【AC6】傭兵 -レイヴン- はじめました。
高校生のころ、部活の後輩の自宅に招かれることがあった。
その後輩も極度のゲーム好きで、その頃はRPG専門ゲーマーだった時分と違い、アクションゲームを多く遊んでいるようだった。
「最近どんなゲームやってる?」
聞くと、後輩はキラキラと目を輝かせて、当時発売したばかりのPS3を起動しながら、タイトル画面を私に見せてきた。
「これです!アーマードコア!」
これが、私とアーマードコアの出会い。
あれから実に15年、齢33才となった私はいま、初めて同シリーズに挑戦している。
めちゃくちゃ難しいゲームだった。
アクションRPGではまず求められない複雑な操作性に、その時は一瞬で匙を投げたのを覚えている。
「いや~マジ難しいっすよね、このゲーム。全然敵に弾当たらないし、攻撃も避けるの難しいし。初見だとしょうがないかも」
フロムソフトウェアというゲームスタジオの名前を知ったのは、ダークソウルというゲームが人気らしい、というのをネットで見かけた辺りのこと。
物語を楽しむのが好きでRPGを好んでいた自分は、FFやテイルズなど、物語性に重きを置いたゲームを多くプレイしており、アクションゲームなどはからっきしだった。
いまでこそAPEXやヴァロラントなどのFPSを頻繁にプレイしているが、オンラインFPSのデビュー作がAPEXであるほど、私のアクションゲームに対する造詣は浅い。
そんな傾向が今よりも強かった高校時代の私に、アーマードコアの複雑な操作性、高すぎる難易度は全く向いていなかったと言える。
その後、お手本としてストーリーを進めていた後輩のプレイを横で見ていたのだが、実に上手に機体を操縦していた。
指は常にせわしなくコントローラーを操作し続け、画面の中の期待は後輩の操作に応えて俊敏に動き回っていた。
彼はモンハン持ちのようにコントローラーを変則的に構え、全ての指を使って懸命かつ鮮やかにプレイしていたように記憶している。
9年ぶりの新作に15年前を思い出していた。
あれから15年。
途中、美麗なムービーやハードボイルドな世界観に魅せられて、攻略動画などを見ていた時期はあったものの、プレイ自体は全くせず、私はすっかりオッサンになってしまった。
(ホワイトグリントかっこいいよね、というくらいは知っているレベル。)
そんな私がアーマードコアの新作が発売されると知ったのは、発売1か月前のこと。
「あれ?新作めちゃくちゃ久しぶりなんじゃないの?」
Twitterで情報を見かけたとき、ふとそう思ったのだが間違いではなかった。ゲーム情報サイトの記事を読むと、実に9年ぶりの新作になるのだという。
そういえば高校生のころ、アイツの家でやらせてもらったっけなぁ。
発売日にSteamの販売画面を眺めながら懐かしい気持ちになっていた自分は、数日後、初めて同シリーズに挑戦することにしたのだった。
姿がわからないからこそ、際立つ「人間味」。
私がなぜAPEXにハマったのかといえば、それは「レジェンドのキャラクター性」と「FPSゲームにストーリー性がある」からだった。
これは完全にRPGの好みから来ているもの。
キャラクターにしっかりした土台があってこそ成り立つ重厚なストーリーが好みだった私は、APEXにそれを見出すことができ、ただ銃を撃ち合うだけのゲームではないAPEXを続けることができている。
私がアーマードコアに期待していることは、ロボットシューティングという個人的新ジャンルへの面白さと、重厚なストーリー。
しかし、実際にプレイし始め、チュートリアルが始まったあたりで私は違和感を覚えた。
「このゲームの主人公しゃべらないし、キャラの顔出てこないんだ……?」
もちろん知らなかったわけではない。かつて見てきたアーマードコアの動画に、人間の顔は一切登場してこないからだ。
しかし「それがいいんだよ」とは、歴代のシリーズをやり込んできた「歴戦の傭兵たち」の偏った意見だと思っており、キャラの顔がわからないままストーリーを楽しむことなどできるのだろうか?とチュートリアルの段階では懐疑的だった。
しかし。
主人公の雇い主たる「ハンドラー・ウォルター」、
謎の通信手段で主人公との交信を続ける女性「エア」、
愉快で刺激的な遠足に連れ出してくれる「ミシガン総長」、
主人公を戦友と呼び信頼を寄せてくる「V.Ⅳ ラスティ」、
ならず者技術者集団をまとめあげる女頭目「シンダー・カーラ」、
そんな彼女に付き従う寡黙な技術者「チャティ・スティック」、
彼らの声を繰り返し聞くたび、私は徐々に彼らの顔や容姿を想像できるようになっていた。
心底、声優さんの演技力というものには感服させられる。顔や容姿のない彼らに魂を宿らせ、プレイヤーに顔や容姿まで想像させる卓越した技術は、このゲームの重厚さを担保させる、一つの重要な要素である。
