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大学と連携した長期インターンシップ(受入企業の視点から)

 名古屋産業大学では、2021年4月に経営専門職学科(専門職大学の制度)を開設し、2023年度には、初めて3ヶ月間、18単位の長期インターンシップで必修プログラムで参加しました。

 今回は、2023年度から2名ずつを受け入れていただいている大冷工業の大場社長と、2024年度に1名を受け入れていただいているエネファンと西尾さんと対談のイベントを行いました。

 2024年7月19日にイベントを実施しましたので、その様子をレポートさせていただきます。

 今回は、名古屋産業大学とも連携して、さまざまなイベントを実施している株式会社オカムラ Cueでの実施です。

 個人的にも、共創空間の研究の中で、オカムラのCueの取り組みや、コロナ渦ではCue Dream PJという取り組みをプロボノ参加者で一緒になってプロジェクトを作って運営していました。


 近年、「インターンシップ」が、採用活動の一つの手法として、また大学における取り組みとして一般化し、多くの大学生が経験するようになりました。学生を受け入れる企業や団体にとっても経験した人たちが増えてきています。一方で、企業にとってもメリットがあり、参加する学生にとってもメリットが得られるような「共創」インターンシップは、どの程度実現できているのでしょうか?
 
 今回は、大学におけるインターンシッププログラムの設立と運営、企業のインターンシップのアドバイスなどの豊富な経験を有し、「長期実践型インターンシップ入門」(ミネルヴァ書房)「企業のためのインターンシップ実施マニュアル」(日本能率協会マネジメントセンター)の著者の名古屋産業大学の今永と、実践的な長期インターンシップを実施する名古屋産業大学と連携する企業(大冷工業株式会社、株式会社エネファント)の事例をご紹介します。

株式会社エネファントについて

 
 エネファントは、エネルギーを中心に展開しているが、省水力などの領域も近年検討してます。特に商圏を広げすぎず、多治見を中心に展開しています。エネルギーの地産地消。電気代を日本一やすくすることを目標に実施しています。

 西尾さんは、 新卒時は求人高校の会社に就職し、その後NPO法人G-netに入社し、新卒支援の仕事をしていました。G-netは長期実践型インターンシップのコーディネート団体ですが、コーディネーターの仕事は少し実施していたので、いわば「インターンシップコーディネーターのセミプロ」(プロフェッショナル)です。約4年前に転職して、現職になります。

<インターンシップについて>

 株式会社エネファントでは、インターンシップの、長期の経験者は合計4人です。名古屋産業大学多治見出身の園原君が参加しています。

 シェアサイクル事業の営業などを、多治見市を中心に実施しています。60台の自転車があり、シェアポートは30施設くらいあります。現在の課題は、1つ当たりの利用料は安いが、だからこそ、稼働率を高めることが重要で、どのように取り組むかを検討することが重要となっている。

 今の名産大のインターンシップ生は、地域の顧客を回ったり、アンケート調査を実施したり、おきたい場所に営業を行ったりしてます。実際に1件契約をとることもでき増田た。飛び込み営業を行い、今月の初めに、新たな設置場所をオープンさせることができました。アンケートを自分で作成して、地域の人にアンケートを集めることも行なってもらいました。
 泥臭いことも含めて実施しています。30箇所全部の場所を回って、ユーザーの目線で理解できるようにしてもらったり、自転車の貸し借りの設置や撤去などについて、一緒に行って、社員と一緒に実務を行います。ユーザーとして、顧客として必要なことが何かを学んでもらっています。

 過去には、名古屋外国語大学の女子学生が、1年間インターンシップを実施しました。最初の半年の予定だったが、多治見に住んでインターンシップに参加しました。事業の多くを部分に、インターンシップとして関与しました。料金設定、契約書、約款などの作成、工務店の開拓、記者会見の設定など、プロジェクトリーダーとして役割を果たしました。カーポート事業もインターンシップ生として、実際に地域の人に対して設置するための広報や問い合わせ後の受付、訪問方法や説明資料なども作成しました。

HELLO CYCLING

 インターンシップに加えて、兼業人材も活用しながら、外部の人と一緒にプロジェクトを進めています。実際に、西尾さんもG-netに所属しながら、週に4日間G-netで働いて、1日エネファントで働いていて、その後転職するに至っています。

