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医学において古典的とは
ヤンデルさん
前回は沢山のテーマを一度に盛りすぎてしまいました。
一つ一つもっと解像度を上げて、丁寧に説明していかなくてはと思った次第です。
さて、
核医学を研究されている方はどういう視点でがんとそれ以外を見分けているのか、大変興味があります。ぜひ教えてください。
ですね。喜んで!
ただ、正直なところ、現在研究として試みられている手法にはかなりバリエーションがあり、そのまま文章にしようとまた焦点を見失ってしまいそうです。
なので、まずは一番歴史があり、有効であるという結果が確立されているもの、いわゆるセラノスティックスの古典的手法をご紹介しようと思います。
それは、甲状腺がんに対する放射性ヨード内用療法です。
今日は脱線しないよう、この放射性ヨード内用療法というやつに集中してみます。
放射性ヨード内用療法、これはつまりがん細胞を攻撃する武器を手に入れたヨウ素を飲んで体の中に取り込み、甲状腺がんと闘ってもらおうという方法です。
--------------甲状腺のおさらい--------------
甲状腺はのどぼとけのあたりにある蝶のような形をした臓器です。
そこでは甲状腺ホルモンが作られ、たくわえられ、必要に応じて適度に分泌されます。
甲状腺は甲状腺ホルモンの工場および倉庫の役割を果たしていると言えます。
全身に出荷(分泌)された甲状腺ホルモンは、全身の活動を活発にする作用があります。
血圧や心拍数を上げたり、体温を上げたり、汗をかきやすくしたり、気持ちを前向きにしたり。
一見すると、いつまでもジャンジャン分泌してほしいホルモンですが、あまり作用が強すぎると、危険なほど高血圧になったり、気持ちが昂りすぎて攻撃的になったり、眠れなくなったりするので、多くなりすぎないよう、適度にバランスが保たれています。
--------------おさらいおしまい--------------
甲状腺にもがんが出来ることがあります。
他のほとんどのがんと同じく、手術でがんを含めて甲状腺を切ってしまうのがまず初めに取られる治療戦略です。
ただ、甲状腺以外の部分にがんが飛んで住み着いてしまう、いわゆる転移という状態になると、手術では取り切れません。
そうなった時には、放射性ヨード、「放射線という武器を手に入れたヨウ素」の登場です。
ヨウ素、身近なところではうがい薬の茶色い成分ですね。
海産物、特に海藻類には沢山のヨウ素が含まれており、普段私たちはそれらを食べることによりヨウ素を体の中に取り入れています。
体の中に取り込まれたヨウ素が向かう先、それが甲状腺なのです。
甲状腺は血液の中に流れるヨウ素を集めて甲状腺ホルモンを作る材料にします。
そして作られた甲状腺ホルモンは甲状腺にしばらく蓄えられることになります。
逆に、体のそのほかの臓器は、ヨウ素にはほとんど見向きもしません。
つまり、ヨウ素の濃度は甲状腺で非常に高く、そのほかの臓器では十分に低くなるのです。
前回からコントラスト、コントラストとうるさいですが、このコントラストが放射性ヨードでの治療を可能にします。
治療前に確認すべき重要なこと、それは、転移した甲状腺がんもこの性質、ヨウ素を取り込む性質を残しているかどうかです。
そこで、まず『診断用の放射線を出す』ヨウ素を使って、甲状腺がんがヨウ素を取り込む機能を残しているか確認します。
実際に集まりが確認されれば、『治療用の放射線を出す』ヨウ素を使った治療に移行します。
このように放射性ヨード内用療法は、同じ道具を使って診断から治療までを一繋ぎにしており、セラノスティックスの古典的な例と言えます。
前回もお話した通り、最近のセラノスティックスの研究は以前にもまして勢いをつけており、よりがん細胞に特徴的な分子を標的にした手法なども試されつつあります。
この辺を次回以降にはお話しできればと思っております。
ところで、
「どういう読者を想定してキーボードを打ったか」
これって発信を始めてみて、とても難しいことだなぁと感じるようになりました。
ヤンデルさんは流れる水のごとく、毎日沢山文章を書かれていますが、どう考えていらっしゃいますか?
ヤンデルさんのブログ記事はどれも一筆書きのようによどみなく、それでいてとても具体的でわかりやすいです。
あのような読みやすい記事を書くにあたって、いつもどのような姿勢で臨まれているのか、聞かせて頂ければ幸いです。
(2019.9.2 タク → ヤンデルさん)