空を見ながら歩きたいと思っていたのですが、全体に風が強かったことと、寒かったため行いませんでした。0℃、風速2-3mなら耐えられる装備でしたが、風速10m以上だと寒いのです。

楽しむために必要だった厳冬期用の上着を、重量と容積の関係でカットしてしまった判断が悔やまれます。

2日目

日の出の少し前に起きて、登りながら日の出を眺めます。

標高2800m辺りから。顔を出す太陽
徐々に明るくなります
写真で伝わりにくいのですが、虹色がきれいなのです
朝焼けに照らされる稜線の雰囲気も好きです
しっかり日が出て明るくなっていく
山頂につく頃には空も青くなっていました
パノラマ撮影
青い空と南アルプスの山々
わずかに残っていた雪

本当は農鳥岳に登った後、西農鳥岳を経由して間ノ岳まで行く予定でしたが、宿泊地がかなり手前になってしまったこと、体力的に不可能でなくとも苦しくなってしまうこと。無理するより体力を残して帰った方が後がよいと思い、農鳥岳で撤退することにしました。

下山は問題なくスムーズに進み、14時前には下山完了しました。

所感

準備や見積もりの甘さと、自分の実力の低さをしみじみ感じました。
今回の準備はとりあえず行けば何とかなるかという感じで、かなりざっくりしたものでした。

風を含めた天候の把握もそうですし、日程などの計画も荷物量を考慮すると余裕がなく、かつ出発が当初予定よりも遅れました。

・天候の地形差を含めた正確な予想
・荷物の厳選(食料が結構余った他、各装備も重めです)
・余裕を十分に持った事前準備(遅刻は当日朝準備したため)
・体力の正確な計算

これらがきっちり出来ていると、2-3段上のレベルで登山が出来そうに思います。

また実力の低さに関して。一流の登山家であれば、この程度の荷物と登山で体力が厳しくなるということはまずないはずです。

単純比較は難しいですが、かなり体力があるとされる登山家の方が800m走で2分5秒だったそう。自分も大学時代陸上部だったころは同タイムで走っていましたが、今はそれと比較にならないほど体力は落ちています。

陸上トラックを12周半する5000m走でいえば、大学時代の自分と今の自分が走ったら4分差、3周遅れに近い差がつきます。(15分38秒と、おそらく19分~20分台)

今回くらいの登山を楽々楽しめないと、その先の厳冬期の雪山や、さらに海外の高難度の山にいくのは厳しい。少なくともよりゆっくり時間をかけた登山スタイルに変える必要が出てきます。

そうしたことを考えると、日々のトレーニングや、自分の為の登山をしていく必要がありそうです。大学時代まではいかなくとも、普段のジョギングで20㎞を1km5分のペースで余裕をもって走るくらいのことはしておきたい。

最近はボルダリングで登攀をしている人を見たり、そうした人たちの登山記録をみてそのペースに悔しさを感じることが増えてきました。

上のレベルの人たちの刺激を受けているということなので、これまでのように勢い任せの登山ではなく、準備も含めて実力をきっちり高めていくような、そんな登山をしていきたいと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?