 基本的には1ヶ月から3ヶ月の期間が多いのですが、プロジェクトの内容や流れは同じように実施しています。特徴は、電力はインフラの取り組みで、目に見えて作ることや売るものは見えにくいことから、地域の人から共感を得るには、泥臭く地域に飛び出していくことが重要であると考えています。

大冷工業株式会社について


 2017年から、大学生との協働・共創を実施しています。当初は、外国人留学生との協働であり、大場章晴社長が、昔海外に留学していた経験もあり、何か留学生のために実施できることはないかという想いを持っていたことも背景にありました。

 大冷工業にとっては、インターンシップなどは、「採用がメインではなく、手をつけたいんだけれども、やれないことをやってもらっている」という部分が原点となっています。
 
 そのため、「上がってきた成果に対して、すごく褒めたり、すごく指導したりするということもなく、自分たちがやりたいと思っていることに関して、楽しみながら実施している。」

 2022年度からは、4月から9月は、名古屋産業大学の長期インターンシップ生を中心に受け入れ、10月から3月は内定者・新入社員をアルバイトとして週に1回、強制ではなく、内定者に対するインターンシップということで、会社に慣れてもらうことと、社会で働くための前段階の準備として実施しています。

 2023年度は、名古屋産業大学の経営専門職学科の学生による長期インター
ンシップ(必修科目で3ヶ月間、18単位)を受け入れるようになりました。

 大冷工業のインターンシップに参加した学生の成果は、2023年度の社会人基礎力グランプリ、中部地区最優秀賞で、全国大会に出場するなどの、教育効果をもたらしています。

 複数のプロジェクトを用意し、会社として、「この業務は人手が欲しいのでぜひとも手伝って欲しいもの」「緊急度が高いわけではないが、現状の人手では手が回っていなくて、ぜひとも学生のパワーで色々と活動して欲しい業務」「会社としての新規企画で、何かアイデアが欲しくて、一緒に活動したい重要ではあるが、なかなか手がつけられていない業務」などを用意し、長期間の実施の中で、一緒に活動を続けています。

 特に、大冷工業にとっては、本業の本業である設備に関連した業務ではなくて、会社としてのCSR的な分野の業務や、新規事業企画などをインターンシップの学生と取り組んでいることが特徴です。

 製造業や建設業など、ノウハウが多く存在したり、前提の知識や経験が求められるようなタイプの業種・職種にとっては、インターンシップが一般的に困難で実施しにくい可能性が、一般的に高い。その点を、プロジェクトの設計段階で、外部の学生と一緒に活動できる領域で、取り組むことができている点にも特徴があります。

クロスコ

<ディスカッションのダイジェスト>


今永:「インターンシッププログラムを作るときに工夫する点はあるのですか?」

西尾さん:「G-netにいたが故に色々と考えることがある。このプログラムは本当に良いプログラムかどうかを考える。企業としての経済合理性があるかどうかを考えることが重要だと思っている。やってほしい、やってくれるといいなぁと思うような業務はあるが、それは、アルバイトのようなものであれば、それはインターンシップとしては受け入れないという判断もしていた。特に、営業のようなこともあるが、100回行って100回決まらないこともある。そのため、インターンシップでは、件数を訪問するとか、努力をすれば達成できるような目標設定をすることを大事にしている」

今永:成果だけではなくて、うまく教育効果を高めるために、目標設定と、フィードバックの方法なども気をつけるのがポイントだと思う。


今永:学生との接点の頻度などはどのようなものでしょうか?

