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【断髪小説】バッサリ、切りっぱなしボブカット(ショートショート)

黒いケープをそっと広げ、彼女の首元に巻き付ける。
「きつくないですか?」
「大丈夫です」
彼女が小さく微笑みながら答える。
目の前の鏡には、落ち着かない様子で自分の髪を見つめる彼女が映っていた。
おそらく20代くらいの女性だろう。
肩下20センチくらいのセミロングヘア。全体は明るめの茶髪だが、所々に黒髪が混ざっている。
「今日はバッサリと...…お願いします」
彼女はそう言って、少しだけ視線を落とした。
鏡越しに自分の髪を見つめる彼女の瞳は、わずかに揺れていた。
初めてのショートカットだろうか?それとも伸びた髪を切っただけなのだろうか?
「長さは、これくらいでよろしいでしょうか?」
僕は肩のラインを指さしながら聞いた。
彼女はゆっくり頷いた。
「……はい。それぐらいでお願いします」

僕は肩のラインで美容ハサミを構える。
そして左手を添えて、まっすぐ一直線にハサミを閉じる——

ジョキッ!......ジョキッ!......ジョキッ!......ジョキッ!

頭から離れていく髪の毛がケープを通って下へ滑り落ちる。
落ちていく髪を見つめながら、彼女の喉が小さく上下する。息を呑んでいるのがわかった。

ジョキッ!......ジョキッ!......ジョキッ!......ジョキッ!

一定のリズムで繰り返される断髪音。
髪型は真横に真っ直ぐに整えられていく。
半分くらいは切り落とされて、残り半分も一定のリズムで断髪していく。

ジョキッ!......ジョキッ!......ジョキッ!......ジョキッ!

最後の残った髪の毛は切りやすいように手で押さえてカットする。

ジョキッ!......ジョキッ!

……シャキッ!

横一直線に切り揃えられた髪の毛にクシを通し、切り残しがないように確認する。
少し長い毛を発見するとハサミでジョキッと断髪する。

僕は手鏡を彼女に見せて、後ろのカットラインを確認してもらう。
「ありがとうございます。……良い感じです」
「えぇ……すごいお似合いです」
軽く声をかけると、彼女をシャンプー台に案内した。

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