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次元の違うレイヤーを自在に飛び回る様な文章が書けるようになりたいです
ヤンデルさん
前回のヨードを使った文章を書くことについての比喩的表現、とても感激しました。
ヨード内用療法の『ヨードを取り込む甲状腺内の細胞』というミクロな視点から、『甲状腺だけではなく他のがんに届く薬が作れないか、と考える放射線科医』というマクロな視点までが、ヤンデルさんの『文章が届く、文書を届ける』という概念とシンクロして、とても美しかったです。
次元の異なる仮想空間のレイヤーが現実空間にピタッと重なるような、そんな体験でした。
呼吸をするように文字が出てくるのかと思われたヤンデルさんのあの膨大な出力量は、もっと広く別のクラスタまで届けたいという想いから出た一つのアクションだったのですね。
なんだか『もっと別の体の機能を可視化してみたい、もっと別のがんを見つけてみせたい』、という機能画像研究の根源的なモチベーションと似ていて、深く納得しました。
そのようなことを知るにつれ、『文章を届ける』ことについて長い時間考え、行動してきたヤンデルさんに比べると、私はヨチヨチ歩きのヒヨッコだなぁと思います。
これは初回のお手紙でもお伝えしたところではありますが、以前は『文章を世間に向けて書く』ということ全般において、苦手意識というか、恐怖心みたいなものがありました。
目立ちたいとやつと思われるんじゃないかとか、勉強不足と批判されるのが怖いとか、論点がぼやけていると思われるんじゃないかとか、面白くない文章だと思われたくないとか…。
正直、『積極的に発信したい』という思うようになった心境の変化に、私自身とても驚いています。
ですが、これまで書くことを避けてきたからでしょう、いざ書こうと思っても、どこから始めていいものか皆目見当がつかず、なかなか筆が進みませんでした。
なんとか書いてはみるものの、書き始めの時に思っていたものとは何だか違う形の文章が出来上がってしまい、公開するのが恥ずかしくなって消してしまうこともありました。
そんな中、ヤンデルさんにお話を聞いてもらう、という体裁で進められるこの往復書簡はとても言葉が出てきやすく、いい経験になっています。
お陰様で何とか、いくつかの文章を産み落とすことが出来ました。
タクさんは、自分の文章がどういう読者に届きやすいとお考えですか?どのような読者を想定していらっしゃいますか?
このようにして生まれた今の私の文章は、医学知識を持った医療者の方にようやく辛うじて届く程度ではないかと感じています。
過去の自分を振り返ってみても、医学生の頃の自分にはきっとほとんど届かなくて、研修医の頃の自分でギリギリ面白いと思ってもらえるかどうか、というところでしょうか。
書いてみた結果がそういう文章だったというだけで、実はどうにかして高校生の頃の自分にも理解してもらえるような文章にならないか、と思って書いていました。
書き進めている時の想定読者は高校生の頃の自分、出来上がった文章が届くのはきっと研修医の頃の自分まで。
その差に軽く唖然としました。
同じ日本語なのに、面白い文章を書く人はどうしているのだろうと不思議にすら思います。
実際に文章を書くようになって、自分の文章を書く能力をようやく客観視できるようになったということかもしれません。
きっとこれは始めの第一歩なのだろうと思います。
『今の時代で良かった』と思ったのは、こんな私の文章でもインターネットのしくみを使って世の中の人に読んでもらうことが出来るというところです。
自分の思っていることを文章にまとめて、色んな方に評価してもらう。
それがいい評価でも悪い評価でも、次に進む原動力になる。
それが私のような初学者にも許されている現代社会には、感謝しかありません。
今回のヤンデルさんとのやり取りを通じて、『文章で伝えたいと思うなら書くしかない。書いて、世に出して、意見をもらって、また書いて、を繰り返すのだ』、というある種当たり前の結論に行きつきました。
まずは高校生の頃の自分にも理解してもらえるような文章が書けるようになることを目標に、文字にすることを続けていこうと思っています。
そしていつの日か、出来るならば、ただ届くだけではなくて、それを読んだことで心が動いたり、未来が少し変わるような、そんな文章が書けるようになりたいです。
(2019.9.16 タク → ヤンデルさん)