西尾さん:「事業部のメンバーに面倒を見てもらうこともあるが、基本は毎日日報を出して、鬼のように面倒なコメントを残すという意味では頻度は高く設定してある。与件と裁量は重要にしている。例えば、エリアと要望は出しておいて、そのプロセスなどは自由にしている」

大場さん:「最初のうちはそこそこ丁寧にやり取りをしていたが、だんだんだんだん関わりが少なくなって行った可能性がある。自分がやろうとするとうまくいかないケースもあった。一緒にやってくれた部下の総務の人がいるが、その人が面倒見が良くて、その担当者が入ってからうまく潤滑するようになっていった」

今永:「コーディネーターは、答えを教える、ティーチングだけではなくて、コーチング的な要素を大事にする。社長だけではなく、担当者も含めて、学生との接し方も重要である。」

西尾さん:「社内にいる時は、目の前にいるので、学生から直接聞かれることもある。上司でありコーディネーターの役割を兼ねているので、ティーチングの役割とコーチングの役割を兼ねてしまっているのは悩ましいところである。どこまで問いかけ、どこまでを教えるのかは悩ましい。なるべくチームのメンバーとかでも役割分担をするようにはしている。関わりの頻度を減らしながら、チームとして学生を受け入れられるようにしている」

関わりのでの担当者、受け入れ側の社内教育

大場さん:「社内の人材育成でもとてもいいと思っている。総務として新たな人材を採用するほどの業務量ではないが、突発的に忙しい時もある。ただし、部下を持った経験もないので、インターンシップが学生ではあるが、先輩体験ができ、マネージメントするための擬似体験ができることから、人材育成・社内教育の観点ではとても有益な機会だと考えている。期間限定で、長すぎず短すぎず、その期間でやれることをお願いする長期インターンシップは良い機会になると思っている」

今永:「企業の人にとって、長期のインターンシップのメリットはどのようなものになるのでしょうか?」

大場さん:「教育以外のことで行くと、社会性の部分、メディアの人たちは、インターンシップを行うと、「いいですね」と言ってもらえる。宣伝効果という点でも、きっかけとしてはとてもいいと思っている」

今永:「教育事業は社会性があると思っている。ビジネスの世界と教育の世界は相反する部分はあるが、教育の世界では、社会性があるので、その分、メディアが取り上げてもらえるので、その効果を可視化すると、意外と経済性につながる部分に繋がってくると考えている。
個人的には、ESGなどのS(社会)やインパクトレポート、CSRレポートなどに、長期のインターンシップなどの活動実績を含めてもらうのも重要な点だと思っている。」

中日新聞 2024年7月5日 朝刊13面

西尾さん:「プレスリリースも出すが、1年間インターンシップをやっていると、それまでの繋がりで名刺交換をした人に学生が出すと、記者としても取り上げてくれる可能性もある。今の学生も多治見出身の学生であることが強みで、地元の人との会話が弾み、話ができて、アポイントが取れて、具体的な商談につながることもある。メディアに出ることもあるが、地元の企業がインターンシップをしていることが、地元に対してもインパクトがあると考えている。意図しているわけではないが、地元の人たちのために事業展開をしているので、その点を波及する広報的な役割にも担っているといことになる。」


今永:「学生と接する中でよかった点ってどんなところでしょうか。」

西尾さん:「受入企業という点からすると、仕事を若者に切り出して、タスクを分けることができるのは重要な機会である。若者がなぜこんなことを考えられないか。と考えることもある。ただし、自分自身の今の価値観を強制して、押し付けているかもしれないと考えることもある。学生の立場に立って、この学生が成長するためにどのようなコミュニケーションを取ればいいかを考える、内省の機会になる」

大場さん:「ありますね。それは・・・。今来てるインターンシップの学生とのコミュニケーションでも色々と感じること、自分にとって心に残る・響くこともある。
自分から、少し手を差し伸べようと思ったこともあったが、部下の担当者から、学生ならではの、状況に応じた提案を自主的に出てくる機会もあった」


ーおわりにー

 長期インターンシップは、必修科目として、大学で実施するケースは少ないと思われます。そのような中で、受入企業からのメッセージは非常に希少性も高く、有益な内容であったと思われます。
 今後も、企業の人に毎年このような学生であれば受け入れたい。そう言ってもらえるような学生を輩出すること、かつそれが、学生のパーソナリティーのみならず、大学の教育システムとして、学生のやる気、マインドの部分、学んできた知識を活用したいという部分などを結びつけるような形で、学生の教育効果と、企業にとっても受け入れる価値、双方がメリットを得られるような取り組みへと、持続可能な形で発展させていくことが重要だと考えております。その中で2社のお話は、とても参考になる点が多かったと思っております。


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