私の中でハンドラー・ウォルターは、エヴァの碇ゲンドウのような面倒なイケオジの顔で再生されているし、
ラスティなんか絶対に金髪ロング、碧眼白肌の西洋イケメンだし、
私の最推したるエアは黒髪ロングで黒セーラーに身を包んだ大和撫子だ(ったのだが、チャプター3をクリアしたことでそもそも人間なのか疑わしくなってきたところだ……)。
ゲーム性? めちゃくちゃ難しいよ?()
前提として、私はアクションゲームが苦手だ。
理由は明白で、そもそもゲームが下手で複雑な操作が苦手だということと、「臆病ゆえに負けて惨めな気持ちになることが大嫌いだから」である。自虐が過ぎるが、事実なのでしょうがない。
どのくらい下手なのかといえば、無双ゲーのようなただボタンをぽちぽちしていればいいだけのゲームでさえ普通に死にまくるし、先般、どっぷりハマっていた「ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・キングダム」でも、何度高所から足を滑らせたか分からない。ライネル?倒せるわけなかろうに。
故に、アクションゲームで難易度が選べる場合には絶対に「EASY」。「強くてニューゲーム」を心から楽しめるタイプである。
そんな自分と「死にゲー」の相性など、火を見るより明らかだ。
これまでもSEKIROやエルデンリングに惹かれたことは度々あったが、興味が臆病を上回ることはついぞなかった。
アーマードコアは確かに難しいゲームだ。しかし、自分が覚悟していたほどめちゃくちゃ難しいわけではないと感じている。
いや、、、道中に出てくる中ボスですらない「ちょっと硬い個体」にも普通に撃破されるクソ雑魚レイヴンが何を、と思うかもしれない。
しかし、そんな自分でも、彼の有名なチャプター1のボス、バルテウスをクリアできたといえば少しは信憑性も出るだろう。。
バルテウスというボスが強いというのは、実はゲームの購入前から知っていた。ついでに動画も見た。開幕でミサイルの弾幕を放ってくる様は、これぞSFロボットアクションといった風だが、実際に避ける身になってみると理不尽なことこの上ない。
日を改めて挑戦していたので、撃破までにかかった正確な時間はわからないが、合計で5時間以上はかけていると思う。今までの自分なら、1体のボスに5時間もかけようものなら普通に萎え切って、ゲームそのものを投げていた。
しかし、プレイを重ねている内、まるで自分が本当にパイロットになったかのように、ボスの動きに適応できているのが実感できるのである。
絶対にこの動きは避けなければならない。妥協してHPで受けてOK。
絶対に警告音を聞き逃さない。攻撃チャンスでは迷わず前に出る。
するとどうだろう、短期間のうちにみるみるゲームが上手くなっていくのを自覚できるではないか。あれだけアクションゲームが苦手だった自分が、本気で強いボスに本気で立ち向かうとこんな感覚を味わえるのかと、まさに新境地だった。
そして訪れる、バルテウスを初めて倒した瞬間。
凄まじい達成感に脳内麻薬がどっぱどぱに溢れまくり、手をたたいて喜んだ。これがフロムゲーの虜になっているコアゲーマーの感覚か。苦しい思いをしてでも味わいたくなる気持ちもわかろうというものである。
以下、私が初めてバルテウスを倒した瞬間の動画である。
歴戦の猛者から見ればさぞ拙い動きに見えるだろうが、シリーズ初挑戦ゆえ、大目に見て欲しい。
ただ難しいだけじゃない。重厚なストーリー、難解なバトル。
アーマードコア6をただ単に「難しいゲーム」とだけいうのは、語弊があるかもしれない。
現在進行形で1週目の攻略を試みている新参者が偉そうではあるが、「噛めば噛むほど味のするやり応え十分なゲーム」というのが正しいのではないだろうか。
(今のところは)こんな自分でさえ、機体構成を吟味し、何度も繰り返して敵の動きを見極め、予想外の被弾にも冷静さを持って対応すれば、十分に攻略できる段階だ。
これから理不尽なボスが多数出てくる予感もするが、そもそもチュートリアルのボスでさえ、最初は「負けイベ」かと思ったくらい笑ってしまうほど強かったし、「ゲームを投げ出すならここだろうなぁ……」と腹を括っていた噂のバルテウスも、何とか攻略できた。
自分は今まさに「フロムゲー」を味わっているなという感覚がものすごく楽しいし、頑張れば必ずクリアできるという成功体験と、ゲーム内でも各勢力が無視できないほど実力のある独立傭兵に成り上がる様が快感で、きっとしばらくはこのゲームにお世話になることだろう。
自分もまだまだ楽しんでいる段階だが、迷っている読者の方はぜひ挑戦してみて欲しい。
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